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CRIMINAL LAW

刑法の論点一覧 全73論点

刑法の論点解説では、因果関係・不真正不作為犯・錯誤といった構成要件論から、正当防衛・緊急避難、共同正犯・共犯の離脱、各論の財産犯・放火罪・文書偽造罪まで、予備試験・司法試験で問われる論点を網羅しています。各論点では判例の規範と判断要素を示し、答案で「構成要件該当性→違法性→責任→罪数」の順に、事実を拾って評価する力を養うことを目的としています。

キツネ

第1章 構成要件該当性

構成要件該当性とは、行為が刑罰法規の定める犯罪類型に当たるかの判断であり、刑法答案の出発点となる。因果関係とは、行為の危険性が結果へと現実化したといえるかで判断される関係(危険の現実化説)であり、不真正不作為犯とは、作為義務(保障人的地位)のある者が不作為によって作為犯の構成要件を実現する犯罪類型である。因果関係の判断基準は平成24・25・27・29年、令和元・2・3・5年に、不真正不作為犯は平成24・26・28・30年、令和元・4年に出題され、総論の中でも最頻出である。答案では、まず実行行為を特定し、結果との間に因果関係があるかを「行為の危険性の大小、介在事情の異常性の大小、介在事情の結果への寄与度」の三要素で総合判断する。大阪南港事件(最決平2.11.20)のように行為自体が高度の危険を有する場合は介在事情が異常でも因果関係を肯定する方向、高速道路侵入事件(最決平15.7.16)のように被害者の行為が介在した場合はその行動が著しく不自然かを検討する。不真正不作為犯では、①作為義務の存在、②作為の可能性・容易性、③作為犯との構成要件的同価値性の三要件を立て、作為義務の根拠は形式的根拠だけでなく排他的支配・保護の引受けという実質的根拠から論じる(シャクティパット事件・最決平17.7.4)。構成要件の錯誤では法定的符合説により同一構成要件内の符合があれば故意を阻却しないと処理し、方法の錯誤では観念的競合になる点まで書く。よくあるミスは、因果関係を「相当因果関係の有無」と抽象的に書いて三要素のあてはめをしないこと、不作為犯で作為義務の根拠を列挙するだけで排他的支配の事実を拾わないこと、因果関係の錯誤を因果関係の問題と混同することである。

Q刑法の因果関係はどう判断する?+

行為の危険性が結果へと現実化したといえるかで判断する(危険の現実化説)。具体的には①行為の危険性の大小、②介在事情の異常性の大小、③介在事情の結果への寄与度を総合考慮し、危険が介在事情を経てなお結果に現実化したと評価できれば因果関係を肯定する。

Q不真正不作為犯の成立要件は?+

①作為義務(保障人的地位)の存在、②作為の可能性・容易性、③作為犯との構成要件的同価値性が必要である。作為義務は法令・契約・条理などの形式的根拠だけでなく、結果発生の危険に対する排他的支配や保護の引受けという実質的根拠を重視して認定する。

Q客体の錯誤と方法の錯誤の違いは?+

客体の錯誤は甲を乙と誤認して殺害した場合、方法の錯誤は甲を狙ったが乙に当たった場合である。法定的符合説ではいずれも同一構成要件内の錯誤として故意は阻却されず、方法の錯誤では乙への殺人既遂と甲への殺人未遂が成立し観念的競合となる。

Q間接正犯が成立するのはどんな場合?+

他人を道具として利用して自己の犯罪を実現する場合で、被利用者の行為を利用者の行為と同視できるだけの一方的支配・利用関係が必要である。被利用者が是非弁別能力を有し自由意思で行為した場合は原則として間接正犯は否定され、教唆犯の成否が問題となる。

第2章 違法性

正当防衛とは、急迫不正の侵害に対し、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為であり、違法性が阻却される(刑法36条1項)。緊急避難とは、現在の危難を避けるためやむを得ずにした行為で、生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に違法性が阻却されるものである(37条1項本文)。正当防衛の成立要件は平成23・24・26〜30年、令和2〜5年とほぼ毎年出題されており、刑法論文で最も確実に押さえるべき分野である。答案では、①急迫不正の侵害、②防衛の意思、③やむを得ずにした行為(相当性)の三要件を順に検討する。急迫性については、侵害を予期していたことだけで直ちに否定されるわけではなく、対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討する(最決平29.4.26)。その際、行為者と相手方との従前の関係、予期された侵害の内容、侵害の予期の程度、侵害回避の容易性、侵害場所に出向く必要性、対抗行為の準備の状況等を考慮要素として事実を拾う。相当性は、侵害の態様・程度と防衛行為の態様・程度との均衡を基礎に、防衛手段として必要最小限度かで判断し(最判昭44.12.4)、結果の重大性のみで否定しない。相当性を欠く場合は過剰防衛(36条2項)として、量的過剰では行為の一体性を論じる。急迫不正の侵害を誤信した場合は誤想防衛・誤想過剰防衛として、違法性阻却事由に関する事実の錯誤の処理を示す。よくあるミスは、急迫性の考慮要素を列挙するだけで事実と結びつけないこと、防衛の意思と急迫性の問題(積極的加害意思)を混同すること、誤想過剰防衛で故意阻却の有無と36条2項の適用・準用を分けて論じないことである。

Q正当防衛の成立要件は?+

①急迫不正の侵害に対し、②自己又は他人の権利を防衛するため(防衛の意思)、③やむを得ずにした行為(相当性)であることが必要である(36条1項)。相当性を欠く場合は過剰防衛(36条2項)として刑の任意的減免が問題となる。

Q侵害を予期していた場合に急迫性は認められる?+

予期していたことだけで直ちに急迫性は否定されない。最決平29.4.26は、行為者と相手方の従前の関係、予期された侵害の内容、侵害回避の容易性、侵害場所に出向く必要性、対抗行為の準備状況等を考慮し、行為全般の状況に照らして判断するとした。

Q誤想防衛と誤想過剰防衛の違いは?+

誤想防衛は、存在しない侵害を誤信して防衛行為をした場合で、違法性を基礎付ける事実の認識を欠くため責任故意が阻却される。誤想過剰防衛は、誤信した侵害を前提にしても過剰な行為をした場合で、故意犯が成立しうるが36条2項の適用又は準用による減免が問題となる。

Q緊急避難の成立要件は?+

①現在の危難、②やむを得ずにした行為(補充性)、③生じた害が避けようとした害の程度を超えなかったこと(法益の均衡)が必要である(37条1項本文)。正当防衛と異なり、侵害者以外の第三者に対する法益侵害にも適用されうる。

第3章 責任

第4章 未遂犯

第5章 共犯

共同正犯とは、二人以上が共同して犯罪を実行した場合に、全員を正犯として処罰する共犯形態である(刑法60条)。共謀共同正犯とは、実行行為を直接行っていない者についても、共謀と正犯意思を根拠に共同正犯としての罪責を問う類型であり、練馬事件(最大判昭33.5.28)以来判例が認めている。共謀共同正犯はほぼ全年度で問われ、共同正犯の射程は平成23・25・27・29年、令和元・3・5年、共犯からの離脱は平成24・26・28・30年、令和4年に出題されるなど、共犯は刑法論文で避けて通れない分野である。答案では、共謀共同正犯の成立要件として①共謀(意思の連絡)、②共謀に基づく一部の者の実行行為、③正犯意思(正犯性)を立て、正犯性は犯行の動機・経緯、犯行における役割、利益の帰属、他の共犯者との関係等を総合考慮して「自己の犯罪として行ったか」で判断する。この基準は共同正犯と幇助犯の区別にもそのまま使える。共犯者の一人が共謀を超えた犯罪を実行した場合は「共謀の射程」の問題として、当初の共謀の内容、逸脱行為の態様、共謀内容との関連性、予見可能性から射程内かを判断し、射程外なら抽象的事実の錯誤の処理に進む。共犯からの離脱では、着手前は離脱の意思表明と了承により心理的因果性を遮断すれば足りるが、着手後は物理的・心理的因果性を除去する積極的行為が必要と区別する。承継的共同正犯では、後行者は加担後の行為についてのみ責任を負うのが原則であり、強盗致傷の傷害結果は承継されない(最決平24.11.6)。よくあるミスは、共謀共同正犯で「共謀があった」と書くだけで正犯意思の事実を拾わないこと、共謀の射程と共犯の錯誤を混同すること、離脱の判断で着手前後を区別しないことである。

Q共謀共同正犯の成立要件は?+

①共謀(意思の連絡)、②共謀に基づく一部の者の実行行為、③正犯意思(正犯性)が必要である。正犯性は犯行の動機・経緯、犯罪計画の立案や指示などの役割、利益の帰属、他の共犯者との関係等を総合し、自己の犯罪として行ったといえるかで判断する。

Q共犯からの離脱はどんな場合に認められる?+

着手前は、他の共犯者に離脱の意思を表明し了承を得て心理的因果性を遮断すれば足りる。着手後は、意思表明と了承に加え、自己の行為が生じさせた物理的・心理的因果性を除去する積極的な行為が必要であり、結果との因果関係を遮断しなければ離脱は認められない。

Q承継的共同正犯で後行者はどこまで責任を負う?+

原則として加担後の行為についてのみ責任を負い、加担前の先行者の行為の結果には責任を負わない。先行者の行為・結果を積極的に利用する意思で加担した場合は例外的に責任を負いうるが、強盗致傷の傷害結果は承継されない(最決平24.11.6)。

Q共同正犯と幇助犯はどう区別する?+

正犯意思の有無で区別する。①犯行の動機、②役割の重要性(計画立案・指示、実行行為への関与度)、③利益の帰属、④犯行に対する支配・影響力を総合考慮し、自己の犯罪として行ったなら共同正犯、他人の犯罪に加功したにすぎないなら幇助犯となる。

第6章 罪数

第7章 各論(頻出論点)

刑法各論とは、殺人罪・窃盗罪・詐欺罪など個別の犯罪類型の成立要件を扱う分野であり、論文では総論の論点と組み合わせて出題される。不法領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用し又は処分する意思をいい(最判昭26.7.13)、窃盗罪の成立に故意とは別に必要とされる。窃盗罪と不法領得の意思は平成23年から令和5年まで毎年問われ、詐欺罪の要件は平成24・26・28・30年、令和2・4年、横領罪と背任罪の区別は平成23・25・26・30年、令和2・5年に出題されており、財産犯は各論の中心である。答案では、まず客体(他人の占有する他人の財物)と行為を条文の文言に即して確定し、占有の帰属(上下関係があれば原則上位者・最決昭31.1.19)、死者の占有(最判昭41.4.8)といった前提問題を落とさない。詐欺罪では、①欺罔行為、②錯誤、③錯誤に基づく処分行為、④財産的損害の因果的連鎖を要件として立て、処分行為の有無で窃盗罪と区別し、実行の着手は現金交付を求める前の重要な嘘の段階でも認められうる(最判平30.3.22)。強盗罪では「暴行又は脅迫」が相手方の反抗を抑圧するに足りる程度かを客観的に判断し、事後強盗では窃盗の機会を論じる。横領罪では委託信任関係に基づく占有の有無と、不法領得の意思を発現する行為かを論じ、二重横領も独立に横領罪が成立する(最判平15.4.23)。よくあるミスは、不法領得の意思の二要素(権利者排除意思と利用処分意思)を区別せず結論を急ぐこと、詐欺罪で欺罔行為が処分行為に向けられているかを検討しないこと、横領罪と背任罪の区別で「自己の計算か」という基準を示さないことである。

財産犯

Q不法領得の意思とは何か?+

権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用し又は処分する意思をいう(最判昭26.7.13)。①権利者排除意思で使用窃盗と区別し、②利用処分意思で毀棄罪と区別する。嫌がらせ目的の隠匿は利用処分意思を欠き器物損壊罪の問題となる。

Q詐欺罪と窃盗罪はどう区別する?+

被害者の錯誤に基づく任意の処分行為(財物の交付)が介在すれば詐欺罪、占有者の意思に反して占有を取得すれば窃盗罪である。被害者が一時的に席を外しただけで占有の終局的移転の認識(処分意思)がない場合は、占有の弛緩にすぎず窃盗罪となる。

Q横領罪と背任罪はどう区別する?+

委託の趣旨に反して財物を自己の物として処分する行為(不法領得の意思の発現)であれば横領罪、委託関係に違背して本人に財産的損害を与える行為であれば背任罪である。名義と実質の両面で自己の計算で処分したか否かが基準となる。

Q詐欺罪の実行の着手はいつ認められる?+

現金交付を求める文言を述べる前でも、①交付の判断の前提となる重要な嘘で、②交付要求に直接つながり、③交付の危険性を著しく高めるものであれば、一連の嘘を述べた段階で着手が認められる(最判平30.3.22)。