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CRIMINAL LAW

詐欺罪の要件(246条)

財産犯出題年度:平成24・26・28・30・令和2・4

詐欺罪の要件は、刑法(各論(頻出論点))の論点です。詐欺罪(246条)の成立要件として、欺罔行為→錯誤→処分行為→財産的損害の因果的連鎖が必要か。 判例・通説の規範は「詐欺罪が成立するためには、①欺罔行為(人を欺く行為)、②相手方の錯誤、③錯誤に基づく処分行為(財物の交付・財産上の利益の移転)、④財産的損害の発生が、因果的連鎖として認められること…」とされ、予備試験・司法試験の論文では平成24年・平成26年・平成28年・平成30年などに問われています。

問題の所在

詐欺罪(246条)の成立要件として、欺罔行為→錯誤→処分行為→財産的損害の因果的連鎖が必要か。

規範(判例・通説の定式)

詐欺罪が成立するためには、①欺罔行為(人を欺く行為)、②相手方の錯誤、③錯誤に基づく処分行為(財物の交付・財産上の利益の移転)、④財産的損害の発生が、因果的連鎖として認められることが必要である。

あてはめのポイント

三角詐欺(被欺罔者と被害者が異なる場合):被欺罔者に処分権限又は処分権限に準ずる地位が認められることが必要。クレジットカード詐欺:加盟店の店員を欺罔し、財物を交付させた場合→詐欺罪成立(1項詐欺)。つり銭詐欺:気づいた時点で不作為の欺罔行為が認められうる。

補足

【参考】詐欺罪の基礎概念(基本刑法Ⅱ〔第4版〕229頁以下による整理)

■ 構成要件の連鎖(229〜231頁)

詐欺罪(246条)は、①欺罔行為→②相手方の錯誤→③錯誤に基づく交付(処分)行為→④財物・財産上の利益の移転、という4要件が因果的に連鎖することを要する。財物・利益が行為者側に移転した時点で既遂。連鎖が切れた場合(例:相手方が嘘を見破ったが不憫に思って交付した場合)は詐欺未遂にとどまる(233頁)。

■ 用語の定義

欺罔行為=財物の交付(処分行為)に向けて人の錯誤を惹起する行為。その内容は「交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ること」(231頁)。嘘であっても、相手方に処分(交付)行為をさせるための嘘でなければ欺罔行為に当たらない(238頁)。取引上の「かけひき」の範囲内の多少の誇張・事実の歪曲で、通常相手方が錯誤に陥らない程度のものは欺罔行為でない(234頁)。

交付(処分)行為=相手方が錯誤に基づいて財物の占有(利益)を移転させること(231頁)。処分行為の有無が詐欺罪と窃盗罪(利益の場合は不可罰の利益窃盗)とを区別する要素となる(237頁)。

処分意思=処分行為というためには処分意思に基づく処分の事実が必要。処分意思を欠く幼児・高度の精神障害者を欺いて財物を取得しても窃盗罪(239頁)。処分意思の内容は、財物・利益の移転の具体的内容の完全な認識までは不要で、移転の外形的な状況の認識で足りる(無意識的処分行為)(239頁)。

被欺罔者=処分権者(被害財産の処分をなしうる権限ないし地位を有する者)でなければならず、両者は常に一致を要する。他方、被欺罔者(処分権者)と被害者は一致する必要がない(三角詐欺:①欺罔者②被欺罔者=処分権者③被害者。例:会社の社員を欺いて会社の金員を支出させる場合)(238頁)。

2項詐欺=客体は財産上の利益。「財産上不法の利益」の「不法の」とは手段が不法という意味であり、利益の内容自体が不法という意味ではない(232頁)。成立要件は客体を除き1項詐欺と同じ(①欺罔行為→②錯誤→③処分行為→④利益の移転)(232頁)。

■ 欺罔行為の態様(235〜236頁)

挙動(作為)による欺罔=黙示的な意思表示を含む行為による欺罔。例:無銭飲食における注文(支払意思の黙示的表示)。判例:譲渡目的を秘した自己名義口座の開設申込み(最決平19.7.17)、暴力団関係者の利用を防ぐ措置が講じられたゴルフ場での施設利用申込み(最決平26.3.28〔長野〕)は挙動による欺罔に当たる。他方、そのような措置が不十分な事案では当たらない(最判平26.3.28〔宮崎〕)。

不作為による欺罔=不真正不作為犯として作為義務(=真実を告知すべき告知義務)が必要。告知義務は法令・契約・慣習等を根拠とする(排他的支配にも着目)。例:生命保険契約締結時の既往症の不告知、誤振込みの事実を告げない払戻請求(235頁)。

■ 財産的損害(243〜247頁)

詐欺罪は個別財産に対する罪であり、個々の財物・利益を喪失した以上、相当対価の反対給付があっても成立しうる(243頁)。その判断につき、形式的個別財産説(本当のことを知っていれば交付しなかったといえるときは交付自体が損害)に対しては詐欺罪の成立範囲が広がりすぎるとの批判があり、経済的に評価して損害が発生したかを実質的に判断する実質的個別財産説が現在の通説(244〜245頁)。

判例は、財産的損害を独立の要件とはせず、欺罔行為が「交付の判断の基礎となる重要な事項」を偽るものか(財産的損害を生じさせる危険性を有する行為か)という欺罔行為の解釈の中で実質的な絞りをかける(最決平19.7.17〔自己名義預金通帳〕、最決平22.7.29〔搭乗券取得事件〕等。245〜247頁)。

■ 実行の着手(233頁)

詐欺の意思で欺罔行為を開始した時に実行の着手。保険金詐取目的で家屋に放火しても、保険金支払請求前は着手なし(大判昭7.6.15)。特殊詐欺では、財物の交付を求める文言を述べていなくても、それに直接つながる嘘を述べた時点で着手が認められる(最判平30.3.22)。

答案での書き方(法的三段論法)

  1. 1

    問題提起

    詐欺罪(246条)の成立要件として、欺罔行為→錯誤→処分行為→財産的損害の因果的連鎖が必要か。

  2. 2

    規範

    上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。

  3. 3

    あてはめ

    問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。

  4. 4

    結論

    「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。

自分の答案がこの4要素に分解できているかは、AI答案添削で色分けして確認できます。

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出題実績と演習

よくある質問

Q詐欺罪(246条)の成立要件として、欺罔行為→錯誤→処分行為→財産的損害の因果的連鎖が必要か。+

詐欺罪が成立するためには、①欺罔行為(人を欺く行為)、②相手方の錯誤、③錯誤に基づく処分行為(財物の交付・財産上の利益の移転)、④財産的損害の発生が、因果的連鎖として認められることが必要である。

Q「詐欺罪の要件」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+

平成24年・平成26年・平成28年・平成30年・令和2年・令和4年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。

Q不法領得の意思とは何か?+

権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用し又は処分する意思をいう(最判昭26.7.13)。①権利者排除意思で使用窃盗と区別し、②利用処分意思で毀棄罪と区別する。嫌がらせ目的の隠匿は利用処分意思を欠き器物損壊罪の問題となる。

Q詐欺罪と窃盗罪はどう区別する?+

被害者の錯誤に基づく任意の処分行為(財物の交付)が介在すれば詐欺罪、占有者の意思に反して占有を取得すれば窃盗罪である。被害者が一時的に席を外しただけで占有の終局的移転の認識(処分意思)がない場合は、占有の弛緩にすぎず窃盗罪となる。

Q横領罪と背任罪はどう区別する?+

委託の趣旨に反して財物を自己の物として処分する行為(不法領得の意思の発現)であれば横領罪、委託関係に違背して本人に財産的損害を与える行為であれば背任罪である。名義と実質の両面で自己の計算で処分したか否かが基準となる。