オンラインロースクールONLINE LAW SCHOOL

CRIMINAL LAW

死者の占有と窃盗罪の成否(最判昭41.4.8)

財産犯出題年度:平成29

死者の占有と窃盗罪の成否は、刑法(各論(頻出論点))の論点です。犯人が被害者を死亡させた後にその財物を取得した場合、窃盗罪(235条)は成立するか。死者には占有が認められないため、財物取得時における占有の帰属が問題となる。また、被害者の死亡を誤信して財物を取得した場合の抽象的事実の錯誤が問題となる。 判例・通説の規範は「【判例(最判昭41.4.8)の立場】」とされ、予備試験・司法試験の論文では平成29年に問われています。

問題の所在

犯人が被害者を死亡させた後にその財物を取得した場合、窃盗罪(235条)は成立するか。死者には占有が認められないため、財物取得時における占有の帰属が問題となる。また、被害者の死亡を誤信して財物を取得した場合の抽象的事実の錯誤が問題となる。

規範(判例・通説の定式)

【判例(最判昭41.4.8)の立場】

犯人が被害者を死亡させ、直後にその財物を取得した場合でも、被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して財物を奪取したと認められるときは、窃盗罪が成立する(最判昭41.4.8・刑集20巻4号207頁)。行為の一連性・継続性から、被害者の占有を侵害したと評価できるためである。

【死亡を誤信した場合の抽象的事実の錯誤】

犯人が被害者を死亡したと誤信して財物を取得した場合:

①客観的には窃盗罪の構成要件に該当するが、主観的には占有離脱物横領罪(254条)の認識しかない→抽象的事実の錯誤。

②両罪の構成要件が重なり合う限度(軽い占有離脱物横領罪)で故意犯の成立を認める(法定的符合説)。

【不法領得の意思の要件】

利用処分意思(毀棄目的ではなく利用・処分する意思)がなければ窃盗罪・占有離脱物横領罪はいずれも不成立→器物損壊罪の成否を検討。

答案での書き方(法的三段論法)

  1. 1

    問題提起

    犯人が被害者を死亡させた後にその財物を取得した場合、窃盗罪(235条)は成立するか。死者には占有が認められないため、財物取得時における占有の帰属が問題となる。また、被害者の死亡を誤信して財物を取得した場合の抽象的事実の錯誤が問題となる。

  2. 2

    規範

    上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。

  3. 3

    あてはめ

    問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。

  4. 4

    結論

    「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。

自分の答案がこの4要素に分解できているかは、AI答案添削で色分けして確認できます。

あわせて読みたい論点

この論点の前提になる論点や、対になる論点です。

さらに学びたい人へ(おすすめ教材)

この論点の理解を深める教材です。リンクにはアフィリエイトリンクを含みます(価格は変わりません)。

出題実績と演習

よくある質問

Q犯人が被害者を死亡させた後にその財物を取得した場合、窃盗罪(235条)は成立するか。+

【判例(最判昭41.4.8)の立場】

Q「死者の占有と窃盗罪の成否」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+

平成29年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。

Q不法領得の意思とは何か?+

権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用し又は処分する意思をいう(最判昭26.7.13)。①権利者排除意思で使用窃盗と区別し、②利用処分意思で毀棄罪と区別する。嫌がらせ目的の隠匿は利用処分意思を欠き器物損壊罪の問題となる。

Q詐欺罪と窃盗罪はどう区別する?+

被害者の錯誤に基づく任意の処分行為(財物の交付)が介在すれば詐欺罪、占有者の意思に反して占有を取得すれば窃盗罪である。被害者が一時的に席を外しただけで占有の終局的移転の認識(処分意思)がない場合は、占有の弛緩にすぎず窃盗罪となる。

Q横領罪と背任罪はどう区別する?+

委託の趣旨に反して財物を自己の物として処分する行為(不法領得の意思の発現)であれば横領罪、委託関係に違背して本人に財産的損害を与える行為であれば背任罪である。名義と実質の両面で自己の計算で処分したか否かが基準となる。