CRIMINAL LAW
第三者防衛(他人のための正当防衛)における急迫性の判断基準
第三者防衛における急迫性の判断基準は、刑法(違法性)の論点です。被侵害者(甲)と防衛者(乙)が異なる場合(他人のための正当防衛)、急迫性を被侵害者基準で判断するか防衛者基準で判断するかが問題となる。 判例・通説の規範は「【被侵害者基準説】」とされ、予備試験・司法試験の論文では令和4年に問われています。
問題の所在
被侵害者(甲)と防衛者(乙)が異なる場合(他人のための正当防衛)、急迫性を被侵害者基準で判断するか防衛者基準で判断するかが問題となる。
規範(判例・通説の定式)
【被侵害者基準説】
刑法36条は、侵害の回避が可能であったのに積極的態度で侵害に臨んだ者(要保護性を欠く者)には妥当しない。正当防衛を否定すべき事情は被侵害者を基準として判断し、被侵害者甲について急迫性が否定される場合、防衛者乙による第三者防衛も否定される。
被侵害者甲を基準とする場合、最決平29.4.26の枠組みに従い、①行為者と相手方との従前の関係、②予期された侵害の内容、③侵害の予期の程度、④侵害回避の容易性、⑤侵害場所への出向の必要性、⑥対抗行為の準備の状況、⑦実際の侵害の内容と予期との異同、⑧侵害に臨んだ状況・意思内容等を総合考慮する。
【防衛者基準説】
防衛者乙は侵害に何ら関与していない。Aの甲に対する侵害が客観的に切迫していた以上、乙を基準に急迫性は肯定される。この場合、甲自身が正当防衛として対抗できない状況でも乙による第三者防衛が許される理由を明示する必要がある。
答案での書き方(法的三段論法)
- 1
問題提起
被侵害者(甲)と防衛者(乙)が異なる場合(他人のための正当防衛)、急迫性を被侵害者基準で判断するか防衛者基準で判断するかが問題となる。
- 2
規範
上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。
- 3
あてはめ
問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。
- 4
結論
「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。
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出題実績と演習
よくある質問
Q被侵害者(甲)と防衛者(乙)が異なる場合(他人のための正当防衛)、急迫性を被侵害者基準で判断するか防衛者基準で判断するかが問題となる。+
【被侵害者基準説】
Q「第三者防衛における急迫性の判断基準」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+
令和4年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。
Q正当防衛の成立要件は?+
①急迫不正の侵害に対し、②自己又は他人の権利を防衛するため(防衛の意思)、③やむを得ずにした行為(相当性)であることが必要である(36条1項)。相当性を欠く場合は過剰防衛(36条2項)として刑の任意的減免が問題となる。
Q侵害を予期していた場合に急迫性は認められる?+
予期していたことだけで直ちに急迫性は否定されない。最決平29.4.26は、行為者と相手方の従前の関係、予期された侵害の内容、侵害回避の容易性、侵害場所に出向く必要性、対抗行為の準備状況等を考慮し、行為全般の状況に照らして判断するとした。
Q誤想防衛と誤想過剰防衛の違いは?+
誤想防衛は、存在しない侵害を誤信して防衛行為をした場合で、違法性を基礎付ける事実の認識を欠くため責任故意が阻却される。誤想過剰防衛は、誤信した侵害を前提にしても過剰な行為をした場合で、故意犯が成立しうるが36条2項の適用又は準用による減免が問題となる。