CRIMINAL LAW
誤想防衛(違法性阻却事由に関する事実の錯誤・故意阻却)
誤想防衛は、刑法(違法性)の論点です。急迫不正の侵害が客観的に存在しないのに存在すると誤信して防衛行為をした場合(誤想防衛)、行為者の刑事責任はいかに解すべきか。違法性阻却事由に関する事実の錯誤の処理が問題となる。 判例・通説の規範は「誤想防衛は、正当防衛の客観的要件(急迫不正の侵害)が欠けるため違法性は阻却されない。しかし、行為者は違法性を基礎付ける事実(侵害の不存在)を認識していないため、違法性阻却事由に関す…」とされ、予備試験・司法試験の論文では平成27年に問われています。
問題の所在
急迫不正の侵害が客観的に存在しないのに存在すると誤信して防衛行為をした場合(誤想防衛)、行為者の刑事責任はいかに解すべきか。違法性阻却事由に関する事実の錯誤の処理が問題となる。
規範(判例・通説の定式)
誤想防衛は、正当防衛の客観的要件(急迫不正の侵害)が欠けるため違法性は阻却されない。しかし、行為者は違法性を基礎付ける事実(侵害の不存在)を認識していないため、違法性阻却事由に関する事実の錯誤が生じる。
この場合、責任故意が阻却され、故意犯は成立しない(違法性の意識の可能性が欠けるため)。ただし、誤信に過失があれば過失犯が成立する余地がある。
なお、36条2項(過剰防衛の減免)の準用については、侵害が存在しない以上「防衛のため」という前提が欠けるとして否定する見解が有力である。侵害の急迫性の終了後(窃盗既遂後)の場合は急迫性を欠くとして正当防衛・誤想防衛は問題とならず、誤想自救行為として処理する場合もある。
答案での書き方(法的三段論法)
- 1
問題提起
急迫不正の侵害が客観的に存在しないのに存在すると誤信して防衛行為をした場合(誤想防衛)、行為者の刑事責任はいかに解すべきか。違法性阻却事由に関する事実の錯誤の処理が問題となる。
- 2
規範
上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。
- 3
あてはめ
問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。
- 4
結論
「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。
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出題実績と演習
よくある質問
Q急迫不正の侵害が客観的に存在しないのに存在すると誤信して防衛行為をした場合(誤想防衛)、行為者の刑事責任はいかに解すべきか。+
誤想防衛は、正当防衛の客観的要件(急迫不正の侵害)が欠けるため違法性は阻却されない。しかし、行為者は違法性を基礎付ける事実(侵害の不存在)を認識していないため、違法性阻却事由に関する事実の錯誤が生じる。
Q「誤想防衛」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+
平成27年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。
Q正当防衛の成立要件は?+
①急迫不正の侵害に対し、②自己又は他人の権利を防衛するため(防衛の意思)、③やむを得ずにした行為(相当性)であることが必要である(36条1項)。相当性を欠く場合は過剰防衛(36条2項)として刑の任意的減免が問題となる。
Q侵害を予期していた場合に急迫性は認められる?+
予期していたことだけで直ちに急迫性は否定されない。最決平29.4.26は、行為者と相手方の従前の関係、予期された侵害の内容、侵害回避の容易性、侵害場所に出向く必要性、対抗行為の準備状況等を考慮し、行為全般の状況に照らして判断するとした。
Q誤想防衛と誤想過剰防衛の違いは?+
誤想防衛は、存在しない侵害を誤信して防衛行為をした場合で、違法性を基礎付ける事実の認識を欠くため責任故意が阻却される。誤想過剰防衛は、誤信した侵害を前提にしても過剰な行為をした場合で、故意犯が成立しうるが36条2項の適用又は準用による減免が問題となる。