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CRIMINAL LAW

防衛行為が狙いを外れて被防衛者本人に傷害を生じさせた場合の法的処理(令和元年)

構成要件の錯誤出題年度:令和元

防衛行為が狙いを外れて被防衛者本人に傷害を生じさせた場合の法的処理は、刑法(構成要件該当性)の論点です。第三者Yが、侵害者甲からA(被防衛者)を救うためにX(甲)に向けてボトルワインを投げたが狙いが外れAに傷害を与えた場合、YはAの傷害について刑事責任を負わないとするにはどのような理論構成があるか。各説の難点も論じよ。 判例・通説の規範は「【理論構成①:具体的符合説による故意阻却→過失も否定】」とされ、予備試験・司法試験の論文では令和元年に問われています。

問題の所在

第三者Yが、侵害者甲からA(被防衛者)を救うためにX(甲)に向けてボトルワインを投げたが狙いが外れAに傷害を与えた場合、YはAの傷害について刑事責任を負わないとするにはどのような理論構成があるか。各説の難点も論じよ。

規範(判例・通説の定式)

【理論構成①:具体的符合説による故意阻却→過失も否定】

具体的符合説:X(狙った者)とA(傷害が生じた者)が具体的に一致しない→Aへの傷害の故意は阻却される。さらに、当該行為がYの採り得る唯一の手段であり、行為時の状況から結果回避可能性がなかったとすれば過失傷害罪も不成立。

難点:YはXの間近にAがいることを認識したままボトルワインを投げており、Aへの傷害について結果回避可能性の欠如を認めることは困難→過失犯の成立を否定しにくい。

【理論構成②:法定的符合説+構成要件的同価値性否定(大阪高判平14.9.4)】

法定的符合説によれば「人」に対する暴行故意は「人」であるAへの傷害にも符合するが、侵害者X(暴行を向ける相手)と被防衛者A(防衛されるべき相手)とは法的評価上の同価値性を認める根拠に欠ける(大阪高判平14.9.4参照)→Xへの暴行故意はAへの傷害故意と符合しない→故意阻却。

難点:法定的符合説の基本原理(「人」として構成要件上同価値なら故意符合)と矛盾し、体系的整合性を欠く。

【理論構成③:正当防衛(36条1項)による違法性阻却】

甲のAへの急迫不正の侵害に対するYの防衛行為として全体が正当防衛の範疇に包含され違法性阻却。

難点:36条1項は「不正の侵害に対して」のみ防衛行為を許す。守られるべきAへの傷害を正当防衛として正当化することは、文言上困難(防衛の相手は「不正の侵害者」であってAではない)。

【理論構成④:緊急避難(37条1項)による違法性阻却】

甲のAへの攻撃という現在の危難、補充性・相当性・法益均衡(加療3週間の傷害<生命・重傷害の危険)を充足→緊急避難成立として違法性阻却。

難点:危難から救おうとしたA本人を傷害しており、「危難を避けた」という評価が困難。避難行為によりAが得た利益がない点で緊急避難の構造と齟齬する。

【理論構成⑤:誤想防衛類似の処理】

Yは正当防衛として行動したが客観的には被防衛者Aを傷害→正当防衛の客観的要件欠如→誤想防衛類似の処理として故意阻却(ただし過失犯の余地残る)。

難点:Yが「誤想」した内容が不明確であり(Aへの侵害は現実に存在)、本件を誤想防衛と評価する根拠が薄い。過失犯の成立を否定することも困難。

答案での書き方(法的三段論法)

  1. 1

    問題提起

    第三者Yが、侵害者甲からA(被防衛者)を救うためにX(甲)に向けてボトルワインを投げたが狙いが外れAに傷害を与えた場合、YはAの傷害について刑事責任を負わないとするにはどのような理論構成があるか。各説の難点も論じよ。

  2. 2

    規範

    上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。

  3. 3

    あてはめ

    問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。

  4. 4

    結論

    「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。

自分の答案がこの4要素に分解できているかは、AI答案添削で色分けして確認できます。

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出題実績と演習

よくある質問

Q第三者Yが、侵害者甲からA(被防衛者)を救うためにX(甲)に向けてボトルワインを投げたが狙いが外れAに傷害を与えた場合、YはAの傷害について刑事責任を負わないと+

【理論構成①:具体的符合説による故意阻却→過失も否定】

Q「防衛行為が狙いを外れて被防衛者本人に傷害を生じさせた場合の法的処理」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+

令和元年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。

Q刑法の因果関係はどう判断する?+

行為の危険性が結果へと現実化したといえるかで判断する(危険の現実化説)。具体的には①行為の危険性の大小、②介在事情の異常性の大小、③介在事情の結果への寄与度を総合考慮し、危険が介在事情を経てなお結果に現実化したと評価できれば因果関係を肯定する。

Q不真正不作為犯の成立要件は?+

①作為義務(保障人的地位)の存在、②作為の可能性・容易性、③作為犯との構成要件的同価値性が必要である。作為義務は法令・契約・条理などの形式的根拠だけでなく、結果発生の危険に対する排他的支配や保護の引受けという実質的根拠を重視して認定する。

Q客体の錯誤と方法の錯誤の違いは?+

客体の錯誤は甲を乙と誤認して殺害した場合、方法の錯誤は甲を狙ったが乙に当たった場合である。法定的符合説ではいずれも同一構成要件内の錯誤として故意は阻却されず、方法の錯誤では乙への殺人既遂と甲への殺人未遂が成立し観念的競合となる。