CRIMINAL LAW
自招危難と緊急避難の成否(最決平20.5.20参照)
自招危難と緊急避難の成否は、刑法(違法性)の論点です。行為者が自ら危難を招致した場合(自招危難)において、緊急避難(37条1項)は成立するか。自招正当防衛の法理の緊急避難への適用が問題となる。 判例・通説の規範は「【要保護性欠如の理論(最決平20.5.20の類推)】」とされ、予備試験・司法試験の論文では令和4年に問われています。
問題の所在
行為者が自ら危難を招致した場合(自招危難)において、緊急避難(37条1項)は成立するか。自招正当防衛の法理の緊急避難への適用が問題となる。
規範(判例・通説の定式)
【要保護性欠如の理論(最決平20.5.20の類推)】
最決平20.5.20(自招侵害における正当防衛否定)の実質的根拠は、自らの不正行為により緊急状況を招いた者の要保護性の欠如にある。要保護性欠如の観点は対抗行為が正当防衛であれ緊急避難であれ同様に妥当するから、同判例の考え方は自招危難にも適用される。
【緊急避難否定の判断基準】
①不正行為による危難招致:危難が招致行為によって触発された、その直後における近接した場所での一連一体の事態であること、②危難が招致行為の程度を大きく超えていないこと、の双方を満たす場合、緊急避難の成立が否定される。
【その他の処理方法】
①「現在の危難」の欠如、②「やむを得ずにした行為」の欠如、③社会的相当性・権利濫用の一般理論等。いずれの立場によっても、緊急避難が否定される具体的判断基準を示した上で事実に即した検討を行う必要がある。
あてはめのポイント
典型的あてはめ:乙がAをナイフで刺突(違法行為)→Aの追跡(刺突に触発された直後の一連の事態)→乙が本件原付を無断使用して逃走。Aの追跡(素手暴行の意図)は刺突の程度を大きく超えないことから、緊急避難は否定される方向。
答案での書き方(法的三段論法)
- 1
問題提起
行為者が自ら危難を招致した場合(自招危難)において、緊急避難(37条1項)は成立するか。自招正当防衛の法理の緊急避難への適用が問題となる。
- 2
規範
上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。
- 3
あてはめ
問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。
- 4
結論
「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。
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出題実績と演習
よくある質問
Q行為者が自ら危難を招致した場合(自招危難)において、緊急避難(37条1項)は成立するか。+
【要保護性欠如の理論(最決平20.5.20の類推)】
Q「自招危難と緊急避難の成否」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+
令和4年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。
Q正当防衛の成立要件は?+
①急迫不正の侵害に対し、②自己又は他人の権利を防衛するため(防衛の意思)、③やむを得ずにした行為(相当性)であることが必要である(36条1項)。相当性を欠く場合は過剰防衛(36条2項)として刑の任意的減免が問題となる。
Q侵害を予期していた場合に急迫性は認められる?+
予期していたことだけで直ちに急迫性は否定されない。最決平29.4.26は、行為者と相手方の従前の関係、予期された侵害の内容、侵害回避の容易性、侵害場所に出向く必要性、対抗行為の準備状況等を考慮し、行為全般の状況に照らして判断するとした。
Q誤想防衛と誤想過剰防衛の違いは?+
誤想防衛は、存在しない侵害を誤信して防衛行為をした場合で、違法性を基礎付ける事実の認識を欠くため責任故意が阻却される。誤想過剰防衛は、誤信した侵害を前提にしても過剰な行為をした場合で、故意犯が成立しうるが36条2項の適用又は準用による減免が問題となる。