CRIMINAL PROCEDURE
刑事訴訟法の論点一覧 全60論点
刑事訴訟法の論点解説では、強制処分と任意処分の区別、逮捕・勾留、捜索・差押え、自白法則・違法収集証拠排除法則、伝聞法則と伝聞例外、訴因変更の要否・可否など、論文で毎年のように問われる論点を扱います。各論点で判例の規範と判断要素を整理し、答案で「問題提起→規範→事実のあてはめ→結論」を条文に即して書けるよう構成しています。

最重要(A+)論点
第1章 捜査総論
強制処分とは、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段をいう(最決昭51.3.16)。任意処分とは、これに当たらない捜査手法であり、捜査比例の原則(刑訴法197条1項本文)により、必要性・緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される。捜査総論は刑訴法の論文で第一問として問われることが多く、強制処分の意義は平成27・28・30年、令和2年に、任意処分の限界は平成26〜28・30年、令和2年に出題されている。答案では、まず本件捜査手法が「強制の処分」(197条1項但書)に当たり法律上の根拠と令状が必要かを問題提起し、強制処分の定義を示す。その際、個人の意思を制圧するか否かにかかわらず、個人の重要な権利・利益を実質的に制約する処分は強制処分に当たるという理解(最大判平29.3.15参照)を踏まえ、車両の位置情報を継続的・網羅的に把握する捜査手法は強制処分となる。強制処分に当たらない場合は任意処分として、捜査目的達成のための必要性の程度と対象者の権利・利益の侵害の程度を比較衡量し、具体的状況のもとで相当かを判断する。よくあるミスは、強制処分該当性の当てはめを憲法の条文で行い刑訴法197条1項但書に引き付けないこと、必要性・緊急性を独立の要件として並べて相当性の結論を書かないこと、二段階の枠組み(強制処分性→任意処分としての相当性)を混在させて論じることである。
強制処分と任意処分の区別A+
職務質問に伴う有形力の行使A
逮捕・勾留A+
捜索・差押えA
領置(221条)と遺留物のプライバシーA
接見交通権(39条)A
Q強制処分と任意処分の違いは?+
強制処分は、個人の意思を制圧し身体・住居・財産等に制約を加えるなど、特別の根拠規定がなければ許容できない手段をいう(最決昭51.3.16)。これに当たらない任意処分も、比例原則により必要性・緊急性を考慮して相当と認められる限度で許容される。
Q任意処分の限界はどう判断する?+
捜査比例の原則(197条1項本文)に基づき、①捜査目的達成のための必要性の程度と②対象者の権利・利益への侵害の程度を比較衡量し、③具体的状況のもとで相当と認められるかで判断する。必要性・緊急性は考慮要素、相当性が結論である。
Q所持品検査はどこまで許される?+
所持人の承諾を得て行うのが原則だが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、必要性・緊急性と侵害される法益・保護される公益との権衡を考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される(最判昭53.6.20)。
Q別件逮捕・勾留が違法となるのはどんな場合?+
別件について逮捕・勾留の理由と必要性があれば直ちに違法ではないが、別件に名を借りて専ら本件の取調べに利用する目的であった場合は令状主義の潜脱として違法となる。取調べ時間の配分や別件捜査の進行状況などを総合評価する。
第2章 被疑者の取調べ
取調べ受忍義務の有無A+
第3章 自白法則・違法収集証拠排除法則
自白法則とは、刑訴法319条1項が「強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白」の証拠能力を否定する法則をいう。違法収集証拠排除法則とは、証拠物の押収等の手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地から相当でないと認められる場合に、その証拠能力を否定する法則である(最判昭53.9.7)。自白法則は平成25〜28年、令和元・2・5年に、排除法則は平成27年、令和2年に出題されており、証拠法の中核をなす。答案では、自白については319条1項の趣旨を虚偽排除説と人権擁護説の両面から説明し、いずれかの観点から任意性に疑いがあれば排除されると規範を立てたうえで、取調べの方法・態様・時間、約束や利益誘導の有無といった外部的事情を総合的にあてはめる。排除法則については、司法の廉潔性と違法捜査の抑止という根拠を示し、①重大な違法と②排除の相当性という二要件を立て、違法の程度、令状主義との関係、捜査機関の主観的意図を事実に即して評価する。令和2年のように自白に排除法則を適用できるかが問われた場合は、違法排除一元説・任意性一元説・二元説を整理し、取調べは令状主義と直接関係しないため「令状主義の精神を没却する」基準をそのまま使えるかにも触れる。毒樹の果実では、違法手続と二次的証拠との密接な関連性や因果関係の希薄化を論じる。よくあるミスは、自白法則と排除法則を区別せずに一本の規範で処理すること、「重大な違法」の判断で違法の事実を列挙するだけで令状主義との関係を評価しないこと、補強法則(319条2項)を自白法則と混同することである。
自白法則(319条1項)A+
違法収集証拠排除法則A+
Q自白法則の趣旨と判断基準は?+
319条1項の趣旨は、虚偽排除(任意性のない自白は虚偽が混入しやすい)と人権擁護(自白採取過程の人権侵害抑止)の両面にあり、いずれかの観点から任意性に疑いがあれば排除される。取調べの態様・時間、約束・利益誘導の有無などの外部的事情を総合考慮する。
Q違法収集証拠排除法則の要件は?+
①証拠収集手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、②これを証拠として許容することが将来の違法捜査抑制の見地から相当でないと認められる場合に証拠能力が否定される(最判昭53.9.7)。根拠は司法の廉潔性と違法捜査の抑止にある。
Q毒樹の果実とは?+
違法な手続で得た証拠(毒樹)から派生して得られた二次的証拠(果実)のこと。違法手続と密接な関連を有する証拠は排除法則の趣旨から証拠能力が否定されうるが、因果関係の希薄化や独立の情報源の介在があれば証拠能力が肯定されうる。
Q補強法則とは何か?+
被告人の自白が唯一の証拠である場合には有罪とできないという法則(319条2項)。補強証拠は自白にかかる事実の真実性を保障できれば足り、罪体について必要であるが、犯人と被告人の同一性には必ずしも補強を要しない(最判昭30.6.22)。
第4章 伝聞法則
伝聞証拠とは、公判期日外の供述を内容とする証拠で、その供述内容の真実性を立証するために用いられるものをいう。伝聞法則とは、刑訴法320条1項がこの伝聞証拠の証拠能力を原則として否定するルールである。その趣旨は、供述証拠は知覚・記憶・表現・叙述の各過程で誤りが介入するおそれがあるところ、反対尋問(憲法37条2項)等による吟味を経ていない供述は正確性の担保がない点にある。伝聞法則は刑訴法の論文で最も出題頻度の高い分野であり、伝聞証拠の意義は平成27・28・29年、令和3・5年と、ほぼ毎年問われている。答案では、まず「本件証拠は伝聞証拠に当たり証拠能力が否定されないか」と問題提起し、次に伝聞法則の趣旨から伝聞証拠の定義を導き、そのうえで要証事実を特定して伝聞・非伝聞を区別する。伝聞・非伝聞の区別は要証事実との関係で決まり、供述内容の真実性が問題となれば伝聞、供述の存在自体が要証事実の証明に役立つなら非伝聞である。非伝聞の典型は、脅迫文言のように供述の存在自体が要証事実となる場合、犯行計画メモのように供述者の精神状態を示す場合、「差し上げます」のような行為の言語的部分である。伝聞証拠と判断した後は、321条1項2号(検面調書)・3号(員面調書)、322条1項(被告人の供述書)、324条(再伝聞)、326条(同意書面)、328条(弾劾証拠)など伝聞例外の要件を条文ごとに検討する。よくあるミスは、要証事実を特定せずに「供述だから伝聞」と結論を急ぐこと、321条1項2号後段の相対的特信情況を供述内容の信用性そのもので判断してしまうこと、実況見分調書中の立会人の指示説明部分を321条3項だけで処理してしまうことである。
伝聞例外A+
- A+被告人以外の者の検察官面前調書(321条1項2号)平成25・27・28・令和5
- A+被告人以外の者の員面調書(321条1項3号)平成27・28・令和5
- A+証言拒絶と321条1項3号の「供述不能」(最大判昭27.4.9・最判昭44.12.4)令和3
- A被告人の供述書・供述録取書(322条1項)令和5
- A伝聞供述・再伝聞(324条)令和3・5
- A同意書面(326条)全年度関連
- B+実況見分調書と伝聞法則(321条3項)平成25・28・令和5
- A+写真・録音テープ等の証拠能力平成25・29
- A証明力を争う証拠(328条)令和3・5
- A328条の証明力を回復する証拠(回復証拠)(平成29年)平成29
- A類似事実(前科・起訴外の類似事実)による犯人性の証明(最判平24.9.7・最決平25.2.20)令和2
Q伝聞証拠と非伝聞の違いは?+
要証事実との関係で判断する。供述内容が真実であることを前提に初めて要証事実の証明に役立つなら伝聞証拠、供述の存在自体が要証事実の証明に役立つなら非伝聞である。脅迫文言や犯行計画メモ、行為の言語的部分が非伝聞の典型例となる。
Q伝聞法則(刑訴法320条1項)の趣旨は?+
供述証拠は知覚・記憶・表現・叙述の各過程で誤りが混入するおそれがあり、反対尋問(憲法37条2項)等による吟味を経ていない供述は正確性の担保がないため、事実認定の基礎とすべきでないという点にある。
Q検察官面前調書(321条1項2号)が証拠になる要件は?+
前段は供述者の死亡・所在不明等による供述不能、後段は公判供述と相反する供述をしたこと+相対的特信情況が必要である。相対的特信情況は供述内容の信用性ではなく、取調べ状況などの外部的付随的事情を比較して判断する。
Q実況見分調書は伝聞証拠か?+
実況見分調書は321条3項により、作成者が真正に作成されたと供述すれば証拠能力が認められる。ただし立会人の指示説明のうち犯行状況の再現など供述内容の真実性が問題となる部分は再伝聞となり、321条1項3号等の要件を別途満たす必要がある。
第5章 公訴提起・訴因
訴因とは、検察官が設定した審判対象であり、刑訴法256条3項により「できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定して」記載される。訴因変更の要否とは、裁判所が訴因と異なる事実を認定する場合に訴因変更手続(312条1項)を経る必要があるかという問題であり、訴因変更の可否とは、変更が「公訴事実の同一性を害しない限度」で許されるかという問題である。訴因変更の要否は平成24・26年、令和元・4年に、公訴事実の同一性は平成24・26年、令和元・3・4年に出題されており、公判手続分野の最重要論点である。答案では、まず訴因制度のもとで審判対象は検察官の設定した訴因であることを確認し、要否の判断では最決平13.4.11の二段階枠組みを用いる。第一段階として審判対象の画定に必要不可欠な事実に変動があれば被告人の防御のいかんにかかわらず訴因変更が必要であり、第二段階として被告人の防御にとって重要な事実に変動があれば原則として訴因変更が必要となるが、審理経過に照らし被告人に不意打ちを与えず、かつ認定事実が被告人にとって不利益でない場合には例外的に変更なく認定できる。可否の判断では、公訴事実の同一性を基本的事実関係の同一性で判断し、両訴因の非両立性と共通性を総合考慮する。よくあるミスは、要否と可否を混同して「公訴事実の同一性」を要否の問題で論じること、第一段階と第二段階を区別せず「防御に重要か」だけで処理すること、例外の二要件(不意打ちの不存在と不利益でないこと)の双方を検討しないことである。
訴因変更の可否(312条1項)A+
Q訴因変更が必要になるのはどんな場合?+
最決平13.4.11の枠組みでは、①審判対象の画定に必要不可欠な事実に変動があれば常に必要、②被告人の防御にとって重要な事実に変動があれば原則必要だが、審理経過に照らし不意打ちがなく認定事実が被告人に不利益でなければ例外的に不要となる。
Q公訴事実の同一性はどう判断する?+
基本的事実関係の同一性を基準とし、①両訴因の事実が両立しうるか(非両立性)、②両訴因に共通する部分があるか(共通性)を総合考慮して判断する。窃盗と盗品等有償譲受けのように非両立の関係にあれば同一性が認められやすい。
Q訴因変更の要否と可否の違いは?+
要否は、訴因と異なる事実を認定するときに312条1項の手続を経る必要があるかの問題で、防御権の観点から判断する。可否は、検察官の変更請求が「公訴事実の同一性を害しない限度」にあるかの問題で、基本的事実関係の同一性で判断する。
Q裁判所に訴因変更を命じる義務はある?+
訴因の設定・変更は第一次的に検察官の権限であるため、訴因変更命令(312条2項)は裁判所の裁量であり原則として義務ではない。ただし、訴因変更を促さずに無罪判決を言い渡すことが著しく正義に反する場合は例外的に促す義務が認められうる。