CRIMINAL PROCEDURE
公判前整理手続後の訴因変更の制限(東京高判平20.11.18)
公判前整理手続後の訴因変更の制限は、刑事訴訟法(公訴提起・訴因)の論点です。公判前整理手続(316条の2以下)を経た後に、検察官が訴因変更を請求した場合、その許否はいかに判断すべきか。公判前整理手続後の訴因変更の可否が問題となる。 判例・通説の規範は「【問題の所在】」とされ、予備試験・司法試験の論文では令和元年に問われています。
問題の所在
公判前整理手続(316条の2以下)を経た後に、検察官が訴因変更を請求した場合、その許否はいかに判断すべきか。公判前整理手続後の訴因変更の可否が問題となる。
規範(判例・通説の定式)
【問題の所在】
刑訴法316条の32は、公判前整理手続を経た後に当事者がやむを得ない事由がなければ新たな証拠調べ請求をすることができないとする(失権効)。しかし、訴因変更の制限については明文規定がない。
【東京高判平20.11.18の判断枠組み】
公判前整理手続後の訴因変更の許否は、①公訴事実の同一性(312条1項)の要件を充足するかのほかに、②公判前整理手続の趣旨・目的に反しないか(充実した継続的・計画的・迅速な審理の実現)を考慮して判断すべきである。具体的には、
(ア) やむを得ない事由の有無:訴因変更を請求するに至った事由が公判前整理手続当時に予見可能であったかどうか。予見可能であったにもかかわらず請求しなかった場合は、やむを得ない事由がないとして制限される方向に働く(316条の32の趣旨の類推)。
(イ) 訴因変更が審理計画に与える影響:新たな証拠調べが必要となるか、被告人・弁護人に追加的な防御準備期間が必要となるか、審理計画の実質的な変更・遅延が生じるか。
(ウ) 被告人・弁護人の不意打ちの程度:変更後の訴因が公判前整理手続において全く争点として顕在化していなかった場合は被告人の防御権(憲法37条)の観点から制限される方向に働く。
あてはめのポイント
令和元年事例での検討:業務上横領→詐欺の訴因変更は、①公訴事実の同一性については、同一財物の不正取得という基本的事実関係の同一性・両訴因の非両立性・被害者同一・日時場所の同一から肯定方向に評価できる。②公判前整理手続の趣旨との関係では、詐欺の訴因変更が整理手続後に初めて請求された経緯・新たな欺罔行為に関する証拠調べの要否・弁護人の防御準備への影響を検討する。
答案での書き方(法的三段論法)
- 1
問題提起
公判前整理手続(316条の2以下)を経た後に、検察官が訴因変更を請求した場合、その許否はいかに判断すべきか。公判前整理手続後の訴因変更の可否が問題となる。
- 2
規範
上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。
- 3
あてはめ
問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。
- 4
結論
「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。
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出題実績と演習
よくある質問
Q公判前整理手続(316条の2以下)を経た後に、検察官が訴因変更を請求した場合、その許否はいかに判断すべきか。+
【問題の所在】
Q「公判前整理手続後の訴因変更の制限」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+
令和元年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は重要ランクです。
Q訴因変更が必要になるのはどんな場合?+
最決平13.4.11の枠組みでは、①審判対象の画定に必要不可欠な事実に変動があれば常に必要、②被告人の防御にとって重要な事実に変動があれば原則必要だが、審理経過に照らし不意打ちがなく認定事実が被告人に不利益でなければ例外的に不要となる。
Q公訴事実の同一性はどう判断する?+
基本的事実関係の同一性を基準とし、①両訴因の事実が両立しうるか(非両立性)、②両訴因に共通する部分があるか(共通性)を総合考慮して判断する。窃盗と盗品等有償譲受けのように非両立の関係にあれば同一性が認められやすい。
Q訴因変更の要否と可否の違いは?+
要否は、訴因と異なる事実を認定するときに312条1項の手続を経る必要があるかの問題で、防御権の観点から判断する。可否は、検察官の変更請求が「公訴事実の同一性を害しない限度」にあるかの問題で、基本的事実関係の同一性で判断する。