ADMINISTRATIVE LAW
行政法の論点一覧 全41論点
行政法の論点解説では、行政裁量と裁量基準、行政行為の効力と違法性の承継、行政手続法、処分性・原告適格・訴えの利益といった取消訴訟の訴訟要件、義務付け訴訟・差止め訴訟、国家賠償、損失補償を扱います。行政法は個別法の仕組み解釈が鍵となるため、各論点で判例の判断枠組みと考慮要素を示し、答案で問題文の個別法条文を枠組みに当てはめる訓練ができるようにしています。

第1章 行政行為
行政裁量とは、法律が行政庁に判断の余地を与えている場合に、行政庁が行う選択の自由をいう。裁量権の逸脱・濫用とは、行政庁の裁量処分について、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に裁判所が処分を取り消すことができるとする行訴法30条の審査枠組みである。裁量権の逸脱・濫用はほぼ全年度で問われ、裁量基準と個別事情考慮義務は平成23・25・27・29年、令和元・3・5年に、違法性の承継は平成24・26・28・30年、令和2・4年に出題されており、行政法の本案論の中核である。答案では、まず根拠法令の文言・趣旨と処分の性質から裁量の有無と幅を認定し、次に裁量権の逸脱・濫用の有無を、①考慮すべき事項を考慮しなかったか(考慮不尽・他事考慮)、②社会観念上著しく妥当を欠くかを基準に判断する。判断過程審査では、考慮すべき事項を適切に考慮したか、考慮すべきでない事項を考慮していないか、各考慮事項の評価が合理的かを審査する。裁量基準が設定・公表されている場合は、基準が行政規則にとどまることを前提に、個別事情を考慮せず機械的に適用することが著しく不合理なら基準からの離脱が許される点を書く。行政行為の効力では、公定力・不可争力を前提に、先行処分と後行処分が連続した一連の手続を構成し一つの法効果の実現を目指す関係にある場合に例外的に違法性の承継を認める(最判平21.12.17)枠組みを、手続的保障の程度と実体法上の関連性から論じる。よくあるミスは、裁量の有無を認定せずに裁量審査に入ること、「著しく妥当を欠く」と結論だけ書いて考慮要素の評価をしないこと、違法性の承継で原則が否定であることを示さず例外から書き始めることである。
行政裁量
Q裁量権の逸脱・濫用はどう判断する?+
①考慮すべき事項を考慮しなかったか(考慮不尽・他事考慮)、②社会観念上著しく妥当を欠くかを基準に判断する(行訴法30条)。判断過程審査では、考慮事項の適切な考慮、不当な事項の考慮の有無、各事項の評価の合理性を審査する。
Q裁量基準を機械的に適用した処分は違法?+
裁量基準は行政規則にとどまるため、個別具体的な事情を考慮せず基準を機械的に適用することが著しく不合理となる場合には基準からの離脱が許され、機械的適用は裁量権の逸脱・濫用となりうる。逆に正当な理由なく基準に反する処分は平等原則違反となりうる。
Q違法性の承継が認められる要件は?+
原則として先行処分の違法は後行処分に承継されないが、先行処分と後行処分が連続した一連の手続を構成し、相互に結合して一つの法効果の実現を目指す関係にある場合には例外的に認められる(最判平21.12.17)。手続的保障の程度と実体法上の関連性を考慮する。
Q行政行為の撤回はどんな場合に許される?+
適法になされた行政行為を後発的事情の変化を理由に効力を失わせるもので、公益上の必要性と相手方の信頼保護(法的安定性)の比較衡量により判断される。相手方の不利益が大きい場合は損失補償の要否も問題となり、不利益処分として行政手続法の手続的保障が及ぶ。
第2章 行政手続
第3章 行政救済法
処分性とは、ある行為が取消訴訟の対象となる「処分」(行訴法3条2項)に当たるかという問題であり、処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最判昭39.10.29)。原告適格とは、処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)に当たるかという問題である。処分性・原告適格・国家賠償法1条1項はいずれもほぼ全年度で出題され、狭義の訴えの利益は平成24・26・28・30年、令和2・4年、義務付け訴訟は平成23・25・27・29年、令和元・3・5年に問われており、行政救済法は行政法論文の必修分野である。答案では、訴訟要件を処分性→原告適格→訴えの利益→その他の順に検討し、処分性では「公権力性」と「直接の法効果性」に分けて個別法の仕組みから論じる。原告適格では、行訴法9条2項に従い、根拠法令と関連法令の趣旨目的、処分で考慮されるべき利益の内容・性質、害される態様・程度を勘案し、当該利益が一般的公益に吸収されず個々人の個別的利益として保護されているかを論じる(最大判平17.12.7)。国家賠償では、職務行為基準説により職務上通常尽くすべき注意義務違反を「違法」とし(最判昭60.11.21)、規制権限不行使は著しく合理性を欠く場合に限り違法となる(最判平16.4.27)。よくあるミスは、処分性の判例の定義を書かずに結論を急ぐこと、原告適格で9条2項の考慮要素を列挙するだけで個別法の条文を引かないこと、国賠の違法を結果の違法で判断してしまうことである。
取消訴訟の訴訟要件
- 処分性(行訴法3条2項)ほぼ全年度
- 段階的手続における中間処分の処分性令和3
- 行政計画(農用地利用計画)の処分性と内部規程による申請権(最判昭57.4.22参照)令和2
- 原告適格(行訴法9条)ほぼ全年度
- 第三者の原告適格(処分の相手方に準ずる者・行訴法9条1項)令和5
- 開発許可の取消訴訟における第三者の原告適格(最判平13.3.13)令和4
- 狭義の訴えの利益(行訴法9条1項括弧書)平成24・26・28・30・令和2・
- 開発行為完了後の訴えの利益の消滅(最判平7.11.9・最判昭59.10.26参照)令和4
- 競願関係における訴えの利益(最判昭43.12.24・放送局免許)令和3
- 被告適格と管轄(行訴法11条・12条)全年度関連
- 執行停止(行訴法25条)平成24・26・令和2
- 無効確認訴訟(行訴法3条4項・36条)と取消訴訟の選択平成24・26・28・30・令和2・
- 無効確認訴訟(行訴法36条)の補充性と争点訴訟の関係令和元
- 実質的当事者訴訟(行訴法4条後段)平成23・27・令和元・5
取消訴訟の本案
その他の抗告訴訟
Q処分性はどう判断する?+
取消訴訟の対象となる処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最判昭39.10.29)。公権力性と直接の法効果性を個別法の仕組みから検討する。
Q原告適格の「法律上の利益を有する者」とは?+
処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう(最判平元.2.17)。第三者については行訴法9条2項により、根拠法令・関連法令の趣旨目的と、害される利益の内容・性質・態様・程度を勘案して判断する。
Q国家賠償法1条1項の「違法」はどう判断する?+
公務員が個別の国民に対して負担する職務上通常尽くすべき注意義務に違反したかで判断する(職務行為基準説・最判昭60.11.21)。規制権限の不行使は、根拠法令の趣旨目的や権限の性質に照らし、不行使が著しく合理性を欠く場合に限り違法となる(最判平16.4.27)。
Q法律に補償規定がなくても損失補償を請求できる?+
できる。憲法29条3項を直接の根拠として損失補償を請求することが可能である(最大判昭43.11.27)。補償の要否は、規制が特定の者に向けられているか(形式的基準)と財産権の本質的内容を侵害するほど強度か(実質的基準)から特別の犠牲に当たるかで判断する。