CIVIL PROCEDURE
既判力の客観的範囲(114条)
規範(判例・通説の定式)
【規範】既判力は主文に包含するものに限り生じる(114条1項)。訴訟物たる権利・法律関係の存否の判断に生じ、理由中の判断(先決的法律関係・事実認定等)には原則生じない。
補足
【相殺の抗弁(114条2項)】相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する(相殺の抗弁は実質的に反訴に準ずる機能を有するため)。
【「生じる」と「及ぶ」の違い】前訴でXのYに対する売買代金請求が認容され確定した後、YがXに対し「売買契約は錯誤で無効」として不当利得返還請求(後訴)を起こしたとする。前訴判決の主文の判断「XのYに対する代金請求権が存在する」に既判力が生じ、後訴の訴訟物(不当利得返還請求権)は前訴訴訟物と矛盾関係(または先決関係)にあるから既判力が後訴に及び、「契約は無効」という主張は主文の判断に矛盾するため遮断される。前訴判決の理由中で「契約は有効」と判断されていたことに既判力が生じるからではない点に注意。
【理由中の判断に既判力が生じない理由】当事者は訴訟物についてのみ最終的な決着を求めて攻撃防御を尽くすのであり、理由中の個々の判断(前提問題)についてまで拘束を受けると、審理の弾力性が失われ当事者の手続保障にも欠けるため(114条1項の趣旨)。
答案での書き方(法的三段論法)
- 1
問題提起
本件で既判力の客観的範囲が問題となる旨を、条文を引用して1〜2文で提起する。
- 2
規範
上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。
- 3
あてはめ
問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。
- 4
結論
「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。
自分の答案がこの4要素に分解できているかは、AI答案添削で色分けして確認できます。
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出題実績と演習
よくある質問
Q「既判力の客観的範囲」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+
平成23年・平成25年・平成26年・平成27年・平成28年・平成29年・平成30年・令和元年・令和2年・令和3年・令和4年・令和5年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。
Q既判力とは何か?+
前訴確定判決の判断内容が後訴に対して有する拘束力をいう。趣旨は紛争の蒸し返し防止・紛争解決の終局性・訴訟経済・法的安定性の確保にあり、当事者に手続保障が及んだことが実質的根拠である。客観的範囲は主文に包含するもの(114条1項)に限られる。
Q既判力の基準時後に取消権や相殺権を行使できる?+
基準時(事実審の口頭弁論終結時)前に取消事由が存在したのに行使しなかった取消権は遮断される(最判昭55.10.23)。相殺権は訴訟物とは別個独立の抗弁であり基準時後でも遮断されない(最判昭40.4.2)。建物買取請求権も遮断されない。
Q一部請求の後に残部請求はできる?+
一部請求であることが明示されていれば訴訟物はその一部に限定され、残部請求は既判力に反しない(最判昭37.8.10)。ただし一部請求が棄却された後の残部請求は、特段の事情のない限り信義則に反し許されない(最判平10.6.12)。明示がなければ既判力は債権全体に及ぶ。
Q既判力が作用するのはどんな場面?+
前訴の訴訟物と後訴の訴訟物が同一・先決・矛盾のいずれかの関係にある場合である。作用の内容は、後訴裁判所が前訴判断と矛盾する判断をできない積極的作用と、当事者の矛盾する主張が排斥される消極的作用の二つに分けて書く。