CIVIL PROCEDURE
明示的一部請求後の残部請求
規範(判例・通説の定式)
【既判力】一部請求であることが明示された場合、訴訟物は当該一部に限定(最判昭37.8.10)。残部請求の訴訟物は同一でなく既判力は残部に及ばない。明示一部請求の認容判決も既判力は一部にのみ及び、残部請求は既判力に反しない。
【判例(80事件)】最判平10.6.12=明示の一部請求が全部または一部棄却された後の残部請求は、前訴で債権全体について審理判断され、残部が存在しないとの判断を実質的に含むから、既判力には反しないものの、特段の事情がない限り信義則に反して許されない(訴え却下)。
補足
※判例、司法試験委員会は基本的には、信義則による後訴の遮断には否定的であるが、明示的一分請求後の残部請求は信義則による後訴の遮断が特殊な類型として認められている。これを一般化してはならない。
【勝訴・敗訴で結論が変わる】明示の一部請求が認容(勝訴)された後の残部請求は、既判力にも信義則にも反せず許される(残部は未審理)。全部棄却(敗訴)された後の残部請求だけが、80事件により信義則で遮断される。答案では前訴の結論を確認してから論じる。
【「明示」の判断】訴状に「一部請求」と書かれていなくても、請求額が全体の一部であることが訴訟上明らかにされていれば明示があったと扱われる(最判昭37.8.10)。明示の有無は訴状の記載・当事者の主張・審理経過から判断する。
関連判例
最判平10.6.12(百選80事件)明示の一部請求後の残部請求
金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されない。
答案での書き方(法的三段論法)
- 1
問題提起
本件で明示的一部請求後の残部請求が問題となる旨を、条文を引用して1〜2文で提起する。
- 2
規範
上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。
- 3
あてはめ
問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。
- 4
結論
「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。
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出題実績と演習
よくある質問
Q「明示的一部請求後の残部請求」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+
平成27年・令和2年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。
Q既判力とは何か?+
前訴確定判決の判断内容が後訴に対して有する拘束力をいう。趣旨は紛争の蒸し返し防止・紛争解決の終局性・訴訟経済・法的安定性の確保にあり、当事者に手続保障が及んだことが実質的根拠である。客観的範囲は主文に包含するもの(114条1項)に限られる。
Q既判力の基準時後に取消権や相殺権を行使できる?+
基準時(事実審の口頭弁論終結時)前に取消事由が存在したのに行使しなかった取消権は遮断される(最判昭55.10.23)。相殺権は訴訟物とは別個独立の抗弁であり基準時後でも遮断されない(最判昭40.4.2)。建物買取請求権も遮断されない。
Q一部請求の後に残部請求はできる?+
一部請求であることが明示されていれば訴訟物はその一部に限定され、残部請求は既判力に反しない(最判昭37.8.10)。ただし一部請求が棄却された後の残部請求は、特段の事情のない限り信義則に反し許されない(最判平10.6.12)。明示がなければ既判力は債権全体に及ぶ。
Q既判力が作用するのはどんな場面?+
前訴の訴訟物と後訴の訴訟物が同一・先決・矛盾のいずれかの関係にある場合である。作用の内容は、後訴裁判所が前訴判断と矛盾する判断をできない積極的作用と、当事者の矛盾する主張が排斥される消極的作用の二つに分けて書く。