CORPORATE LAW
多額の借財(362条4項2号)と代表取締役の権限外行為の効力
多額の借財と代表取締役の権限外行為の効力は、商法(会社法)(機関)の論点です。代表取締役が取締役会の決議を経ることなく「多額の借財」(362条4項2号)に当たる借入れをした場合、当該借入れの効力はいかになるか。 判例・通説の規範は「【「多額の借財」の判断基準】」とされ、予備試験・司法試験の論文では平成26年に問われています。
問題の所在
代表取締役が取締役会の決議を経ることなく「多額の借財」(362条4項2号)に当たる借入れをした場合、当該借入れの効力はいかになるか。
規範(判例・通説の定式)
【「多額の借財」の判断基準】
362条4項2号の「多額の借財」に当たるかどうかは、会社の規模・財産状態等を踏まえ、当該借財が会社経営に重大な影響を及ぼすか否かを基準とする(社会通念上の判断)。具体的には、借財の額が会社の年商・純資産額等に匹敵・接近する場合に「多額」と評価されうる。
【取締役会決議を欠く借入れの効力(→4-4参照)】
取締役会の決議を欠く代表取締役の行為は、原則として有効(内部的制限の問題)であるが、相手方が取締役会決議を欠くことを知り又は知ることができた場合(悪意・重過失)には、会社はその無効を主張できる(最判昭40.9.22)。
【権限濫用(93条但書類推)との関係】
代表取締役が権限を濫用して(会社の利益でなく自己の利益のために)借入れをした場合、相手方がその意図を知り又は知ることができたときは、民法93条但書(心裡留保)の類推により無効と解しうる(最判昭38.9.5)。
答案での書き方(法的三段論法)
- 1
問題提起
代表取締役が取締役会の決議を経ることなく「多額の借財」(362条4項2号)に当たる借入れをした場合、当該借入れの効力はいかになるか。
- 2
規範
上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。
- 3
あてはめ
問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。
- 4
結論
「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。
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出題実績と演習
よくある質問
Q代表取締役が取締役会の決議を経ることなく「多額の借財」(362条4項2号)に当たる借入れをした場合、当該借入れの効力はいかになるか。+
【「多額の借財」の判断基準】
Q「多額の借財と代表取締役の権限外行為の効力」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+
平成26年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。
Q株主総会決議の取消し・無効・不存在の違いは?+
招集手続・決議方法の法令定款違反、決議内容の定款違反、特別利害関係人の著しく不当な議決権行使は取消事由(831条・決議から3か月以内)。決議内容の法令違反は無効事由(830条2項・期間制限なし)。全株主への招集通知漏れなど著しい手続的瑕疵は不存在(830条1項)となる。
Q経営判断原則とは?+
取締役の経営上の判断について、判断の過程(情報収集・分析・検討)と内容に著しく不合理な点がない限り善管注意義務違反とならないとする法理である。①前提となる事実認識に不注意な誤りがないか、②意思決定の過程・内容が著しく不合理でないかを審査する(最判平22.7.15参照)。
Q取締役会の承認がない利益相反取引の効力は?+
取締役会の承認を得ない直接取引は相対的無効であり、会社は善意の第三者に無効を主張できない(最大判昭46.10.13)。間接取引も第三者が関与するのが通常なので同様に相対的無効と解する。取引で会社に損害が生じれば任務懈怠が推定される(423条3項)。