オンラインロースクールONLINE LAW SCHOOL

CORPORATE LAW

取締役の株主総会決議遵守義務(355条)と事情変更後の対応(令和元年)

取締役・取締役会出題年度:令和元

取締役の株主総会決議遵守義務と事情変更後の対応は、商法(会社法)(機関)の論点です。取締役は株主総会決議を遵守する義務(355条)を負うが、決議後に重大な事情変化が生じた場合(建物倒壊・業況悪化等)、なお決議どおりに業務執行する義務を負い続けるか。取締役の善管注意義務と株主意思尊重のいずれを優先すべきかが問題となる。 判例・通説の規範は「【前提:295条2項と取締役会設置会社における株主総会の権限】」とされ、予備試験・司法試験の論文では令和元年に問われています。

問題の所在

取締役は株主総会決議を遵守する義務(355条)を負うが、決議後に重大な事情変化が生じた場合(建物倒壊・業況悪化等)、なお決議どおりに業務執行する義務を負い続けるか。取締役の善管注意義務と株主意思尊重のいずれを優先すべきかが問題となる。

規範(判例・通説の定式)

【前提:295条2項と取締役会設置会社における株主総会の権限】

取締役会設置会社において、株主総会の権限は会社法・定款に定める事項に限定される(295条2項)。もっとも、株主総会は取締役の業務執行に関して決議(「勧告的決議」を含む)を行うことができ、取締役は355条によりこれを遵守する義務を負う。

【事情変更後の取締役の義務(3説)】

ア 株主意思再確認義務説:決議後の事情変化が重大な場合、取締役は臨時株主総会を招集するなどして改めて株主の意思を確認する義務を負う。この義務に違反して独断で決議と異なる行為をした場合に任務懈怠となる(ただし確認まで行動を留保した場合の損害は別途問題)。

イ 遵守禁止義務説:決議後の事情変化により会社に重大な損害が生じることが明らかな場合、取締役は決議に従ってはならない(善管注意義務が355条上の遵守義務に優先する)。なお決議内容を実行した場合に423条1項の責任を負いうる。

ウ 遵守義務維持説:取締役は株主総会決議に従った業務執行義務を負い続け、事情変化があっても当然には消滅しない。ただし、善管注意義務の範囲内での裁量(損害軽減措置・代替行動等)は許容される。

【423条1項との関係】

どの説に立つかにより任務懈怠の有無が異なる。①説に立つ場合→株主意思確認をせずに独断行動すれば任務懈怠。②説に立つ場合→会社に損害が生じる決議を遵守すること自体が任務懈怠。③説に立つ場合→決議どおりに行動した場合の任務懈怠は原則否定(善管注意義務の範囲内での措置を怠った点が問題となりうる)。

答案での書き方(法的三段論法)

  1. 1

    問題提起

    取締役は株主総会決議を遵守する義務(355条)を負うが、決議後に重大な事情変化が生じた場合(建物倒壊・業況悪化等)、なお決議どおりに業務執行する義務を負い続けるか。取締役の善管注意義務と株主意思尊重のいずれを優先すべきかが問題となる。

  2. 2

    規範

    上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。

  3. 3

    あてはめ

    問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。

  4. 4

    結論

    「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。

自分の答案がこの4要素に分解できているかは、AI答案添削で色分けして確認できます。

あわせて読みたい論点

この論点の前提になる論点や、対になる論点です。

さらに学びたい人へ(おすすめ教材)

この論点の理解を深める教材です。リンクにはアフィリエイトリンクを含みます(価格は変わりません)。

出題実績と演習

よくある質問

Q取締役は株主総会決議を遵守する義務(355条)を負うが、決議後に重大な事情変化が生じた場合(建物倒壊・業況悪化等)、なお決議どおりに業務執行する義務を負い続ける+

【前提:295条2項と取締役会設置会社における株主総会の権限】

Q「取締役の株主総会決議遵守義務と事情変更後の対応」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+

令和元年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。

Q株主総会決議の取消し・無効・不存在の違いは?+

招集手続・決議方法の法令定款違反、決議内容の定款違反、特別利害関係人の著しく不当な議決権行使は取消事由(831条・決議から3か月以内)。決議内容の法令違反は無効事由(830条2項・期間制限なし)。全株主への招集通知漏れなど著しい手続的瑕疵は不存在(830条1項)となる。

Q経営判断原則とは?+

取締役の経営上の判断について、判断の過程(情報収集・分析・検討)と内容に著しく不合理な点がない限り善管注意義務違反とならないとする法理である。①前提となる事実認識に不注意な誤りがないか、②意思決定の過程・内容が著しく不合理でないかを審査する(最判平22.7.15参照)。

Q取締役会の承認がない利益相反取引の効力は?+

取締役会の承認を得ない直接取引は相対的無効であり、会社は善意の第三者に無効を主張できない(最大判昭46.10.13)。間接取引も第三者が関与するのが通常なので同様に相対的無効と解する。取引で会社に損害が生じれば任務懈怠が推定される(423条3項)。