CIVIL LAW
指図による占有移転と即時取得(最判昭35.2.11の「占有を始めた」の意義)
指図による占有移転と即時取得は、民法(物権)の論点です。指図による占有移転(184条)によって間接占有を取得した者は、即時取得(192条)に必要な「占有を始めた」の要件を満たすか。178条の「引渡し」(対抗要件)との区別が問題となる。 判例・通説の規範は「即時取得(192条)の「占有を始めた」とは、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することをいう(最判昭35.2.11・民集14巻2号168頁)。」とされ、予備試験・司法試験の論文では令和3年に問われています。
問題の所在
指図による占有移転(184条)によって間接占有を取得した者は、即時取得(192条)に必要な「占有を始めた」の要件を満たすか。178条の「引渡し」(対抗要件)との区別が問題となる。
規範(判例・通説の定式)
即時取得(192条)の「占有を始めた」とは、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することをいう(最判昭35.2.11・民集14巻2号168頁)。
指図による占有移転(184条)は、現直接占有者に以後新本人のために占有する旨の命令を発し新本人が承諾することで成立するが、直接占有者が同じまま外観上の占有状態に変更を生じさせない。したがって「一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき」という要件を充たさない。
→指図による占有移転のみによっては即時取得は成立しない。
178条の「引渡し」(物権変動の対抗要件)は指図による占有移転で足り(178条)、即時取得の「占有を始めた」とは別個の要件である。178条の要件充足が192条の要件充足を当然に意味しない。
答案での書き方(法的三段論法)
- 1
問題提起
指図による占有移転(184条)によって間接占有を取得した者は、即時取得(192条)に必要な「占有を始めた」の要件を満たすか。178条の「引渡し」(対抗要件)との区別が問題となる。
- 2
規範
上の「規範」の定式を、判例名・条文とセットでそのまま書く。要件が複数ある場合は①②③と番号を振る。
- 3
あてはめ
問題文の事情を要件ごとに引用し、「〜という事情は…を意味するから、要件○を満たす」と評価を加える。数字・なお書き・当事者の具体的行動は必ず拾う。
- 4
結論
「したがって/よって」で要件充足と結論(成立・不成立、適法・違法、合憲・違憲)を一文で締める。
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出題実績と演習
よくある質問
Q指図による占有移転(184条)によって間接占有を取得した者は、即時取得(192条)に必要な「占有を始めた」の要件を満たすか。+
即時取得(192条)の「占有を始めた」とは、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することをいう(最判昭35.2.11・民集14巻2号168頁)。
Q「指図による占有移転と即時取得」は予備試験・司法試験で出題されていますか?+
令和3年の論文式試験で出題(または関連出題)されています。頻出度は標準ランクです。
Q177条の第三者とは誰のこと?+
当事者及びその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいう(最判昭25.12.19)。不法占拠者や無権利者は含まれず、物権変動を知りながら登記の欠缺を主張することが信義に反する背信的悪意者も含まれない(最判昭43.8.2)。
Q占有改定で即時取得は成立する?+
成立しない。即時取得は占有の外観を信頼した者を保護する制度であり、占有改定では外観上の変化がないため「占有を始めた」(192条)に当たらない(最判昭35.2.11)。指図による占有移転も同様で、現実の引渡しが必要である。
Q抵当権者は賃料債権に物上代位できる?+
できる(最大決平元.10.27)。ただし払渡し前に差押えが必要である(304条1項但書)。転貸賃料債権には原則として物上代位できないが、賃借人を所有者と同視できる場合は例外的に認められる(最決平12.4.14)。