司法試験 平成30年 商法
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問題文
[民事系科目]〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,25:50:25〕)
次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。
1.Aは,関東地方のP県において,個人でハンバーガーショップを営んでいた。Aが作るハンバーガーは,Aが独自に調合した調味料による味わいにより,地域で評判であった。
2.Aは,P県内に複数の店舗を出店しようと考え,Aの子B,弟C及び叔父Dの出資を得て甲株式会社(以下「甲社」という。)を設立した。甲社の発行済株式の総数は1000株であり,Aが300株を,Bが250株を,Cが250株を,Dが200株を,それぞれ有している。
甲社は,取締役会及び監査役を置いている。甲社では,Aが代表取締役を,B,C及び甲社の使用人でもあるEが取締役を,それぞれ務めている。甲社は,会社法上の公開会社ではなく,かつ,種類株式発行会社でもない。甲社の定款には,取締役を解任する株主総会の決議は,議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し,出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う旨の定めがある。
3.甲社は,P県内に十数店舗を出店した。この間,Dの子Fが,甲社が出店する予定がない近畿地方のQ県において,ハンバーガーショップを営む乙株式会社(以下「乙社」という。)の代表取締役として,乙社を経営するようになった。乙社の発行済株式はDが全て有しているが,Dは乙社の経営に関与していない。
4.甲社は,当初,順調に売上げを伸ばしたが,その後,3期連続で売上げが減少した。そのような中,AとCとの間で,甲社の経営方針をめぐる対立が生じた。
5.Cは,Dと面会し,Dに対し,Aが仕入先からリベートを受け取っていると述べ,次の甲社の定時株主総会において,Aを取締役から解任する旨の議案を提出するつもりであるから,これに賛成してもらいたいと求めた。Dは,甲社に見切りを付けており,自己の有する甲社株式200株(以下「D保有株式」という。)を売却することを考えていたため,Cの求めに対して回答を保留した上で,CがD保有株式を買い取ることを求めた。Cは,資金が十分ではなかったので,Dの求めに対して回答を保留した。
6.その後,Dは,甲社において営業時間内にAと面会し,D保有株式をAが買い取ることを求めた。Aがこれを拒否したところ,DはAが仕入先からリベートを受け取っている疑いがあるため,Aの取締役としての損害賠償責任の有無を検討するために必要であるとして,直近3期分の総勘定元帳及びその補助簿のうち,仕入取引に関する部分の閲覧の請求をした。これに対し,Aが,どうすればこの請求を撤回してもらえるかと尋ねたところ,Dは,自分は甲社に対して興味を失っており,Aがリベートを受け取っているかどうかなどは本当はどうでもよいと述べた上で,AがD保有株式を買い取ることを重ねて求めた。
〔設問1〕 上記1から6までを前提として,上記6の閲覧の請求を拒むために甲社の立場において考えられる主張及びその主張の当否について,論じなさい。
7.後日,Dは,Aに対し,AとCとの間の対立は知っているが,仮に,甲社の株主総会において,Cを取締役から解任する旨の議案が提出された場合には,これに反対するつもりであると述べた。
Aは,次の甲社の定時株主総会において,Cを取締役から解任する旨の議案を提出することを計画していたため,当該議案について,Dが反対し,否決されることを恐れ,D保有株式を買い取りたいと考えたが,Aには甲社株式のほかに見るべき資産がなかった。
8.そこで,Aは友人Gに対してD保有株式の買取りを持ち掛けたところ,Gはこれに前向きであった。D保有株式の適正な売買価格は2400万円であったが,Gは,D保有株式の買取資金として1600万円しか用意することができなかったため,丙銀行株式会社(以下「丙銀行」という。)から当該買取資金として800万円を借り入れることとした。そして,D,G及び甲社は,平成27年2月2日,下記契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
本件契約
⑴ Dは,平成27年4月1日,Gに対し,売買代金2400万円の支払を受けるのと引換えにD保有株式を譲渡し,その株券を引き渡す。
⑵ 甲社は,Gが丙銀行からD保有株式の買取資金として800万円を借り入れることができるように,Gの丙銀行に対する借入金債務を連帯保証する。甲社は,Gに対し,保証料の支払を求めない。
⑶ Dは,平成27年3月25日に開催される甲社の定時株主総会においては,自らは出席せず,Aを代理人として議決権の行使に関する一切の事項を委任する。
9.平成27年3月10日,丙銀行及びGは,D保有株式の買取資金800万円について融資契約を締結し,甲社は,適法な取締役会の決議を経て,丙銀行との間で,Gの丙銀行に対する当該融資契約に基づく借入金債務について連帯保証契約を締結した。甲社は,Gから,保証料の支払を受けていない。なお,仮に,甲社が保証料の支払を受けてこのような保証をする場合には,保証料は60万円を下回らないものであった。
10.甲社は,適法な取締役会の決議に基づき,平成27年3月25日を定時株主総会(以下「本件株主総会」という。)の日として,招集通知を発した。本件株主総会においては,会社提案としてCを取締役から解任する旨の議案が,Cの株主提案としてAを取締役から解任する旨の議案が,それぞれ提出されることとなった。
11.本件株主総会には,A,B及びCが出席した。Dは,本件株主総会における議決権の行使に関する一切の事項をAに委任する旨の委任状をAに交付し,本件株主総会には,自らは出席しなかった。
本件株主総会において,Cを取締役から解任する旨の議案は,Cが反対したが,A,B及びDの代理人Aが賛成したことにより,可決された(以下「本件決議1」という。)。
続いて,Aを取締役から解任する旨の議案について,Cが提案の理由としてAの不正なリベートの受取について説明しようとした。これに対し,議長であるAは,そのような説明は議案と関連がないとして,これを制止し,直ちに採決に移り,当該議案は,Cが賛成したのみで,否決された(以下「本件決議2」という。)。
12.平成27年4月1日,丙銀行はGに対して800万円の融資を実行し,Gは,Dに対して売買代金2400万円を支払い,D保有株式を譲り受け,その株券の引渡しを受けた。
13.本件契約の内容並びに上記9及び12の事実を知ったCは,平成27年4月15日,本件決議1及び2について,株主総会の決議の取消しの訴えを提起した。
14.Gが丙銀行に対する借入金債務を弁済することができなかったため,甲社は,平成27年12月1日,丙銀行に対し,800万円の保証債務を弁済した。甲社はGに対して800万円を求償しているが,Gはこれに応じなかった。
〔設問2〕
⑴ 上記13の本件決議1及び2についての各決議の取消しの訴えに関して,Cの立場において考えられる主張及びその主張の当否について,論じなさい。なお,本件株主総会の招集の手続は,適法であったものとする。
⑵ 上記14の事実を知ったCが甲社の株主としてA及びGに対し会社法に基づき責任追及等の訴えを提起する場合に,A及びGの責任に関し,Cの立場において考えられる主張及びその主張の当否について,論じなさい。
15.Bは,甲社の内紛が継続することにより,取引銀行の信用を失うことを危惧し,親族会議を開催し,AとCとの間を取り持つこととした。A及びCは,Bの提案に従い,下記のとおり合意した。
⑴ Bが経営者として十分な経験を積んできたことから,Aが取締役を退任した後は,Cも取締役を退任し,Bが代表取締役社長を務めることとする。ただし,内紛が解決したことをアピールするため,当面の間は,Aが代表取締役会長を,Cが代表取締役社長を,Bが取締役専務を,それぞれ務め,甲社を共同で経営する。
⑵ 甲社が丙銀行に対して弁済した800万円の求償については,A及びCが,資金を用意し,GからGの有する甲社株式200株を買い取り,Gがその売買代金をもって当該求償に係る支払に充てる。
16.Gからの甲社株式の買取りの結果,甲社の発行済株式については,Aが450株を,Bが250株を,Cが300株を,それぞれ有することとなった。また,甲社では,Aが代表取締役会長を,Cが代表取締役社長を,Bが取締役専務を,Eが取締役を,それぞれ務めることとなった。
17.平成29年5月,Aが交通事故により死亡したことから,Bは,他の役員に対し,上記15⑴の合意に従い,代表取締役社長に就任し,甲社を経営していく意思を伝えた上で,Cに対し,取締役を退任して相談役として支援してほしいと依頼した。Aの唯一の相続人であるBは,Aが有していた甲社株式450株について,単独で相続し,株主名簿の名義書換を終えた。
18.甲社の定款には,設立当初から,会社法第174条に基づく下記定めがあった。Cは,上記15⑴の合意に反し,自らが代表取締役社長の地位にとどまりたいと考えた。そこで,分配可能額との関係では,Bが相続した甲社株式450株全てについて,定款の下記定めに基づき,甲社がBに対して売渡しの請求をすることもできたが,Cが甲社の総株主の議決権の過半数を確保するために最低限必要な401株についてのみ,甲社がBに対して売渡しの請求をすることとした。
甲株式会社定款(抜粋)
(相続人等に対する売渡しの請求)
第9条 当会社は,相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し,当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。
19.Cは,甲社の取締役会を招集し,取締役会において,適法な手続に基づき,上記18の請求に関する議案を決議するための甲社の臨時株主総会の招集が決議された。
20.甲社は,上記19の取締役会の決議に基づき,平成29年7月3日,臨時株主総会を開催した。
当該臨時株主総会において,上記18の請求に関する議案は,議長であるCがその決議からBを除いた上で,Cのみが議決権を行使して賛成したことにより,可決された。甲社は,当該臨時株主総会の終結後,直ちにBに対して上記18の請求をした(以下「本件請求」という。)。
〔設問3〕 会社法第174条の趣旨を踏まえつつ,本件請求の効力を否定するためにBの立場において考えられる主張及びその主張の当否について,論じなさい。