司法試験 平成28年 民法
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問題文
[民事系科目]〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕及び〔設問2〕の配点は,4:6〕)
次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
Ⅰ
【事実】1.不動産賃貸業を営むAは,その亡妻Bとの間に長男Cをもうけていた。Cは,平成23年3月に高校を卒業した後,他県の自動車販売店に整備士として雇用されたことから,Aの家を出て自分でアパートを借り, 恋人のDと同棲を始めた。 平成24年2月の時点で, Cは満18歳,Dは満20歳であった。
2.Cは,Bの所有していた甲土地及び乙土地をBからの相続により取得していた。甲土地及び乙土地は,更地で,Cの登記名義とされていたが,Cの親権者であるAが公租公課の支払を含め両土地の管理を行っていた。
3.平成24年2月1日,Aは,自らの遊興を原因とする1000万円を超える借金の返済に窮していたことから,C所有の甲土地及び乙土地を自らが管理していることを奇貨として,甲土地及び乙土地をCの承諾を得ずに売却し,その代金を自己の借金の返済に充てようと考えた。
4.平成24年2月10日,Aは,Cの代理人として,個人で飲食店を営む知人Eとの間で,甲土地を450万円,乙土地を600万円で売却する契約を締結した。ところが,Eはその時点で600万円しか現金を有していなかったことから,AとEは,甲土地についてはEが450万円の現金を調達できた時点でCからEへの所有権移転登記手続をすることとし,さしあたり,乙土地についてのみCからEへの所有権移転登記手続をすることで合意した。
5.平成24年2月15日,Eは,Aに対し乙土地の代金として600万円を支払い,CからEへの乙土地の所有権移転登記がされた。Aは,Eから受領した代金600万円を自らの借金の返済に充当した。これらの事実について,AはCに何も知らせなかった。
6.Eは,【事実】4の売買契約を締結した時点で,Aが遊興を原因として多額の借金を抱えており,Aが乙土地の代金600万円をAの借金に充当するつもりであることを知っていた。
7.平成24年3月1日,CはAの同意を得てDと婚姻し,新婚旅行に出発したが,同月5日,Cは,新婚旅行先で海水浴中の事故により死亡した。Cの相続人はA及びDの2人である。
8. 平成24年3月15日, Eは, 450万円の現金を調達できたことから, Aにその旨連絡し,代金の支払と引換えに甲土地の所有権移転登記手続をするよう求めた。ところが,Aは,甲土地の地価が急騰したことから,甲土地を売却するのが惜しくなり,Eの請求に応じなかった。
9.平成24年3月20日,Eは,乙土地の地価も急騰したことから,乙土地を売却しようと考え,乙土地の売却の媒介を仲介業者に依頼した。その頃,Fは,自宅建物を建設するための敷地を探していたが,購読している新聞の折り込みチラシに乙土地が紹介されていたことから,仲介業者に問い合わせた。その後,現地を見たFは,乙土地を気に入り,Eと面識はなかったものの,Eから乙土地を購入することを決めた。
10.平成24年3月30日,Eは,Fとの間で,乙土地の売買契約を締結し,FはEに乙土地の代金として750万円を支払い,EからFへの乙土地の所有権移転登記がされた。
11.その後,Fは,乙土地上に丙建物を建築し,平成24年10月10日から丙建物での居住を開始した。
12.平成25年3月5日,Dは,Cの一周忌の法要の席上において,Aに対し,Cの遺産について尋ねたが,AはDの質問を無視した。その後も,AはDからの電話の着信や郵便物の受領を全て無視している。
13.平成25年4月15日,Dは,Cの遺産に関する自らの疑問を解消したいと考え,弁護士に調査を依頼した。
14.平成25年5月25日,Dは,【事実】13の調査を依頼した弁護士の報告により,【事実】2から11までを知った。
15.平成25年6月30日,Eは,弁護士を通じて,A及びDに対し,代金を支払うので甲土地の所有権移転登記手続をするよう求めたが,拒絶された。そこで,Eは,甲土地の売買代金全額を供託した。
〔設問1〕 【事実】1から15までを前提として,以下の⑴及び⑵に答えなさい。
⑴ Eは,A及びDに対し,甲土地の所有権移転登記手続の請求をすることができるか。Eの請求の根拠を説明し,その請求の当否を論じなさい。
⑵ Dは,Fに対し,乙土地及び丙建物に関しどのような請求をすることができるか。Dの請求の根拠及び内容を説明し,その請求の当否を論じなさい。なお,DのFに対する金銭請求については,検討を要しない。
Ⅱ 【事実】1から15までに加え,以下の【事実】16から27までの経緯があった。
【事実】16.Eは,その飲食業に関し借金を負っていたところ,平成26年に入ってから,事業の借金の返済に充てる資金をGの主宰する賭博で得ようと考え,懇意にしている仕入先のHに頼み込んで,賭博に使うつもりであることを打ち明けて,500万円を借り受けることにした。
17.Eは,さらに,同様の目的を有しつつも,賭博に使うつもりであることを打ち明けずに,知人Kから500万円を借り受けようと考えた。
18.平成26年3月1日,Eは,叔父Lに,「事業の建て直しに必要な資金の融資をHとKから受けるに当たって保証人が必要だが,叔父さん以外に頼れる人がいない。」と述べて,HとKに対する貸金債務の連帯保証人になってもらうことの同意を得た。Lは,Eの事業がうまくいっていないことを知っていたが,Eが借りた金を賭博に使うつもりであることは知らなかった。
19.平成26年4月1日,Eは,Hから,返済期日を平成27年3月31日,利息を年15%,遅延損害金を年21.9%として,500万円を借り受け,LがEの債務を連帯保証する旨の契約書がE,H及びLの3人の間で作成され,同日,HからEに500万円が交付された。
20. 平成26年4月15日, Eは, Kから, 返済期日を平成27年5月30日, 利息を年15%,遅延損害金を年21.9%として,500万円を借り受け,LがEの債務を連帯保証する旨の契約書がE,K及びLの3人の間で作成された。当該契約書では,500万円は,平成26年5月31日に,KからEに交付されることになっていた。
21.しかし,Kは,Eによる借金の使途に疑問を抱き,平成26年5月31日の経過後も,500万円をEに交付しなかった。また,そのことは,Lには知らされなかった。
22.平成26年8月1日,急に資金繰りが悪化したHは,平成26年4月1日付消費貸借契約に関する債権を,既発生の利息債権も含めて,400万円でMに売却した。その際,HはMに対して,「この債権はEの事業のための融資金債権であり,Eの事業の経営はやや苦しいが,Lは弁済に足る資産を有している。」と説明し,Mもその説明を信じた。
23.平成26年8月5日,EはHから,「あなたに対する債権をMに譲渡しました。承諾書を同封したのでそれに署名押印して返送してください。」と書かれた手紙を受け取ったので,EはHの指示に従い,「私は, 平成26年4月1日付消費貸借契約に基づくHの私に対する債権を,平成26年8月1日付譲渡契約によってHがMに対して譲渡したことを承諾します。」とだけ記載された書面に署名押印し,内容証明郵便でそれをHに返送した。その書面は,同月7日にHに配達された後,同月10日,HからMに交付され,MからHに代金400万円が支払われた。Lは,この債権譲渡について,E及びHから何も知らされていなかった。
24.平成26年10月頃,Hは,更に資金繰りが悪化し資産も尽きたので,多額の債務を抱えたまま夜逃げをした。それ以降,Hの所在は不明である。
25.平成27年6月1日,Kは,Lに対し,Eに500万円を交付していなかったが,平成26年4月15日付契約書があることを奇貨として,Lに連帯保証債務の履行を請求した。Lが直ちにEに照会したところ,Eは,間違えて,「事業はうまくいっておらず,Kに対する債務は利息を含め1円も支払っていない。」と説明した。LはEに対し,「仕方がないので連帯保証債務を履行する。」と述べた。
26.平成27年6月29日,Lは,Kに対し,連帯保証債務の履行として,合計584万円を支払った。584万円の内訳は,元本が500万円,利息が75万円,遅延損害金が9万円である(利息75万円=元本500万円×利率年15%×1年,遅延損害金9万円=元本500万円×利率年21.9%×30日/365日)。
27.平成27年7月末になったが,Eは,Hに対しても,Mに対しても,利息を含め1円も支払っていない。
〔設問2〕 【事実】1から27までを前提として,以下の⑴から⑶までに答えなさい。
⑴ Mは,Eに対して,契約上の債権に基づき,500万円とそれに対する利息や遅延損害金の支払を請求することができるか。Mの請求の根拠及び内容を説明し,その請求の当否を論じなさい。
⑵ Mは,Eに対して,法定債権に基づき,500万円とそれに対する利息や遅延損害金の支払を請求することができるか。Mの請求の根拠及び内容を説明し,その請求の当否を論じなさい。
⑶ Lは,Eに対して584万円の支払を請求することができるか。Lの請求の根拠を説明し,その請求の当否を論じなさい。なお,不法行為に基づく請求については,検討を要しない。