司法試験 令和4年 知的財産法
答案を提出
AI添削を使うにはログインしてください。
問題文
[知的財産法]〔第1問〕(配点:50)
精米業者であるXは、「成分Aを多く含む精白米及びその製造方法」との名称の発明(以下「X発明」という。)について特許権(以下「X特許権」という。)を保有している。X特許権に係る特許請求の範囲は2つの請求項からなり、請求項1には「玄米粒の第1層から第4層までを精米機によって除去した後、第5層の85~95パーセントが残るように同層の表層側の部分を削り取ることにより製造される米」と記載されている(本問において、玄米粒は表皮から中心部に向かって、第1層(表皮)から第6層までの6つの層で構成されるものとする。)。請求項2記載の発明は、第5層の表層側の部分を削り取る具体的な工程(以下「工程α」という。)を含むことを特徴とする、請求項1記載の米を製造する方法についての発明である(以下、請求項1記載の発明を「X発明1」、請求項2記載の発明を「X発明2」といい、X発明1に係るX特許権を「X特許権1」、X発明2に係るX特許権を「X特許権2」という。)。
X発明の出願に関連する事情は次のとおりである。従来の精白米は、玄米粒の第1層から第5層までを除去し、第6層のみを残す方法で精米されていた。X発明の発明者は、第5層の表層付近部分に米の味を悪くする成分Bが多く含まれる一方で、第5層のそれ以外の部分には米の味を良くする成分Aが多く含まれていることを見出し、この層の85~95パーセントが残るように表層側の部分を削り取る方法を開発した。この方法が工程αである。また、このようにして製造された米は従来の精白米よりも多くの成分Aを含んでおり、このような米自体が新規であると調査の上判断したXは、この米についても特許権を取得することとし、これを請求項1に記載する発明とした。実際に、第5層の表層側の部分を除いた同層の残り85~95パーセントの部分と第6層の2つの層のみから構成される米は、X発明の出願時点においてX以外の者によって製造も販売もされたことはなく、公表された刊行物等に記載されたこともなかった。
精米業者であるYは、第5層の表層側の部分を除いた同層の残り90パーセントの部分と第6層の2つの層のみから構成される米(以下「Y商品」という。)を製造し、販売している。
XはYに対し、YによるY商品の製造・販売がX特許権を侵害するとして、差止めを求めて訴訟を提起した。
以上の事実関係を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、各設問はそれぞれ独立したものであり、相互に関係はないものとする。
1.XはY商品を購入し分析をした上で、訴訟において、①X特許権1に関しY商品の構造について、②X特許権2に関しY商品の製造方法について、それぞれ具体的に主張した。
⑴ Xの前記①の主張に対して、Yが単に否認するのみで具体的な主張をしない場合、Yのこのような態度は特許法上Yに課されている義務を果たすものといえるか、簡潔に説明しなさい。
⑵ Xの前記主張に対して、Yが、前記①の主張に対しては、X主張のとおりであると認める一方で、前記②の主張に対しては、単に否認するのみで具体的な主張をしない場合、Xは、X特許権2に関し、特許法上どのような主張をすることが考えられるか、簡潔に説明しなさい。
2.Y商品は、玄米粒の第1層から第4層までを精米機により除去した後に、特殊な液体に浸すことで第5層の表層側の部分を溶かす方法によって製造されている。
⑴ Y商品がX発明1の技術的範囲に属するか否かについて論じなさい。
⑵ YはX特許権1に関して、特許法第104条の3第1項の抗弁を主張している。この抗弁の具体的内容としては、どのようなものが考えられるか、論じなさい。また、この抗弁に対して、Xはどのような主張をすべきか、論じなさい。
3.Xは、X発明が出願された日の2日前にX発明2の方法により製造した米を袋詰めにしたもの(以下「X商品」という。)を大量に近隣のスーパーに出荷した。X商品は、その出荷の翌日には同スーパーの店頭で販売されたが、X発明の出願時点において1袋も売れていなかった。このとき、X特許権1及びX特許権2に関して、Yはそれぞれどのような主張をすべきか。その主張の妥当性についても、Xからの反論に留意しつつ論じなさい。
4.X発明が出願される1か月前に第三者により出願され、X発明の出願後に出願公開がされた出願βは、炊飯方法の発明についての特許出願である。出願βの願書に最初に添付した明細書には、「第1層から第4層までを精米機により取り除いた上、さらに第5層のほとんどが残るように同層の表層側の部分を削り取った米を使用することにより、炊飯後の米により旨みを感じることができるようになる。」との記載がある。このとき、X特許権1に関して、Yはどのような主張をすべきか。その主張の妥当性についても、Xからの反論に留意しつつ論じなさい。なお、出願βの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面のいずれにも、上記記載以外に米の構造や精米方法に関連する記載はないものとする。
〔第2問〕(配点:50)
漫画家であるXとYは、甲を主人公とする漫画(以下「漫画α」という。)を共同で制作した。
漫画αのストーリーの大筋は二人が話し合って決定し、Xが脚本形式の原稿を制作し、Yが原稿をネーム(注)に起こし、Xと協議してネームを確定させた。漫画αの作画については、甲を含む人物のイラストをXが、背景をYが担当して制作し、互いに意見を出し合いながら、適宜修正を加えつつ、完成させた。その後、漫画αは出版された。
以上の事実関係を前提にして、以下の設問に答えなさい。なお、著作者人格権に関しては論じる必要はない。また、各設問はそれぞれ独立したものであり、相互に関係はないものとする。
(注)ネームとは、漫画を描く際のコマ割り、構図、セリフ、キャラクターの配置などを大まかに描いたものをいう。本件のネームでは、登場人物は○などの記号で特定されているだけで、イラスト化されていない。
[設問1]大学Aの美術部に所属している学生Bは、美術部の企画に係る学園祭用の展示物として、甲の模型(以下「模型β」という。)を作成し、これを所有している。模型βは、漫画αに描かれた甲の特徴を忠実に再現しつつ、衣装やポーズに独自の工夫を凝らして制作されたものである。模型βは、学園祭の間、美術部の展示室に設置され、一般の観覧に供された。大学祭に来場していた玩具製造業者であるCは、模型βの出来栄えに感銘を受け、Bから模型βの譲渡を受け、模型βを精巧に模倣したフィギュアを制作し、販売した。Cは、漫画αの存在を知らず、模型βをBの完全なオリジナル作品と思い込んでいた。
⑴ X、Yは、それぞれBに対して、著作権法上どのような請求をすることができるか、論じなさい。
⑵ X、Yは、それぞれCに対して、著作権法上どのような請求をすることができるか、論じなさい。
[設問2]Dは、我が国を代表するアニメの制作・配信を行う会社である。DのプロデューサーであるEは、漫画αのアニメ映画(以下「映画γ」という。)の制作を企画し、XとYにアニメ化の許諾を求めた。Xは、漫画αの出版後十年ほどが経過しているため、アニメ化は漫画αの人気を浮上させるよいきっかけになると考え、アニメ化を了承したが、Yは、漫画αの出版後、Xとの関係が悪化していたことから、これ以上Xと関わりを持ちたくないと考え、アニメ化に反対した。Eは、Yに対し、Xからアニメ化の承諾を得たことを述べた上で、Yと何度も交渉を重ね、またYが反対の意向を示していることを考慮し、業界の相場を大幅に超える原作使用料を提示したが、Yは承諾しなかった。そこで、Eは、Xと相談の上、Yの承諾を得ないまま、映画γを制作した。
Yがインターネット上で映画γを配信しようとしているDに対して著作権侵害に基づく差止めを請求する場合、どのような主張をすべきか。Dはそれに対してどのような反論をすることが考えられるか。それぞれの主張の当否についても論じなさい。
[設問3]Fは、民間の漫画教室を主宰する者であり、インターネット上に開設したホームページで教室の宣伝を行って受講生を募集し、有料で作画の指導を行っている。Fは、漫画αの出版物を1冊購入し、そこから作画の練習に最適と思われるコマ絵を十数枚程度選び出してコピーし、当該コピーを用いてコマ絵を一つ一つスライドで映し出して、キャラクターや背景の描き方、構図、コマ割りなどの作画のポイントを詳細に説明し、また、コマ絵を4倍の大きさに拡大したコピーを受講生に配布し、コマ絵の模写を行わせ、生徒の模写の出来栄えを評価するなどしている。
⑴ Fが漫画αのコマ絵のコピーを作成する行為、当該コピーを用いてコマ絵をスライドに映し出して受講生に見せる行為、漫画αのコマ絵の拡大コピーを受講生に配布する行為は、Xの著作権を侵害するかについて論じなさい。
⑵ Xが、Fに対して、Fの主宰する漫画教室において、受講生に漫画αのコマ絵の模写を行わせることに関して差止めを請求する場合、Xはどのような主張をすべきか。Fはそれに対してどのような反論をすることが考えられるか。それぞれの主張の当否についても論じなさい。