予備試験 平成27年 刑事訴訟法
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平成27年 予備試験 刑事訴訟法 解説
扱っている論点: 捜索差押えに伴う写真撮影・321条3項
問題文
[刑事訴訟法]次の【事例】を読んで,後記〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
【事 例】甲は,平成27年2月1日,L県M市内の路上において,肩が触れて口論となったVに対し,携帯していたサバイバルナイフで左腕を切り付け,1か月間の加療を要する傷害を負わせた。司法警察員Pらは,前記事実で逮捕状及び捜索差押許可状(捜索すべき場所及び差し押さえるべき物の記載内容は,後記のとおり)の発付を受けた上,同月2日,甲を立ち回り先で逮捕した。また,Pらは,同日,甲と同居する乙を立会人として,甲方の捜索を行った。甲方の捜索に際し,Pは,玄関内において,乙に捜索差押許可状を呈示するとともに,部下の司法警察員Qに指示して,呈示された同許可状を乙が見ている状況を写真撮影した(①)。続いて,Pは,玄関脇の寝室に立ち入ったが,同寝室内には,机とベッドが置かれていた。Pは,Qに指示して,同寝室内全体の写真を撮影した上,前記机の上段の引出しを開けたが,その際,引出し内の手前側中央付近に,血の付いたサバイバルナイフを発見し,その左横に,甲名義の運転免許証及び健康保険証を認めた。Pは,その状況を写真撮影することとし,Qに指示して,前記サバイバルナイフ及び運転免許証等を1枚の写真に収まる形で近接撮影した(②)。Pは,引き続き,前記机の下段の引出しを開けたところ,覚せい剤の使用をうかがわせる注射器5本及び空のビニール小袋1枚を認めた。そこで,Pは,Qに指示して,前記注射器及びビニール小袋を1枚の写真に収まる形で近接撮影した(③)。その後,Pは,前記サバイバルナイフを押収し,捜索を終了した。前記サバイバルナイフに付いた血がVのものと判明したことなどから,検察官Rは,同月20日,L地方裁判所に甲を傷害罪で公判請求した。甲は,「身に覚えがない。サバイバルナイフは乙の物だ。」旨供述して犯行を否認している。
(捜索すべき場所及び差し押さえるべき物の記載内容)捜索すべき場所 L県M市N町○○番地甲方差し押さえるべき物 サバイバルナイフ
〔設問1〕
【事例】中の①から③に記載された各写真撮影の適法性について論じなさい。
〔設問2〕Pは,捜索終了後,「甲方の寝室内には,机及びベッドが置かれていた。机には,上下2段の引出しがあり,このうち,上段の引出しを開けたところ,手前側中央付近に,サバイバルナイフ1本が置かれており,その刃の部分には血液が付着していた。そして,同サバイバルナイフの左横に,甲名義の運転免許証及び健康保険証があった。」旨の説明文を記した上,
【事例】中の②の写真を添付した書面を作成した。Rは,同書面によって前記サバイバルナイフと甲との結び付きを立証したいと考えた。同書面の証拠能力について論じなさい(②に記載された写真撮影の適否が与える影響については,論じなくてよい。)。
出題の趣旨
法務省が公表した出題の趣旨です。
本問は,サバイバルナイフを用いた傷害事件について,司法警察員が,捜索すべき場所を被疑者方,差し押さえるべき物をサバイバルナイフとする捜索差押許可状による捜索を実施した際,①玄関内において,呈示された同許可状を被疑者と同居する乙が見ている状況を写真撮影し,②寝室の机の上段の引き出しから発見された血の付いたサバイバルナイフ並びに被疑者名義の運転免許証及び健康保険証を1枚の写真に収まる形で近接撮影し,③同机の下段の引き出しから発見された注射器及びビニール小袋を1枚の写真に収まる形で近接撮影するという各写真撮影を行った上,捜索終了後,捜索実施時の前記寝室内の机等の配置状況,前記サバイバルナイフの発見状況並びにその際の同ナイフの状態及び前記運転免許証等との位置関係を記載し,前記②の写真を添付した書面を作成したとの事例において,前記①ないし③の各写真撮影の適法性及び前記書面を被疑者とサバイバルナイフの結び付きを立証するための証拠として用いる場合の証拠能力に関わる問題点を検討させることにより,捜索差押許可状の執行現場における写真撮影行為の性質及びその適法性,伝聞法則とその例外について,基本的な学識の有無及び具体的事案における応用力を試すものである。
参考答案
設問1
捜査差押えに付随する写真撮影の可否
捜査が「強制の処分」(刑事訴訟法(以降法令名省略)197条1項但書)に当たる場合、強制処分法定主義により特別の定めが必要である。
①捜査対象者の同意があれば権利利益の制約を観念できないこと、②強制処分に関する要件・手続の厳格性に鑑み、「強制の処分」とは、相手方の明示又は黙示の意思表示に反して、重要な権利・利益を実質的に制約する処分をいうと解する。
本件では、写真撮影はすべて甲方の室内で行ったことである。居室は個人のプライバシーに関わる私的領域であるからプライバシーの要保護性が高い領域である。、同人の同意によらなければ公開できることはでいない故、写真撮影は甲の明示又は黙示の意思表示に反して、重要な権利・利益を実質的に制約する処分と言える。
甲の同意を得ていない。よって、甲の黙示の意思に反していると言える。
よって、本件写真撮影は「強制の処分」に該当する。
したがって、特別の定めが必要である。(条文上の根拠が必要である。)
「検証」とは、五感の作用でその形状、性質を感知する強制処分である。
写真撮影は、五感の作用で形状を感知する処分であり、検証に当たる。
よって、218条1項により、令状が必要である。
もっとも、例外的に、①写真撮影が証拠物の証拠価値を保存するために、あるいは②手続きの適法性の担保のためなら捜査差押えに付随する処分(222条1項本文、111条)として許される。
写真撮影①
本撮影写真内容は、司法警察職員Pが乙に捜査許可状を見せた状況である。
これは、手続きの適法性の担保のためにした、適法と言える。
写真撮影②
本撮影写真内容は、甲方の寝室内で発見された血の付いたサバイバルナイフ、び甲名義の運転免許証、健康保険証である。
これは、サバイバルナイフと甲名義の各証明書類がともに保管されるのを示すことによって、サバイバルナイフは甲の管理下にあると証明することであるから、写真撮影が証拠物の証拠価値を保存するためにと言える。
よって、写真撮影②は適法であると言える。
写真撮影③
本撮影写真内容は、覚せい剤の使用をうかがわせる注射器5本及び空のビニール小袋1枚の写真である。
これは、写真撮影が証拠物の証拠価値を保存するために、あるいは手続きの適法性の担保のためなら捜査差押えに付随する処分のいずれでも該当しない。
よって、写真撮影③は違法であると言える。
設問2
設問2のPが、捜査終了後作成した書面は、設問通りの旨の説明文を記載した上、②の写真を添付したものであり、同書面の立証趣旨はサバイバルナイフと甲との結び付きである。甲はサバイバルは自分の所有物でなく、あくまでも乙のために管理したと供述したから、Rは写真及び添付した本件書面によって、サバイバルナイフは甲名義の運転免許証及び健康保険証と併せて保管していることを立証したと考えられる。そのため、本件証拠は伝聞法則が適用されるかが問題となる。
知覚記憶表現叙述の過程で誤りが介在するおそれがあるからである。
伝聞証拠とは、公判期日外の供述であり、供述内容の真実性を証明するために用いられるものである。
内容の真実性が問題となるかは、要証事実との関係で相対的に決まる。
Pが作成した書面は公判期日外の供述であり、同書面はサバイバルナイフと甲との結び付きの真実性を証明するために用いられるものであるから、伝聞証拠に当たるため、
本件の争点は、犯人性であり、特にサバイバルナイフが甲の物であるかどうかである。
立証趣旨は、サバイバルナイフと甲の結びつきである。
要証事実は、サバイバルナイフと甲の結びつきである。
「サバイバルナイフの左横に、高名義の運転免許証及び健康保険証があった。」という供述が真実でなければ、サバイバルナイフと甲野結びつきを立証できない。
よって、要証事実との関係で内容の真実性が問題となり、伝聞証拠に当たる。
原則として、当該書面の証拠能力は否定される(320条1項)から、伝聞法則の例外に該当にも該当しない場合、証拠とすることはできない。
この書面が、検証の結果を記載した書面に当たるか問題となる。
検証の結果を記載した書面に当たれば、321条3項の適用が問題となるからである。
本件で行っているのは捜索差押であり、検証の結果を記載した書面ではない。
よって、321条3甲は適用されない。
また、Pは「被告人以外の者」であるから、同人が作成した書面は「被告人以外の者が作成した供述書」に該当するが、同人に「供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができない」という事由はいずれにも存在しないから、321条1項3号も適用されない。
よって、本件書面は証拠とすることができない。
写真部分については、供述ではなく、供述者の主観的な目的によって左右されるものでもないから、偽造・修正がない限り、本件との関連性を有することは明らかであるから、証拠とすることはできる。