予備試験 平成30年 刑事実務基礎
問題文
[刑 事]
次の【事例】を読んで,後記〔設問〕に答えなさい。
【事例】
1 A(21歳,男性)は,平成30年5月30日,「氏名不詳者と共謀の上,平成30年4月2日午前4時頃,H県I市J町2丁目3番K駐車場において,同所に駐車されていたV所有の普通乗用自動車(以下「本件自動車」という。)の運転席側窓ガラスを割るなどして,同車を損壊した上,同車内にあったV所有の現金200万円在中の鞄1個及びカーナビゲーションシステム1台(以下「本件カーナビ」という。)を窃取した。」旨の器物損壊・窃盗被告事件(以下「本件被告事件」という。)でH地方裁判所に公訴提起された。
Aの弁護人は,同年5月30日,Aについて保釈の請求をしたところ,ⓐH地方裁判所裁判官は,刑事訴訟法第89条第4号に該当する事由があり,また,同法第90条に基づく職権による保釈を許すべき事情も認められないとして,同保釈請求を却下した。
2 その後,本件被告事件は,公判前整理手続に付することが決定され,検察官は,同年6月12日,証明予定事実記載書面を裁判所に提出するとともにAの弁護人に送付し,併せて,証拠の取調べを裁判所に請求し,当該証拠を同弁護人に開示した。検察官が取調べを請求した証拠の概要は次のとおりである(以下,日付はいずれも平成30年である。)。
・ Vの告訴状(甲1号証)
「本件自動車を壊して,車内にあった現金200万円が入った鞄や本件カーナビを盗んだ犯人として,Aが逮捕されたと聞いたが,知らない人である。盗難被害のほか,本件自動車の損壊についても,Aの厳しい処罰を求める。」
・ K駐車場の実況見分調書(甲2号証)
Vを立会人として行われたK駐車場の実況見分の結果を記載したものであり,同駐車場の位置や広さなどのほか,本件自動車の駐車状況及び被害後の状況を含めた被害現場の状況などが記載されている。
・ Vの警察官面前の供述録取書(甲3号証)
「4月1日午後8時頃,本件自動車をK駐車場に駐車した。本件自動車及び同車内在中の鞄,現金,本件カーナビは,いずれも私が所有するものである。主なもので,その日に銀行から下ろした現金200万円及び本件カーナビ(時価5万円)の損害のほか,本件自動車の修理代金として,約25万円の損害が発生しており,犯人を早く捕まえてほしい。」
・ W1の警察官面前の供述録取書(甲4号証)
「私は,L県内で中古電化製品販売店を営んでおり,中古電化製品の買取りも行っている。4月2日午前11時頃,Aとして身分確認をした男性からカーナビゲーションシステム1台を買い取った。今刑事さんと一緒に買取台帳等を確認し,製品番号などから,このとき買い取ったカーナビゲーションシステムが,本件カーナビであることが分かった。本件カーナビは未販売であり,警察に提出する。また,当店では,買取りに際し,自動車運転免許証等で身分確認をしており,本件カーナビを売却した男性についても,自動車運転免許証の提示を求めた上,その写しを作成して保管しているので,その写しや買取台帳の写しも提出する。」
・ 警察官作成の捜査報告書(甲5号証)
W1から提出されたカーナビゲーションシステムの写真が添付されており,同カーナビゲーションシステムの製造番号が本件カーナビの製造番号と一致することなどが記載されている。
・ A名義の自動車運転免許証の写し(甲6号証)
W1から提出されたA名義の自動車運転免許証の写しであり,乙2号証の身上調査照会回答書記載のAの生年月日,住所地等と合致する記載がある。
・ W1から提出された買取台帳の写し(甲7号証)
「買取年月日 30年4月2日」,「顧客名 A」,「商品 カーナビ1台(メーカー名,型番, 製造番号)」,「買取代金 3万3000円」等の記載がある。
・ W2(男性)の検察官面前の供述録取書(甲8号証)
「私は,自宅近くのコンビニエンスストアで買い物をして帰宅する途中の4月2日午前4時頃,K駐車場前の歩道を歩いていたところ,駐車場内に駐車されていた本件自動車の車内ランプが光っていることに気付き,注視しながら同車に近づいた。同車まで約5メートルの距離まで近づいたところで,黒い上下のウィンドブレーカーを着た身長175センチメートルくらいの男が,慌てた様子で,ティッシュペーパーの箱を2つ重ねたくらいの大きさの電化製品に見えるものを持って同車の運転席側のドアから降りてきて,1秒ほど私と目を合わせた。そして,その男が,同車の横に停車していた自動車の助手席に乗り込むや否や,その車は急発進し,私のすぐ左側を通り過ぎ,K駐車場から出て,左折して走り去った。私は,男たちの行動を不審に感じ,本件自動車に近づいてその様子を見ると,同車の運転席側の窓ガラスが割れていたので,先ほどの男たちが車上荒らしをしたのだと思い,110番通報をした。本件自動車から降りてきた男については,1秒ほど目が合ったし,自動車が通り過ぎる際にも助手席側の窓ガラス越しに顔を見たので,その男の顔は覚えている。検事から,『これらの写真に写っている男の中に,あなたが見た男がいるかもしれないし,いないかもしれない。』と説明を受けた上で,30枚の男性の顔の写真が貼られたものを見せられたが,12番の写真の男が,顔の輪郭や目鼻立ち,特につり上がった目の感じや左頬のあざなどから,本件自動車から降りてきた男に間違いないと思う。この12番の写真の男は,知り合いではなく,4月2日に初めて見た男である。また,急発進した自動車の運転席には,助手席に座っていた男とは別の人物が座っていたが,この人物の性別などは分からない。12番の写真の男とは知り合いではないものの,私はK駐車場の直ぐ隣の一軒家に住んでおり,12番の写真の男がその気になれば,私のことを特定したり,私の家を知り得ると思うので,嫌がらせなどされないかが不安だ。」(末尾に「12番」とされたAの写真が含まれた写真台帳が添付されている)。
・ Aの警察官面前の供述録取書(乙1号証)
「私は,独身で,3か月前から一人で住所地のマンションに住んでおり,無職である。たまに,工事現場のガードマンとして短期間のアルバイトをして,生活費を稼いでいる。K駐車場には一度も行ったことがない。本件カーナビをW1が経営する中古電化製品販売店に売ったことは間違いないが,それは,Bという友人から売却を頼まれて売ったのであり,本件カーナビや鞄などを盗んだのは私ではないし,本件自動車を壊したのも私ではない。本件カーナビが盗品であることは知らなかった。刑事さんから,犯行日時に,K駐車場で本件自動車から出てくる私を見た人がいると聞いたが,人違いではないかと思う。」
・ Aの身上調査照会回答書(乙2号証)
Aの氏名,生年月日,住所地などが記載されている。
3 ⓑAの弁護人は,検察官請求証拠を閲覧・謄写した後,検察官に対して類型証拠の開示の請求をし,類型証拠として開示された証拠も閲覧・謄写するなどした上,「Aが,公訴事実記載の器物損壊や窃盗を行った事実はいずれもない。Aは,友人Bから本件カーナビの売却の依頼を受けてこれを中古電化製品販売店に売却したが,盗品であることは知らなかった。Aは,公訴事実記載の日時頃,K駐車場にはいなかった。」旨の予定主張事実記載書を裁判所に提出するとともに検察官に送付し,併せて,検察官に対して主張関連証拠の開示の請求をした。
4 検察官は,本件被告事件について,Aの公訴提起後も,Bなる人物の所在を捜査していたところ,Bの所在が判明し,更に所要の捜査の結果,このBがAの共犯者であった疑いが濃厚となった。そうしたところ,6月26日に,Aに係る本件被告事件の第1回公判前整理手続期日が開かれたが,その後の7月5日,Bが,「Aと共謀の上,4月2日午前4時頃,H県I市J町2丁目3番K駐車場において,同所に駐車されていたV所有の本件自動車の運転席側窓ガラスを割るなどして,同車を損壊した上,同車内にあったV所有の現金200万円在中の鞄1個及び本件カーナビを窃取した。」旨の器物損壊・窃盗被疑事件で逮捕され,7月6日,H地方検察庁検察官に送致された。Bは,その後,勾留中の取調べにおいて,友人Aと相談の上で,本件自動車を壊して本件カーナビなどを盗んだことを認め,さらに,本件自動車から盗んだ鞄内には,現金200万円のほか,アイドルグループのCD1枚(以下「本件CD」という。)が在中し,同CDを自宅に置いてある旨述べて,自宅にあったCDを,親族を通じて,警察に提出した。検察官は,所要の捜査を遂げ,同月25日,Bについて,被害品を「現金200万円及び本件CD在中の鞄1個並びに本件カーナビ」と変更したほかは,逮捕事実と同じ事実で,H地方裁判所に公訴提起した。
5 その後,検察官は,Bに係る事件の捜査を踏まえて,既に公訴を提起していたAに係る本件被告事件について,AとBが共謀の上で行った事実である旨証明するに足りる証拠や本件CDも被害品である旨証明するに足りる証拠が収集できたものと判断し,ⓒ所要の手続を順次行った上,本件被告事件について,下記の甲9号証及び甲10号証の証拠を追加で取調べ請求し,それらの証拠をAの弁護人に開示した。
・ Vの警察官面前の供述調書(甲9号証)
「Bの自宅にあったCDを刑事さんから見せてもらったが,私宛てで,私が一番好きなメンバーであるQのサインが書かれていることから,盗まれた私の鞄の中に入っていたものに間違いない。見当たらなくなっていたので,もしかしたら盗まれた鞄に入っていたのかとも思っていたものの,確信が持てなかったので,当初は被害品として届けていなかった。」
・ Bの検察官面前の供述調書(甲10号証)
「友人であるAと相談して,いわゆる車上荒らしをやることにし,事前に役割分担を決めた。具体的には,Aが,マイナスドライバーで,自動車の窓ガラスを割ってドアのロックを外し,車中にある金目の物のほか,カーナビを外して盗み出す役,私が,Aが助手席に乗る自動車を運転して,現場に行き,Aが金目の物やカーナビを盗む間に見張りをして,盗み終わった後も運転役をすることを決めた。4月2日午前4時前頃,私が運転する私の自動車でK駐車場に行き,本件自動車の運転席側の隣に私の自動車を停めた。その後,助手席から降りたAが,マイナスドライバーで,本件自動車の運転席側の窓ガラスを割ってドアのロックを外し,車中に入った。私は,エンジンをかけた状態の私の自動車の運転席に座ったまま周囲に注意を払っていた。その後,Aは,鞄1個のほか,本件カーナビを持って,車外に出てきたが,その際,一人の男性が,私の車の方に近づいてきたのが見えたため,私は,Aが助手席に飛び乗るや否や,私の自動車を急発進させて,K駐車場から逃走した。本件カーナビは,Aが,L県内の中古電化製品販売店に3万円くらいで売った。現金200万円及びAが売却した本件カーナビの売却金については,Aと二等分した。また,Aと盗んだ鞄の中には,現金のほか,本件CDが入っていたが,Aが要らないと言ったので,私がもらって自宅に置いていた。本件CDについても,Aと一緒に盗んだものに間違いない。」
6 8月21日に開かれたAに係る本件被告事件の第2回公判前整理手続期日において,検察官請求証拠に対し,弁護人は,甲8号証及び甲10号証につき,いずれも「不同意」とし,そのほかの証拠については,いずれも「同意」と意見を述べた。
7 同期日において,Aに係る本件被告事件に関し,検察官は,「共謀状況及び共同犯行状況等」を立証趣旨としてBの証人尋問を,「犯行目撃状況等」を立証趣旨としてW2の証人尋問を請求した。裁判所は,争点を整理した上,弁護人が同意した証拠についていずれも証拠調べをする決定をし,弁護人に対して,B及びW2の証人尋問請求に対する意見を聞いたところ,弁護人は,Bについては,「しかるべく」とし,W2については,「必要がない」旨の意見を述べた。
ⓓ裁判長は,検察官に対し,「Bに加えてW2を尋問する必要性」について釈明を求め,検察官の釈明を聞いた上で,B及びW2につき,いずれも証人として尋問する旨の決定をするなどし,公判前整理手続を終結した。
8 その後,Aに係る本件被告事件については,9月12日に開かれた第1回公判期日において,B及びW2の証人尋問などが行われたところ,同証人尋問において,B及びW2は,それぞれ,甲8号証,甲10号証のとおり証言した。続いて,同月26日,第2回公判期日において,被告人質問等が行われ,10月17日,第3回公判期日において,検察官及び弁護人がそれぞれ意見を述べ,被告人の最終陳述等が行われた上で結審した。
〔設問1〕
下線部ⓐに関し,裁判官が刑事訴訟法第89条第4号の「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」と判断した思考過程を,その判断要素を踏まえ,具体的事実を指摘しつつ答えなさい。
〔設問2〕
下線部ⓑに関し,Aの弁護人は,刑事訴訟法第316条の15第1項柱書き中の「特定の検察官請求証拠」を甲8号証の「W2の検察官面前の供述録取書」とし,その「証明力を判断するために重要であると認められるもの」に当たる証拠として
① 本件被告事件の犯行現場の実況見分調書(W2が説明する目撃時の人物等の位置関係,現場の照度などについて明らかにしたもの)
② W2の警察官面前の供述録取書
③ 本件被告事件の犯行日時頃,犯行現場付近に存在した者の供述録取書
の開示の請求をしようと考えた。弁護人は,同請求に当たって,同条第3項第1号イ及びロに定める事項(同号イの「開示の請求に係る証拠を識別するに足りる事項」は除く。)につき,具体的にどのようなことを明らかにすべきか,①から③の証拠についてそれぞれ答えなさい。
〔設問3〕
下線部ⓒに関し,検察官が順次行った所要の手続について,条文上の根拠に言及しつつ,簡潔に説明しなさい。
〔設問4〕
下線部ⓓに関し,以下の各問いについて答えなさい。
⑴ 検察官は,W2の供述によって「Aが公訴事実記載の器物損壊や窃取に及んだ」という事実を立証しようと考えている。この場合,W2の供述は,直接証拠又は間接証拠のいずれに当たるか,具体的理由を付して答えなさい。
⑵ 裁判長が,検察官に対し,「Bに加えてW2を尋問する必要性」について釈明を求めたのはなぜか,条文上の根拠を示しつつ答えなさい。
⑶ 検察官は,W2を尋問する必要性について,どのように釈明すべきか答えなさい。
〔設問5〕Aに係る本件被告事件の公判前整理手続終結後,第1回公判期日前である8月28日,BがVに対して250万円を弁償し,同日,弁償金を受領した旨の領収証がVからBに交付された。
Aの弁護人は,9月15日,同領収証の写しを入手したため,これを第2回公判期日において,取調べ請求したいと考えた。この場合における,刑事訴訟法上及び弁護士倫理上の問題についてそれぞれ論じなさい。
出題の趣旨
法務省が公表した出題の趣旨です。
本問は,犯人性が争点となる器物損壊,窃盗事件(共犯事件)を題材に,保釈における罪証隠滅のおそれの判断要素(設問1),類型証拠開示請求の要件(設問2),訴因の変更の請求及び証明予定事実の追加・変更の手続(設問3),器物損壊事実及び窃取事実を認定する証拠構造,証拠の厳選,共犯者供述と第三者供述の信用性の相違に着目した証人尋問の必要性(設問4),公判前整理手続終了後の証拠調べ請求の制限,犯人性を否認している被告人の弁護において共犯者が行った弁償事実に関する証拠を取調べ請求する際の弁護士倫理上の問題点(設問5)について,【事例】に現れた証拠や事実,手続の経過を適切に把握した上で,法曹三者それぞれの立場から,主張・立証すべき事実やその対応についての思考過程を解答することを求めており,刑事事実認定の基本構造,証拠法及び公判手続等についての基本的知識の理解並びに基礎的実務能力を試すものである。
参考答案
第1 設問1
罪証隠滅の恐れについて、裁判官が審査する内容
1 罪証隠滅の対象
本件において、罪証隠滅の対象は、V、共犯者、W1及びW2である。
2 態様
Vは、被害者及び証人を圧迫し、共犯者と通謀する可能性がある。
3 客観的可能性及び実効性
Vについて
本件において、犯行はH県I市J町2丁目3番K駐車場にあった。Vは車を再び同駐車場に駐車する可能性があるから、Aも車を追跡によってVを追跡できるので、Vを圧迫し、その証言を変更させる可能性がある。
Bについて
氏名不詳の共犯者が未だ発見されていないから共犯者と共謀する可能性がある。
BはAの友人であるから、Bと通謀し、その供述を改竄する可能性がある。
W1について
W1はL県内の中古電化製品販売店を営んでおり、Aは同店を知っているから、同人を圧迫し、供述を改竄させる可能性がある。
W2について
W2はAと知人ではないが、W2はK駐車場のすぐ隣の一軒家に住んでいるので、W2を特定してから同人を圧迫し、その供述を改竄させる可能性がある。
4 主観的可能性
Aは犯行を一貫否認している。
重大犯罪であり、重大な刑事責任が課される可能性がある。
よって、罪証隠滅の恐れは認められるから、裁判官は本件保釈請求を却下した。
第2 設問2
本件被告事件の犯行現場の実況見分調書について
W2の供述を実況見分調書と比較して、不自然な点や不合理な点があるかについて明らかにすべきである。
目撃時の人物等の位置関係、現場の照度等→知覚記憶の条件等を確認して、供述の信用性を確認することが重要であるため。
・刑事訴訟法316条の16第3項1号イに当たる事項
316条の15 1項3号(実況見分調書)
犯行現場の実況見分調書は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であって、身体の拘束を受けているAの取り調べに関し、その年月日、時間、場所その他の取調べの状況を記録したものであるから、1項8号(以下法令名が省略されるのが刑事訴訟法)の「書面」に当たる。
W2の警察官面前の供述録取書について
3項1号ロ
W2の警察官面前の供述録取書と甲8号証の検察官面前の供述録取書の内容と一致しているかについて明らかにすべきである。
3項1号イ
316条の15第1項5号ロ
本件被告事件の犯行日時頃、犯行現場付近に存在した者の供述録取書について
犯行現場付近に存在した他人の証言とW2の供述と比較して、不自然な点や不合理な点があるかについて明らかにすべきである。
W2は「被告人以外の者の供述録取書等」(316条の16第1項6号)にあたるから、犯行現場付近に存在した者の供述録取書は同条同項同号の「検察官が特定の検察官請求証拠により直接照明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」に当たる。
第3 設問3
Bは共犯者である疑いを踏まえて、Aのみを起訴したため、検察官は訴因変更請求(316条の5第2号、312条1項)をすることによってと考えられる。
AもBもすでに起訴されている。
訴因変更請求()を行い、氏名不詳者をBに変更し、被害品にCDを追加する。
検察官は、訴因変更請求をしたため、その書面を裁判所に提出し、弁護人に送付したと考えられる(316条の21第1項)。
証明予定事実の追加変更(316条の21第1項)
第4 設問4
第(1)小問
直接証拠とは、主要事実を直接に証明する証拠である。
間接証拠とは、主要事実の間接事実を証明する証拠である。
本件について、W2の供述により、同人が直接Aが器物損害や窃取を見たのではないので、これは公訴事実記載の器物損害や窃取を推認することにすぎず、間接証拠にとどまる。
第(2)小問
「Bに加えてW2を尋問する必要性」を確認するのは、証明すべき事実の立証に必要な証拠を厳選しなければならない(刑事訴訟規則第189条の2)から、この必要性を明らかにするために、裁判長は検察官に対し、釈明を求めた(刑事訴訟規則第208条)。
第(3)小問
本件において、BはAの友人であるから、Aに有利な供述をすることが予想されるから、利害関係のない第三者であるW2を尋問する必要がある。
Bは共犯者であり、引っ張り込みの危険性がある。
第5 設問5
第2回公判期日において取調べ請求をすることは316条の32第1項に違反するか
「公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については、検察官および被告人又は弁護人は…当該公判前整理手続又は期日間整理手続が終わつた後には、証拠調べを請求することができない」から、
公判前整理手続が終結したのは8月21日であるが、弁償金を受領して、領収証が作成されたのは、8月28日であり、公判前整理手続終了時よりも後である。
よって「やむを得ない事由」が認められる。
領収証を提出することは弁護士倫理に問題があるか
Aは犯人性を否定するから、弁護人が当該領収証を提出することは、Aが有罪であることを前提としたのである。よって、領収証を提出することは依頼者の意思を違反したと言え、弁護士倫理に違反する。