予備試験 平成28年 刑事実務基礎
問題文
[刑 事]
次の【事例】を読んで,後記〔設問〕に答えなさい。
【事 例】
1 A(男性,32歳,暴力団甲組組員)は,平成28年2月12日,V(男性,40歳,暴力団乙組幹部組員)を被害者とする殺人未遂罪の被疑事実で逮捕され,同月14日から勾留された後,同年3月4日にI地方裁判所に同罪で公判請求された。
上記公判請求に係る起訴状の公訴事実には「被告人は,平成27年11月1日午後2時頃,H県I市J町1丁目1番3号に所在する暴力団乙組事務所前路上において,同事務所玄関ドア前に立っていたVに対し,殺意をもって,持っていた回転弾倉式拳銃で弾丸3発を発射したが,いずれも命中しなかったため,同人を殺害するに至らなかった。」旨記載されている。
2 公判請求までに収集された主な証拠とその概要は次のとおりであった。
証拠① Vの検察官調書
「私は,平成27年11月1日午後2時頃,配下のWを連れて乙組事務所から出掛けることとした。Wが先に玄関ドアから外に出たので,私が少し遅れて玄関ドアから外に出て,歩き出そうとした瞬間,私の左側に立っていたWが私の上半身を両腕で抱え,Wの方に引っ張ったので,私は,W共々左側に倒れ込んだ。倒れ込むと同時に,拳銃の発射音が何発か聞こえた。玄関ドアの南側正面には道路に面した門扉があるが,私は,玄関ドアから出て倒れるまで,門扉の方を見ていなかったし,倒れた後には,門扉の向こう側には誰もいなかった。私の身長は180センチメートルである。」
証拠② W(男性,25歳,暴力団乙組組員)の検察官調書
「私は,平成27年11月1日午後2時頃,私が先に乙組事務所の玄関ドアから外に出て,左手の隅によけ,Vが出てくるのを待っていた。しばらくしてVが玄関ドアから出てきたが,ふと玄関ドアの南側正面にある門扉の方を見ると,門扉の向こう側の右側からマスクをした男が走り出てきて,門扉の正面で止まり,拳銃を両手で持って,玄関ドア前に立っていたVに銃口を向けて構えた。私は,Vが撃たれると思い,とっさにVの上半身に抱き付き,私の方に引き倒すように引っ張った。私とVが倒れるのと前後して,『死ね。』という男の声と同時に,拳銃の発射音が複数回した。倒れてから門扉の方を見たが,既に誰もいなかった。拳銃を撃った男が誰かは分からない。」
証拠③ 実況見分調書(平成27年11月1日付け,立会人W)
「本件現場は,H県I市J町1丁目1番3号に所在する暴力団乙組事務所(以下「事務所」という。)玄関ドア付近である。事務所は3階建てのビルであり,南側に玄関ドアがある。事務所の敷地の周囲には高さ約2.5メートルの塀があるが,南側には塀に設置された門扉があり,門扉の高さは約1.3メートルである。事務所敷地南側は道路に面しており,門扉の正面の路上に立つと,事務所玄関ドアが門扉越しに遮る物なく北方向正面に見える。門扉と玄関ドアとの距離は,約3メートルである。玄関ドアは防弾仕様であり,玄関ドアの中央(玄関ドア東端から西方へ約1メートルから約1.3メートル,玄関ドア下端から上方へ約1.3メートルから約1.4メートルの範囲)に,弾丸3個がめり込んでいた。Wは,㋐『私がVに抱き付く前に,Vはこの位置に立っており,私はこの位置に立っていた。』と言って,玄関ドア前にV役の警察官Y(身長180センチメートル)を立たせ,自らは玄関ドア前の脇に立ったので,それぞれの位置を計測したところ,V役Yの位置は,玄関ドアから南側に約50センチメートル,門扉から約2.5メートルの玄関ドア正面であり,門扉の南側路上から見ると,弾丸の玄関ドア着弾位置はYの胸部の後方となった。Wの位置は,玄関ドア東端から東方へ約30センチメートル,事務所建物壁から南方へ約1メートルの位置であった。Wは,㋑『犯人は,門扉の外の路上に立ち,拳銃を玄関ドア方向に向けて真っすぐ構えていた。』と言ったので,Wが犯人と同じくらいの身長の者として選んだ犯人役の警察官Z(身長175センチメートル)を,Wの説明どおりに門扉の南側路上に立たせ,模擬拳銃を玄関ドア方向に真っすぐ構えさせたところ,犯人役Zの立ち位置は,門扉の中央正面(門扉東端から西方へ約1メートル,門扉から南方へ約1メートルの位置)であり,銃口は門扉の上端から約10センチメートル上方であり,銃口から玄関ドアまでは約3メートルであった。」
証拠④ 弾丸3個証拠⑤ 捜査報告書
「暴力団乙組事務所玄関ドア東側付近に設置されていた防犯カメラの平成27年11月1日午後2時頃の映像は,次のとおりである。午後1時57分頃,Wが事務所玄関ドアから出て,同ドアの東側脇に立つ。午後2時頃,Vが同ドアから出て,同ドア前に立った後,WがVを抱えるようにして東側に倒れ込み,その直後,高速度で物体が玄関ドアに当たり,玄関ドア表面から煙かほこりのようなものが立ち上るとともに,映像が激しく乱れた。なお,同カメラの映像は,玄関ドア周辺しか撮影されていない。」
証拠⑥ B(男性,20歳,青果店手伝い)の検察官調書
「私は,平成27年11月1日当時,甲組の組員見習として同組組員であるAの運転手をしていたが,同日,私は,Aの指示で,AをH県I市J町まで車で送った。私がAの指示どおりJ町の路上に車を止めると,Aは,『すぐ戻ってくるから。』と言って車から降り,どこかに行った。その時間は午後2時頃だった。5分ほど経過して,少し遠くで『パン,パン』という音が聞こえ,間もなく,マスクをしたAが車に走って戻ってきて,後部座席に乗り込んだ。その際,Aは,右手に拳銃を持っていた。その後,私は,Aの指示どおりAをA方に送った。翌2日,Aの指示で,AをH県K市内のレンタルボックス店まで車で送った。」
証拠⑦ 捜査報告書
「Bの供述からH県K市内のレンタルボックス店を特定し,同店に照会した結果,平成27年11月2日に,A名義で同店のレンタルボックスを借りた者がいることが判明した。そこで,平成28年1月5日,捜索差押許可状に基づき,A名義で賃借中の上記レンタルボックスを捜索したところ,封筒に入れられた回転弾倉式拳銃1丁が発見された。」
証拠⑧ 回転弾倉式拳銃1丁証拠⑨ 鑑定書
「証拠④の弾丸3個は,口径9㎜△△型回転弾倉式拳銃用実包の弾丸であり,発射時に刻まれた擦過痕が一致しているため,同一の拳銃で発射されたものと認められる。証拠⑧の回転弾倉式拳銃1丁は,口径9㎜の△△型回転弾倉式拳銃である。科学警察研究所の技官が,証拠⑧の拳銃で試射し,試射弾丸と証拠④の弾丸を対照した結果,試射弾丸と証拠④の弾丸の発射時の擦過痕が一致した。よって,証拠④の弾丸3個は,証拠⑧の拳銃から発射されたものと認められる。」
証拠⑩ 捜索差押調書
「平成28年2月12日,捜索差押許可状に基づきA方の捜索を実施したところ,メモ帳1冊が発見され,本件に関係すると思料される記載があったため,これを押収した。」
証拠⑪ メモ帳1冊(2頁目に『11/1 J町1-1-3』という手書きの記載があり,その下に乙組事務所周辺に似た手書きの地図が記載されている。その他の頁は白紙であるが,表紙の裏にAとCが一緒に写っている写真シールが貼付されている。)
証拠⑫ C(女性,25歳,飲食店従業員)の警察官調書
「私は,平成27年2月頃からAと交際しており,Aが私の家に泊まっていくこともある。Aといつ会ったかなど,いちいち覚えていない。」
証拠⑬ Aの上申書(平成28年2月26日付け)
(A4版のコピー用紙に証拠⑪のメモ帳の2頁目を複写した書面の余白に以下の記載がある。)
「これは私が書いた犯行計画のメモに間違いない。実行予定日と乙組事務所の住所とその周辺の地図を記載した。」
証拠⑭ Aの検察官調書(平成28年3月1日付け)
「事件の1週間前,乙組の組員が甲組や私の悪口を言っていたという話を聞いたので,私は頭に来て,拳銃を撃って乙組の連中を脅そうと思った。そこで,私は,知人から拳銃を入手し,平成27年11月1日,Bに運転させて,乙組の事務所近くまで車で行き,午後2時頃,私だけ車から降りて乙組事務所に向かった。私は,乙組事務所の門扉に近づくと,ズボンのポケットに入れていた拳銃を取り出し,門扉前の路上から門扉の向こう側正面にある乙組事務所玄関付近を狙って拳銃を3発撃った。目を閉じて撃ったため人が事務所から出てきたことに気付かなかった。」
3 受訴裁判所は,平成28年3月7日,Aに対する殺人未遂被告事件を公判前整理手続に付する決定をした。検察官は,同月18日,証明予定事実記載書を同裁判所及びAの弁護人に提出・送付するとともに,同裁判所にⓐ証拠①ないし⑨及び⑭の取調べを請求し,Aの弁護人に当該証拠を開示し,Aの弁護人は,同月23日,同証拠の閲覧・謄写をした。Aの弁護人は,同年4月6日,検察官に類型証拠の開示請求をし,検察官は,同月11日,同証拠を開示した。
Aの弁護人は,逮捕直後からAとの接見を繰り返していたが,当初からAが証拠⑭と同旨の供述をしていたため,同月20日の公判前整理手続期日において,ⓑ「Aが拳銃を撃った犯人であること(以下「犯人性」という。)は争わないが,殺意を争う。」旨の予定主張を裁判所及び検察官に明示するとともに,ⓒ検察官請求証拠に対する意見を述べた。
4 同月30日,Aの弁護人がAと接見したところ,Aは,これまでの供述を翻し,「本当は,自分はやっていない。名前は言えないが世話になった人から頼まれて身代わりになった。押収されたメモ帳もその人のもので,私はそのメモ帳には何も書いていない。自分にはアリバイがあり,犯行当日は,女友達のCと,C方にずっと一緒にいた。」旨述べた。Aの弁護人は,同年5月1日,Cから事情を聞いたところ,Cは,「平成27年11月1日は,Aと自宅にずっと一緒にいた。警察官から取調べを受け,その日のAの行動について尋ねられたが,覚えていないという話をしたかもしれない。」旨述べた。Aの弁護人は,Cの警察官調書の開示請求をしておらず,証拠⑫を閲覧していなかったが,上記の経過を受けて,ⓓ殺意は争わないが,犯人性を争う方針を固めた。
5 平成28年5月20日の公判前整理手続期日において,ⓔ検察官は,犯人性が争点となったため,証拠⑩,⑪及び⑬の取調べを追加請求したが,Aの弁護人は証拠⑩については同意し,証拠⑪については異議あり,証拠⑬については不同意である旨意見を述べた。
その後,数回の公判前整理手続期日を経て,同年6月15日に,裁判所は,証拠決定をし,争点はAの犯人性であること及び証拠⑥の採用を留保し,Bの証人尋問を実施すること等の証拠の整理結果を確認して審理計画を策定し,公判前整理手続を終結した。公判期日は,同年7月1日から同月6日までと定められた。
〔設問1〕
下線部ⓑに関し,Aの弁護人は,証拠⑭と同旨のA供述を基に,Aの殺意について,どのような事実上の主張をすべきか,殺意の概念に言及しつつ答えなさい。
〔設問2〕
下線部ⓐに関し,検察官は,証拠③の実況見分調書を「犯行現場の状況等」という立証趣旨で証拠請求したところ,Aの弁護人が下線部ⓒにおいて,「下線部㋐及び㋑は立会人の現場供述であるため,証拠③は不同意である。なお,作成の真正も争う。」旨の意見を述べた。これに対し,検察官は,証拠③の証拠請求を維持したいと考えた。
(1) 検察官は,裁判長から下線部㋐及び㋑が現場供述であるか否かについて意見を求められた場合,どのような意見を述べるべきか,理由を付して答えなさい。
(2) Aの弁護人が,証拠③の実況見分調書について不同意意見を維持した場合,検察官は,どのような対応をとるべきか,答えなさい。
〔設問3〕Aの弁護人は,下線部ⓓの弁護方針の下,それまでの犯人性についての主張を変更し,Aが犯人ではない旨主張し,Cの証言により,Aが犯行当時C方にいた事実を立証したいと考えた。Aの弁護人が,下線部ⓓ以後の公判前整理手続において行うべき手続は何か。公判前整理手続に関する条文上の根拠を挙げて,手続内容を簡潔に列挙しなさい。
〔設問4〕(1) 下線部ⓔに関し,仮に証拠⑬が存在しなかった場合,証拠⑩及び⑪から「Aが犯人である事実」がどのように推認されるか。証拠①ないし⑨から何者かが公訴事実記載の犯行に及んだことが認められることを前提に,検察官の想定する推認過程について答えなさい。なお,証拠⑪の2頁の記載は,対照可能な特徴を有する文字が少ないため筆跡鑑定は実施できなかったものとする。
(2) 証拠⑩及び⑪に加えて,証拠⑬も併せて考慮することによって,小問(1)で答えた「Aが犯人である事実」を推認する過程にどのような違いが生じるか答えなさい。
〔設問5〕(1) 第1回公判期日において,Bの証人尋問が実施され,検察官が尋問の冒頭で以下の質問をしたところ,弁護人が誘導尋問である旨の異議を申し立てた。検察官は,異議には理由がないと述べた場合,裁判所は,その申立てに対しどのような決定をすべきか,理由を付して答えなさい。
検察官:「それでは,証人が,平成27年11月1日に,被告人を乗せて車を運転したときのことについてお尋ねします。」
(2) 第2回公判期日において,Cの証人尋問が実施され,Cは,弁護人の主尋問において,「平成27年11月1日,Aは,一日中,私の家で私と一緒におり,外出したこともなかった。」旨証言し,検察官の反対尋問において,「Aが起訴される前に,私は警察官の取調べを受けたが,どのような話をしたのか覚えていないし,その時,警察官が調書を作成したかどうかも覚えていない。」旨証言した。検察官は,更にCの記憶喚起に努めたが,その証言内容に変更がなかったため,裁判長に許可を求めることなく,Cに証拠⑫のCの署名押印部分を示そうとした。
このような調書の一部を示す行為は,検察官の反対尋問において許されるか,条文上の根拠に言及しつつ結論とその理由を答えなさい。
出題の趣旨
法務省が公表した出題の趣旨です。
本問は,犯人性及び殺意の有無が争点となる殺人未遂被告事件を題材に,殺人罪の構成要件,証拠法,公判前整理手続,刑事事実認定の基本構造,証人尋問を含む公判手続についての基本的知識を活用して,殺意の有無に関する当事者の主張(設問1),実況見分調書の立会人の指示説明部分の証拠能力及びその立証方法(設問2),公判前整理手続において当事者が主張を変更する場合に採るべき具体的手続(設問3),証拠から犯人性を推認する場合の証拠構造(設問4),証人尋問の方法及び異議に対する裁判所の対応(設問5)について,問題に指定してある法曹三者それぞれの立場から主張すべき事実や採るべき対応を検討して回答することを求めており,【事例】に現れた証拠や事実,手続の経過に応じた法曹三者の適切な対応を具体的に検討させることにより,基本的知識の正確な理解及び基礎的実務能力を試すものである。
参考答案
設問1
殺意
故意とは犯罪事実の認識認容である。
殺意とは殺人罪の故意であるから、殺意とは、自己の行為によって、人が死亡する事実の認識認容である。
創傷
実際にVを撃たつもりもなく、Vを狙わず、創傷もなかった。
凶器の用法
Aは人が事務所から出たのを気づかず、目を閉じて撃った。これは殺人の結果発生に対する認容がないからである。
動機
Aは拳銃で乙組の者を脅そうと思った。
犯行前後の言動
Aは拳銃を撃った後、Vを追撃せずに去った。これはAが殺意がないからである。
Aは人がいることを認識していなかったから、人が死亡する事実を認識認容していたとはいえない。
よって、Aには殺意が認められない。
設問2
第(1)小問
現場供述とは、
現場指示とは、
現場指示と現場供述は、要証事実との関係で内容の真実性が問題となるか否かによって区別される。
証拠③は実況見分調書で、立証趣旨および要証事実は「犯行現場の状況等」である。
下線部アおよびイは、Wの指示説明部分である。これは実況見分すべき地点を確定する必要からなされる説明であり、この場合は、当該指示説明は、Wがその地点を指示したので、その地点を対象とする実況見分を実施したという趣旨の記載であって、その指示説明は実況見分の手段に過ぎないから、現場指示である。
よって、下線部アおよびイについては現場供述に当たらない。
第(2)小問
本件証拠③である実況見分調書は刑事訴訟法(以下法令名省略のが刑事訴訟法)第321条第3項の検証調書に当たるから、本証拠は伝聞例外であり、証拠として認められべきである。
実況見分は検証ではないから、321条3項の伝聞例外の規定が使えるか問題となる。
実況見分と検証は任意捜査か強制捜査かの違いしか無い。
321条3項の趣旨は、公務員が職務上作成した文書であり、信用性が高いことにあるから、実況見分調書も321条3項の要件を満たす場合に伝聞例外として証拠能力が認められる。
よって、作成者の証人尋問を請求し、作成者が公判廷で、記載内容の真正と作成名義の真正について証言した場合は、伝聞例外として証拠能力が認められる。
設問3
当該案件は平成28年3月23日に、証明予定事実記載書がAの弁護人に送付し、同月23日弁護人は同証拠の閲覧・謄写をした後、4月11日に同証拠は開示されたから、弁護人の予定主張変更は主張関連証拠開示が終わった後の変更になる。弁護人は予定主張の変更を書面で行わなければならない(316条の13から20、316条の22第1項)。
証拠を追加する場合は316条の22第2項が適用される。
316条の20(主張関連証拠開示)の開示の請求をする。(316条の22、316条の20)
設問4
第(1)小問
ア 犯人側の事情
平成27年11月1日2時頃、VはWからH県I市J町1丁目1番3号の乙組事務所から出掛けたところ、犯人の男性がマスクを着用し、門扉の正面で拳銃を持ってVに構え銃を撃った、その後現場から離れた。事務所玄関ドア下端から上方へ約1.3メートルから1.4メートルのところに弾丸が3個めり込んで、その場所は身長がVと同じ身長のY警官の胸のところにある。
イ 被告人側の事情
平成27年11月1日当時、Aは甲組の組員のBを指示し、車で同県同市J町まで送って、2時にJ町に到着し、5分ほど経過した後「パン、パン」の音があった後、マスクをしたAが拳銃を持って車に戻った。そして、A名義でレンタルボックス店で発見した拳銃は本件犯人用の拳銃も同一物であると判明。
ウ 意味づけ
犯行時刻に、Aは拳銃をもって現場に行ったことがあり、A名義のレンタルボックスに犯人用の拳銃も発見したから、Aは本件の犯人であろう。
エ 反対仮説
当日Bの運転した車に戻ったのはマスクをした他人である可能性がある。
Aに頼んだ他人が犯行を実行した可能性がある。一方で、AはBの車を乗って犯行現場に行ったこともあるから、反対仮説が成立するのは相当程度である。
オ 結論
よって、推認力は相当程度である。
ア 犯人側の事情
平成28年11月1日、犯人はJ町1丁目1番3号の乙組事務所に犯行をしようとしたから、犯罪計画も立つのだろう。
イ 被告人側の事情
平成28年2月12日、A方で押収されたメモ帳にAの写真があり、その中に「11/1 J町1-1-3」に記載され、乙組事務所周辺に似たような手書きも記載されている。
ウ 意味づけ
A方で、Aの写真のあるメモ帳に犯行計画があったから、当該犯行計画はAが立ったのであろう。
メモの記載が犯行現場、犯行日時と一致しているため、メモは、犯行計画である可能性が高く、メモの記載者が何らかの形で犯行に関わっていると推認される。
エ 反対仮説
A以外の者が犯行計画を立った可能性がある。
メモについて説明ができていない。
別人がメモを書いた可能性がある。
AはCと交際中でありCがメモを書いた可能性もある。
A方で押収されたメモ帳は筆記鑑定が実行しなかったから、犯行計画を立てたのはAであると認定できないので、反対仮説が成立する可能性が相当程度である。
オ 結論
よって、推認力が相当程度である。
第(2)小問
証拠⑬を除いた場合、筆記鑑定がなかったため、犯行計画はAが立ったかについては認定できないが、証拠⑬について、Aは犯行計画を立ったことについて自認し、当該犯行計画は本件の犯行時間・場所と一致しているので、推認力は強いと言える。
供述の信用性
どの供述のどの部分の信用性を検討するか。
⑬の犯行計画のメモで間違いないという部分の信用性を検討する。
他の証拠との整合性
証拠⑩、証拠⑪と整合するかどうか。
よって、供述の信用性が認められる。
よって、Aが犯行計画のメモを作成したことが認定できる。
供述の信用性→供述内容(間接事実)が認定できる。
間接事実から要証事実(犯人性)を推認する。
設問5
第(1)小問
誘導尋問とは、尋問者の欲する答えを暗示しその方向へ被害尋問者を誘導する尋問。
誤導尋問とは、争いのある事実または、供述していない事実を前提に更に次の尋問を行う場合。
あてはめ
本件でAは、当日Cとずっと一緒にいたとして犯人性を争っており、証人が、被告人を車に押せていたことは争いのある事実である。
よって、誤導尋問に当たる。
規則199条の3第3項の例外にあたり、誘導尋問が許される場合に当たるか。
→当たらない。
裁判官は、検察官に対して、質問を変更するよう決定しなければならない(刑事訴訟規則第205条の6第1項)。
第(2)小問
証人Cは弁護人の尋問について、証拠⑫と反対する事実(Aと一緒にいたかどうか)旨の証言をし、証拠⑫にCの署名押印があったから、書面の成立についてCに尋問する必要性がある(刑事訴訟規則第199条の10第1項)。そして、証拠⑫は公判期日において証人Cの証言と争うことができるから(328条)、検察官は反対尋問をすることができる(刑事訴訟規則199条の4第1項)
定石P146 書面を示す尋問