予備試験 令和6年 行政法
問題文
Xは、Y県A市の郊外において多数の農地がまとまって存在する地域(以下「本件地域」という。)内にある土地を所有している(以下、Xが所有する土地を「甲土地」という。)。本件地域は、北東から南西に向かって緩やかに下る地形をなしており、多くは田として利用されている。Xは、甲土地の北東部分に木造平屋建ての住宅(以下「本件住宅」という。)を建築してそこで居住するとともに、甲土地のその他の部分を畑(以下「本件畑」という。)として耕作し、根菜類を栽培している。本件畑は、農業用の用排水路に接続していないものの、本件地域には、高い位置にある田から低い位置にある田に向かって自然に水が浸透し流下するという性質があるため、本件畑の耕作条件は良好であった。Xは、本件畑で育てた野菜の販売により収入を得ることによって、生活を営んできた。
Bは、本件地域内に複数の農地を所有しており、それらの農地の中には、甲土地の南側に接する土地(以下「乙土地」という。)及び西側に接する土地(以下「丙土地」という。)がある。B及び土木建築会社Cは、乙土地を宅地として売り出すことを計画し、Cは、令和5年10月下旬頃から乙土地の造成工事(以下「本件造成工事」という。)に着手した。本件造成工事は、乙土地のうち本件畑に接する部分の地下にコンクリートの基礎を築き、その上にコンクリート製擁壁を設置して、同擁壁の上端まで造成土を入れるというものであった。同年11月半ば頃には本件造成工事が完成し、乙土地の地表面は本件畑の地表面より40センチメートルほど高くなった。
B及びCは、令和5年11月15日、乙土地をCの資材置場にするという名目で、農地法第5条
第1項に基づき、同法にいう「都道府県知事等」に該当するY県知事に対して、乙土地にCの賃借権を設定することの許可を求める旨の申請(以下「本件申請」という。)をした。提出された許可申請書には、土地造成及び工事の着手時期が令和6年1月10日であることが記載されており、付近の土地等の被害を防除する施設については記載がなかった。本件造成工事によって造成された土地の面積は、同申請書に記載された土地造成の所要面積に合致するものであった。
Xは、令和5年11月20日、Y県の担当部局に赴き、本件造成工事によって本件畑の排水に支障が生じると主張して復旧を求めた。Y県の担当者Dは、B及びCに対し、本件畑の排水に支障を生じさせないための措置を採ることを指導し、Bは、丙土地上に、本件畑の南西角から西に向かう水路を設けた。この水路は、排水に十分な断面が取られておらず、勾配も十分なものではなかったが、Dは、目視による短時間の確認を行っただけで、Bが指導に従って措置を採ったと判断した。
Dの報告を受けたY県知事は、農地法第5条第2項第4号にいう「周辺の農地(中略)に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合」には当たらないと認定して、令和6年1月9日、本件申請を許可する処分(以下「本件処分」という。)をした。
令和6年5月頃、本件畑は、付近の田に入水がされた際に冠水するようになった。特に本件畑の南側部分の排水障害は著しく、同部分では常に水がたまり、根菜類の栽培ができない状態になっている。本件畑の排水を改善するために、本件畑に盛土をしてかさ上げをする工事を行う場合、その費用(以下「本件費用」という。)は120万円余と見込まれている。同年6月の時点において、本件住宅に関する損害は発生していないが、Xは、本件住宅の床下が浸水による被害を受けるおそれもあると考えている。
Xは、法的措置として、令和6年6月中に本件処分の取消訴訟(以下「本件訴訟1」という。)
を提起するとともに、本件処分によって本件費用相当額の損害が発生したことを理由とする国家賠償請求訴訟(以下「本件訴訟2」という。)及びY県知事がCに対して農地法第51条第1項に基づく原状回復の措置命令をすることを求める義務付け訴訟(以下「本件訴訟3」という。)を提起することを検討している。
以上を前提として、以下の設問に答えなさい。また、農地法の抜粋を として掲げるの【資料】
で、適宜参照しなさい。なお、 に掲げられていない同法の規定については、考慮しなくて【資料】
よい。
〔設問1〕
Ⅹは、本件訴訟1における原告適格についてどのような主張をすべきか、検討しなさい。
〔設問2〕
Xが本件訴訟1における原告適格を有することを前提として、以下の各小問に答えなさい。
⑴ Xは、本件訴訟2において、国家賠償法第1条第1項の「違法」及び「過失」についてどのような主張をすべきか、検討しなさい。
⑵ Xは、本件訴訟3において、行政事件訴訟法第37条の2第1項の要件及び農地法第51条第1項の処分の要件が充足されることについてどのような主張をすべきか、検討しなさい。
【資料】
〇 農地法(昭和27年法律第229号)(抜粋)
(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第3条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は(中略)賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。(以下略)
一~十六 (略)
2~6 (略)
(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)
第5条 農地を農地以外のものにするため(中略)、これらの土地について第3条第1項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。(以下略)
一~七 (略)
2 前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。(以下略)
一~三 (略)
四 申請に係る農地を農地以外のものにすること(中略)により、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合、農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の周辺の農地(中略)に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合 五~八 (略)
3~5 (略)
(違反転用に対する処分)
第51条 都道府県知事等は、(中略)次の各号のいずれかに該当する者(以下この条において「違反転用者等」という。)に対して、土地の農業上の利用の確保及び他の公益並びに関係人の利益を衡量して特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、第4条若しくは第5条の規定によつてした許可を取り消し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて原状回復その他違反を是正するため必要な措置(中略)を講ずべきことを命ずることができる。
一 第4条第1項若しくは第5条第1項の規定に違反した者又はその一般承継人 二、三 (略)
四 偽りその他不正の手段により、第4条第1項又は第5条第1項の許可を受けた者2~5 (略)
出題の趣旨
法務省が公表した出題の趣旨です。
本問は、農地法第5条第1項の許可がなされたことによって第三者である農家が農業上の被害を受けたという事実に基づいて、取消訴訟の原告適格及び義務付け訴訟に特有の訴訟要件について基本的な理解を試すとともに、国家賠償法第1条第1項の違法及び過失並びに個別法の処分要件の充足性について事案に応じて論じることができるかどうかを試す趣旨の問題である。
設問1は、農地法第5条第1項の許可の取消訴訟における第三者の原告適格を問うものである。判例の採用する法律上保護された利益説の立場から、当該許可に関する農地法の規定が第三者の利益を個別的利益としても保護する趣旨を有することを指摘した上で、原告適格を肯定する論述が求められる。
設問2(1)は、行政処分によって損害が発生した場合における、国家賠償法第1条第1項の違法及び過失に関する主張を問うものである。本件処分が農地法の規定に適合しないものであることを指摘し(なお、職務行為基準説の立場に立って違法性を認定する場合であっても、「公権力の行使」である本件処分が法律要件に違反して行われたということが前提となる。)、このことを踏まえた上で国家賠償法
第1条第1項の違法及び過失があるということについて、自覚的に論じなければならない。本問及び設問2(2)では、設問1における原告適格が認められること、すなわち本件処分によって農地法上保護された原告の利益が侵害されることを前提として論述することが求められる。
設問2(2)は、行政事件訴訟法第37条の2第1項の要件及び農地法第51条
第1項の処分要件の充足を問うものである。前者に関しては「重大な損害」要件及び補充性の要件の充足を、後者に関しては「違反転用者等」該当性及び「土地の農業上の利用の確保及び他の公益並びに関係人の利益を衡量して特に必要があると認めるとき」という要件の充足をそれぞれ論じることが求められる。
参考答案AI生成(出題の趣旨と論証集をもとに作成した目安です)
第1 設問1(本件訴訟1における原告適格)
1 判断枠組み
(1) Xは本件処分の名宛人であるB及びC以外の第三者であるから、「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条1項)に当たるかが問題となる。「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい、処分の根拠法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も法律上保護された利益に当たる(最判平元.2.17、最大判平17.12.7)。
(2) その判断に当たっては、行訴法9条2項により、①当該法令の趣旨及び目的、②処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、①については当該法令と目的を共通にする関連法令の趣旨及び目的をも参酌し、②については当該処分がその根拠法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案する。
2 Xが主張すべき内容
(1) 法令の趣旨・目的について。農地法5条1項は、農地を農地以外のものにするための賃借権等の設定を知事の許可にかからせ、同法3条1項も農地の権利移動一般を農業委員会の許可にかからせており、農地の確保を図っている。そして5条2項4号は、転用により、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれ、農業用用排水施設の機能に支障を及ぼすおそれ、「その他の周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれ」がある場合には許可をすることができないと定め、転用地の周辺農地の営農条件の維持を許可の消極要件としている。排水障害は、災害や用排水施設の機能障害と並ぶ営農条件への支障の典型である。同号が「周辺の農地」と対象を限定しているのは、転用による物理的影響が転用地に近接する農地に限って及ぶことを前提に、その農地で営農する者の利益を特に念頭に置いたものと解される。
(2) 利益の内容・性質について。営農条件への支障は、周辺農地の耕作者の農業収入、ひいては生活の基盤に直結する財産的利益の侵害であり、冠水すれば作付けした作物が失われ、排水障害が除去されるまで毎年反復する。その被害は、転用地に隣接する農地ほど直接的かつ重大である。このような利益は一般的公益に吸収解消させることが困難であり、同号は、転用地に近接する農地の所有者・耕作者の営農上の利益を個別的利益としても保護する趣旨を含む。
(3) これに対し、農地法は農地の確保という公益を目的とし周辺耕作者の利益は反射的利益にすぎないとの反対の立場も考えられる。しかし、同号は周辺農地への支障を許可の要件そのものとしており、要件に違反する処分により直接害されるのは個々の周辺耕作者であるから、反射的利益にとどまるとはいえない。
(4) あてはめ。Xは、乙土地に南側で接する甲土地を所有し、本件畑で根菜類を栽培し、その販売収入で生活している。本件地域は多数の農地がまとまって存在し、北東から南西に緩やかに下る地形であり、本件畑は農業用用排水路に接続せず、高い位置から低い位置への自然の浸透・流下のみに排水を依存していた。本件造成工事は、乙土地のうち本件畑に接する部分の地下にコンクリート基礎を築き、その上に擁壁を設置して本件畑より40センチメートル高く造成するものであり、地表の流下のみならず地下の浸透まで遮断する構造であるから、本件畑の排水障害は必然である。現に令和6年5月以降、本件畑は付近の田への入水の際に冠水し、南側部分は常に水がたまって根菜類の栽培ができず、Xは120万円余の盛土費用を要する状態にある。Xは、本件処分が5条2項4号に違反してされた場合に営農条件に支障を生ずる周辺農地の所有者兼耕作者として、法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たる。
3 よって、Xは、5条2項4号が隣接農地の耕作者の営農上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含み、自己が現にその利益を侵害されていることを主張して、原告適格を有すると主張すべきである。
第2 設問2(1)(本件訴訟2における「違法」及び「過失」)
1 違法
(1) 国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項の「違法」は、公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背したか否かにより判断される(最判昭60.11.21)。行政処分については、当該処分が法律の要件に違反していることを前提に、処分庁が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と処分をしたと認めうる場合に違法となる(最判平5.3.11)。そして、設問1で述べたとおり、農地法5条2項4号は周辺農地の耕作者であるXの営農上の利益を個別的に保護しているから、知事が同号の要件を適切に審査する義務は、Xに対して負う職務上の法的義務である。Xはこの前提を明示した上で、次のとおり主張すべきである。
(2) まず、本件処分は農地法5条2項4号に違反する。本件処分時(令和6年1月9日)には、本件造成工事は既に完成し、乙土地は本件畑より40センチメートル高くなり、地下の基礎と擁壁によって本件畑から南側への自然の流下・浸透は遮断されていた。Bが丙土地上に設けた水路は、排水に十分な断面も勾配も有しておらず、しかも本件地域は南西に下る地形であるから、本件畑の最も低い南側部分の水を西向きの浅い水路で排出することはできない。したがって、本件申請を許可すれば周辺農地である本件畑の営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合に当たり、知事は許可をすることができなかった。
(3) 次に、知事及び担当者Dは、職務上通常尽くすべき注意義務を怠った。同号が周辺農地への影響を許可要件とする以上、許可権者には、周辺農地への影響を調査し、防除措置の実効性を確認する義務がある。本件では、許可申請書に付近の土地等の被害を防除する施設の記載が全くなかった。また、申請書は土地造成及び工事の着手時期を令和6年1月10日と記載していたが、現地では既に申請書記載の所要面積と一致する造成が完成しており、Dが現地を見れば、申請内容が虚偽であり、許可を待たずに転用が完了していることを容易に認識できた。さらに、Xは令和5年11月20日に担当部局に赴き、本件造成工事による排水障害を具体的に申し出ていた。これらの事情の下では、Dには、水路の断面・勾配を実測し、地形を踏まえて排水の実効性を確認する義務があったのに、目視による短時間の確認で指導に従ったと判断した。断面と勾配の不足は専門的知見を要せず確認できる事項である。知事は、Dのこの不十分な報告のみに基づき、申請書記載の着手予定日の前日に本件処分をしたのであって、追加の調査や防除施設の設置を条件とすることも検討していない。よって、知事は職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件処分をしたものであり、「違法」がある。
2 過失
過失とは、損害の予見可能性及び回避可能性があるのに結果回避義務を怠ったことをいい、加害公務員を特定する必要はなく、担当組織として注意義務を尽くしたかにより判断される。Xは、本件処分前に自ら排水障害を申し出ており、地形と造成の構造からも排水障害は予見できたこと、D及び知事は水路の実測、擁壁への排水設備の設置の指導、不許可又は条件付許可によって結果を回避できたこと、にもかかわらず目視確認のみで処分に至ったことを主張し、Y県の担当組織に過失があると主張すべきである。
3 なお、本件処分が取り消されていなくても、国家賠償請求は処分の効力を争うものではないから、公定力は妨げとならない(最判昭36.4.21)。本件費用相当額は、本件処分により侵害された営農上の利益の回復費用として、違法な処分と相当因果関係のある損害である。
第3 設問2(2)(本件訴訟3の要件)
1 行訴法37条の2第1項の要件
(1) 農地法51条1項の措置命令についてXに法令上の申請権はないから、本件訴訟3は非申請型義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)であり、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り提起できる(37条の2第1項)。重大な損害の判断に当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案する(同条2項)。なお、Xは設問1と同様に法律上の利益を有する者である(同条3項)。
(2) 重大な損害について、Xは次のように主張すべきである。本件畑は付近の田に入水がされるたびに冠水し、南側部分は常に水がたまって根菜類の栽培ができず、野菜の販売収入で生活するXの生計の基盤が現に失われている。この損害は耕作期ごとに反復継続し、原状が回復されない限り将来にわたり続くものであり、営農の継続という利益は事後の金銭賠償によっては回復できない。盛土による自力回復にも個人農家にとって過大な120万円余を要する。さらに、令和6年6月時点で損害は未発生であるが、本件住宅の床下が浸水する被害のおそれも生じている。他方、原状回復命令は農地法51条1項が違反転用に対する是正措置として予定するものであり、措置命令をすることが過大な負担を伴うものでもない。よって、重大な損害を生ずるおそれがある。
(3) 補充性について。「他に適当な方法」とは、当該処分の義務付けに代わる救済手段が法令上特に定められている場合をいう。本件訴訟1により本件処分が取り消されても、許可の効力が失われるだけで、既に完成した造成土や擁壁が除去されるわけではない。本件訴訟2による金銭賠償も排水障害を除去しない。B・Cに対する民法上の妨害排除請求も考えられるが、これは法令が義務付け訴訟に代わる手段として定めたものではなく、農地法51条1項が違反転用の是正を知事の権限としている以上、私人間の民事訴訟を強いることは同条の趣旨にも反する。よって、他に適当な方法はない。
2 農地法51条1項の処分要件
(1) 「違反転用者等」該当性について。農地法5条1項は、転用のために賃借権等の使用収益権を設定する場合に当事者が許可を受けることを求め、許可を転用の前提としている。Cは、令和5年10月下旬頃から乙土地の造成に着手し、同年11月半ばには完成させていたのであり、Bから許可なく乙土地の使用を認められ、宅地として売り出すため農地以外のものにしたものであるから、Bとともに「第5条第1項の規定に違反した者」(51条1項1号)に当たる。令和6年1月9日の本件処分は事後にされたものにすぎず、既に生じた違反を治癒するものではない。また、Cは、申請書に着手時期を令和6年1月10日と記載して完成済みの造成を将来の工事であるかのように装い、Xの申出により排水障害を認識していたにもかかわらず被害防除施設を記載せず、宅地として売り出す計画を資材置場という名目で申請した。これらは5条2項4号の不許可要件の審査を免れるための偽りであり、Cは「偽りその他不正の手段により」許可を受けた者(同項4号)にも当たる。
(2) 「土地の農業上の利用の確保及び他の公益並びに関係人の利益を衡量して特に必要があると認めるとき」について。この要件は不確定概念であり知事に裁量が認められるが、Xは、以下の事情から、措置命令をしないことが裁量権の逸脱・濫用に当たり、本案要件(行訴法37条の2第5項)も含めて要件が充足されると主張すべきである。すなわち、本件地域は多数の農地がまとまって存在する地域であり、本件畑は耕作条件が良好な農地であったのに、違反転用により栽培不能となって土地の農業上の利用が現に害されていること、Xは関係人として生計の基盤を失い住宅への被害のおそれも抱えていること、他方で乙土地は資材置場という名目にすぎず現に利用されておらず、B・Cの宅地販売の利益は偽りによる違反転用に基づくもので保護に値しないこと、是正措置は擁壁基礎への排水設備の設置や造成土の一部撤去など「必要の限度」にとどめうること、虚偽の申請による違反転用を事後許可で放置することは農地法の規制の実効性を損ない公益に反することである。
3 以上から、Xは、行訴法37条の2第1項の重大な損害及び補充性の要件並びに農地法51条1項の処分要件がいずれも充足されると主張すべきである。
以上