司法試験 令和6年 商法
問題文
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕及び〔設問2〕の配点の割合は、60:40〕)
次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1.甲株式会社(以下「甲社」という。)は、建築設備機器の製造及び販売等を目的とする会社法上の公開会社である取締役会設置会社であり、種類株式発行会社ではない。甲社の発行済株式の総数は500万株であり、株主数は1000名であった。甲社には、A、B及びC(以下、A、B及びCを総称して「Aら」という。)の3名の取締役並びにDほか2名の計3名の監査役がおり、Aが代表取締役を務めていた。なお、甲社の取締役であるAらは甲社の株式を保有していたが、甲社の監査役であるDほか2名は甲社の株式を保有していなかった。
乙株式会社(以下「乙社」という。)は、住宅の建設及び売買等を目的とする株式会社であり、甲社の発行済株式の総数の20%に相当する100万株を保有する甲社の筆頭株主であった。
2.甲社の近年の業績が悪化していたことから、乙社は、令和3年7月20日、甲社に対し、①取締役3名の解任の件、②監査役3名の解任の件、③取締役3名の選任の件、④監査役3名の選任の件(以下、これらを総称して「本件各議題」という。)を目的とする株主総会の招集を請求した。しかし、甲社は、株主総会の招集通知を発しなかった。
3.そこで、乙社は、令和3年9月27日、裁判所の許可を得て、甲社の株主に対し、本件各議題を目的とする臨時株主総会(以下「本件臨時株主総会1」という。)を開催するため、必要事項を記載した招集通知を発した。当該招集通知が入った封書には、議決権行使書面及び株主総会参考書類のほか「議決権の行使のお願い」と題する書面(以下「本件書面」という。)が同封されていた。本件書面には、「甲社の改革の実現に御協力をお願い申し上げます。株主総会参考書類に記載した乙社提案の各議案のいずれにも賛成していただいた方には、後日、1000円相当の商品券を郵送にて贈呈させていただきます。全ての議案について同封した議決権行使書面の『賛』の欄に○印を付けて御返送ください。」との記載がされていた。なお、甲社においては、過去の定時株主総会に際して、甲社又は甲社の役員若しくは株主が一定の内容の議決権の行使又は議決権の行使自体を条件として商品券等を提供したことはなかった。
4.令和3年10月20日、本件臨時株主総会1が開催され、本件各議題についての乙社提案の各議案は、いずれも出席した株主の議決権の約75%の賛成により可決した(以下「本件決議1」
という。)。本件臨時株主総会1においては、出席した株主の議決権の数は、例年の定時株主総会よりも約30%増加し、行使された議決権のうち議案に賛成したものの割合も、例年の定時株主総会において行使された議決権のうち甲社が提案した議案(いずれも可決された。)に賛成したものの割合よりも高いものであった。なお、本件臨時株主総会1において、甲社の株主が返送した議決権行使書面には、賛否の欄に記入をしていない白票は存在しなかった。
5.乙社は、令和3年11月15日、本件各議題についての乙社提案の各議案のいずれにも賛成した甲社の株主全員に対し、一人当たり1000円相当の商品券を送付した。これらの商品券の取得や送付に要した費用については、乙社が全て負担した。
〔設問1〕
下記の小問に答えなさい。
〔小問1〕
上記3の時点で、甲社の監査役Dは、本件臨時株主総会1の招集通知と本件書面を見て、本件臨時株主総会1の開催には法令違反があり、監査役として何らかの対応をする必要があるのではないかと考えた。Dほか2名の甲社の監査役3名が協議した結果、仮に本件臨時株主総会1の開催に法令違反があったとしても、本件臨時株主総会1の開催をやめるように求める手段の有無が別途問題となることが判明したため、Dは、弁護士に相談することとした。Dの相談を受けた弁護士は、Dが会社法に基づいて本件臨時株主総会1の開催をやめるように求める手段の有無についてどのように回答すべきか、論じなさい。なお、本件臨時株主総会1の開催に法令違反があるかどうかについては、論じなくてよい。
〔小問2〕
上記5の時点で、本件各議題についての乙社提案の各議案に反対した甲社の株主Eが、本件決議1に至った経緯に不満を抱き、株主総会決議の取消しの訴えを提起した場合に、Eの立場において考えられる主張及びその主張の当否について、論じなさい。
下記6以下においては、上記2から5までの事実は存在しないことを前提として、〔設問2〕に答えなさい。
6.乙社は、甲社の業績が長期的に悪化していたため、Aらに対して不満を持っていた。これに対し、Aらは、考え方が大きく異なる乙社が筆頭株主のままでは甲社の意思決定を円滑に行うことができないし、乙社のような株主が存在するのは甲社が会社法上の公開会社であるからであり、今後は甲社を会社法上の公開会社でない株式会社にすべきであると考えていた。また、Aらは、1000名もの株主が存在していることも機動的な意思決定の妨げになるものと考えていた。そこで、Aらは、令和3年12月、甲社の再建を支援してくれる丙株式会社(以下「丙社」という。)とともに、株式の併合をするなどして甲社の買収を行うこととした。
その結果、令和3年12月の時点で、甲社の発行済株式の総数は600株(全て普通株式である。)となり、丙社が200株を、Aが200株を、Bが100株を、Cが100株を、それぞれ保有することとなった。また、甲社の定款には、譲渡による甲社の株式の取得について株主総会の承認を要する旨、株式取得者が甲社の株主である場合には甲社はその取得を承認したものとみなす旨が定められた。そして、甲社は、引き続き取締役会を置くこととし、その取締役は、Aらに加えて、丙社から派遣されたFの4名となり、引き続きAが代表取締役を務めることとなった。また、甲社の監査役は、従前と同様、Dほか2名の計3名となった。なお、これらの手続は、全て適法に行われた。
7.丙社は、建築関係の中小規模の株式会社数社について、その株式の全てを保有したり、甲社や下記8の丁株式会社(以下「丁社」という。)のように、その株式の一部を少数株主として保有したりしていた。丙社は、甲社に対し、Fを取締役として派遣したり、取引先を紹介したりするなどしてその再建に協力した。
8.甲社は、その製造する機器の品質に定評があったことに加え、建築設備機器に対する需要の増加、丙社の協力及びAらの努力により、急速に業績を回復することができ、令和5年6月にはその経営が安定してきた。丙社は、甲社の再建はめどがついたと考え、今度は、甲社の営業範囲と隣接する地域で建築設備機器の製造及び販売等を行う丁社の再建に注力するようになった。その一環として、Fは、Aらに対し、甲社の持つ技術やライセンスを丁社に提供するように求めるなどしたため、FとAらとの間に見解の相違が見られるようになった。
9.Aらは、令和5年10月、丙社の本社を訪れ、丙社の代表取締役であるGと面会した。Aらは、Gに対して、「甲社の再建に水を差すようなことはしないでほしい。」と伝えたところ、Gは、「甲社の再建のために協力したのだから、今度は甲社が協力する番ではないか。甲社は、その技術とライセンスを丁社に提供し、実際の生産は丁社に任せる方向で業務提携をしてはどうか。」
などと提案し、両者の見解は一致しなかった。Gは、これを機に、甲社を丙社の完全子会社とした上で将来的には丁社と合併させる方がうまくいくのではないかと考えるようになった。
10.Aは、令和5年11月1日、上記9の甲社を丙社の完全子会社にするというGの意向をFから聞かされて驚がくし、B及びCと対応策を協議した。その結果、Aらで甲社の発行済株式の総数の3分の2を保有していることから、甲社と競合関係にある丁社のために経営に介入されることを防ぎ、甲社の独立を維持するために、丙社を締め出すべきであるとの結論に達した。そして、下記11の計画を実現するために、Bは、同月6日、Aに対し、甲社の株式100株を譲渡した。
Gが考えていた甲社を丙社の完全子会社にする案も、Aらが決定した甲社の独立を維持するために丙社を締め出すという案も、甲社の企業価値との関係では、客観的にいずれか一方が他方よりも優れているとは言い難く、見解の分かれる問題であった。Bは、Aよりも前にGの案を聞いており、当初はGの案もあながちおかしなものではないと考えていたが、Aが甲社の独立を維持する必要があると強く主張し、Cもこれに賛同したことから、最終的にはAらの案を支持することにした。
11.甲社の取締役会は、令和5年11月15日、適法な決議を経て、次の①から③までの事項を一連のものとして行う計画(以下「本件計画」という。)を決定した。
① 甲社の株式について、300株を1株とする株式の併合(以下「本件株式併合」という。)
を行うこととし、そのために臨時株主総会(以下「本件臨時株主総会2」という。)を招集する。なお、本件株式併合により1株に満たない端数となる株式については、甲社が、同月14日に専門家から取得した株式価値算定書に基づいた価格で買い取ることとする。
② 本件株式併合の効力発生後遅滞なく、1株を200株に分割する株式の分割(以下「本件株式分割」という。)を行う。
③ 本件株式分割の効力発生後遅滞なく、B及びCに対する募集株式の第三者割当て(甲社が上記①で買い取った甲社の株式であって本件株式分割後の200株の自己株式を処分するというものである。)を行うこととし、そのために臨時株主総会を招集する。この募集株式の第三者割当ては、Bに100株を、Cに100株を、それぞれ割り当てるものである。
これらを行うことにより、甲社の発行済株式の総数は400株となり、Aが200株を、Bが100株を、Cが100株を、それぞれ保有することとなる。
Fは、甲社のような株式会社において特定の株主を狙い撃ちにして締め出すことは許されないと主張して本件計画に反対した。しかし、Aらが賛成したことにより本件計画が可決された。
12.甲社は、令和5年12月11日、適法な招集手続を経て、本件臨時株主総会2を開催した。本件臨時株主総会2では、全ての株主が出席し、Aが上記8及び9の丙社による提案等を説明した上で、甲社と競合関係にある丁社のために経営に介入されることを防ぎ、甲社の独立を維持するために、丙社を締め出す必要があるとして、本件株式併合が必要な理由を説明した。なお、本件株式併合により1株に満たない端数となる株式の買取価格は、公正な価格と認められるものであった。
本件臨時株主総会2に出席したGは、「金額の問題ではなく、信義の問題だ。なぜ再建に協力した我々だけを排除するのか。このようなものは到底容認できない。」と述べたところ、Aは、「御社とは甲社の経営について深刻な見解の相違があるため、我々経営陣が退くのでなければ、最終的には退出していただくほかない。」と回答した。本件株式併合に関する事項を定める件については、丙社が反対したものの、他の株主全ての賛成により、甲社提案のとおり可決された
(以下「本件決議2」という。)。
13.本件株式併合の効力は、本件決議2によって効力発生日として定められた日に発生した。なお、本件株式併合に際して行うべき株主への通知及び本件株式併合に関する書面等の備置き等は、全て適法に行われた。
〔設問2〕
上記13の時点で、丙社は、本件株式併合の効力を争うことを検討している。丙社が採ることができる会社法上の手段に関し、丙社の立場において考えられる主張及びその主張の当否について、論じなさい。
出題の趣旨
法務省が公表した出題の趣旨です。
1 設問1は、会社法上の公開会社である取締役会設置会社において、少数株主が裁判所の許可を得て取締役の解任等を目的とする株主総会を招集するに当たり、議決権行使書面及び株主総会参考書類のほかに、自らが提案する議案に賛成した株主には商品券を贈呈する旨の書面を株主に交付した場合に生じ得る会社法上の問題についての検討を求めるものである。小問1は、株主総会の開催に法令違反があると考えた監査役が株主総会の開催前に採ることができる会社法上の手段の有無の検討を、小問2は、株主総会を招集した少数株主が提案した議案に反対した他の株主がこれを可決した株主総会決議の取消しの訴えを提起した場合において、当該他の株主の立場において考えられる主張及びその主張の当否の検討を、それぞれ求めるものである。
設問2は、会社法上の公開会社でない取締役会設置会社において、特定の株主を締め出すために行われた株式併合について、当該特定の株主がその効力を争うために採ることができる会社法上の手段に関し、その立場において考えられる主張及びその当否の検討を求めるものである。
2 設問1について
⑴ 小問1について
小問1においては、Dが監査役として少数株主により行われた違法行為の差止めを請求するための会社法上の手段の有無が問われている(なお、小問1においては、少数株主の行為の違法性の有無自体について論ずることは求められていない。)。監査役による違法行為の差止めについては会社法第385条第1項に規定されているが、同項は、取締役の行為を対象としていることから、少数株主が裁判所の許可を得て株主総会を招集する場合にそのまま直接適用することは難しい。まずは、その点を指摘した上で、同項の適用又は類推適用の可否を検討することが必要となる。この点については、例えば、少数株主は、株式会社のために株主総会を招集する権限を付与されているのであって個人の利益のためにその権限を付与されているわけではないという意味において取締役に準ずる立場にあり、取締役と同様、適法に株主総会を招集する義務を負っていると考えられることに加え、同項の適用又は類推適用を認めなければ、適法性を監査するという監査役の任務を全うすることができないことなどを指摘して、同項の適用又は類推適用を肯定するということも考えられるであろう。これに対し、少数株主と取締役とでは立場が異なることや少数株主による違法な株主総会の招集を差し止められないことになってもやむを得ないことなどを指摘して、同項の適用又は類推適用を否定することも考えられるであろうが、いずれにしても、少数株主に株主総会を招集する権限が付与されていることや、少数株主による違法な株主総会の招集を監査役が差し止めることの必要性などについて、広く考慮した上で、Dから相談を受けた弁護士としての回答を検討することが求められる。
なお、そのほかにも、別の被保全権利の存在を指摘して仮の地位を定める仮処分命令(民事保全法第23条第2項)の申立てをするということも考えられないではない。例えば、監査役の少数株主に対する妨害排除請求権や株主総会決議の取消しの訴えを本案とする仮の地位を定める仮処分命令を求めることなどを検討することが考えられるであろうが、前者であれば、そのような権利が存在することを説得的に論ずることが求められるし、後者であれば、仮処分が認められてしまうと本案の対象となる株主総会決議が存在しないこととなり、そのような方法が許容されるのかも含めて説得的に論ずることが求められることとなる。
⑵ 小問2について
小問2においては、本件決議1について株主総会決議の取消しの訴えを提起したEの立場において考えられる主張をどのように構成するのかが問われている。具体的には、本件臨時株主総会1を招集した少数株主である乙社が自らの提案する議案に賛成した株主には商品券を贈呈する旨の本件書面を株主に交付したことなどを踏まえ、本件決議1が会社法
第831条第1項各号に掲げる場合のいずれに該当するのかを明示して、株主総会決議取消事由の有無を検討することが求められる。
まず、Eとしては、乙社の行為が「株主の権利の行使に関し、財産上の利益を供与」するものに該当し(会社法第120条第1項)、株主総会の招集の手続又は決議の方法が法令に違反するものであった(会社法第831条第1項第1号)と主張することが考えられる。もっとも、会社法第120条第1項は、「株式会社」による「当該株式会社又はその子会社の計算においてする」利益供与を禁止しており、少数株主が自らの負担によって行う行為を直接の対象とはしていない。まずは、そのことを指摘した上で、少数株主の行為に同項を適用又は類推適用することの可否を検討することが必要となる。この点については、例えば、同項は、会社財産の浪費を防止するものであり、株主によって意思決定がされるべき株式会社が株主の議決権の行使に影響を与えることを禁ずるものであると考えるのであれば、少数株主が、自らの負担によって商品券を贈与することにより、他の株主の議決権の行使に影響を与えることには問題はないということとなり、同項の適用又は類推適用を否定することになろう。これに対し、同項は、株式会社の公正な運営を確保するものであると考えるのであれば、株式会社による利益供与だけでなく株主総会を招集する少数株主による利益供与も株式会社の公正な運営を害し得ること、また、そのような問題は当該株式会社等の計算においてされたものであるか否かを問わずに生じ得ることなどを指摘し、同項の適用又は類推適用を肯定することもあり得る。
次に、Eとしては、前記の点に加えて、株主総会の招集の手続又は決議の方法が「著しく不公正」であった(会社法第831条第1項第1号)と主張することが考えられる。この点については、株主による議決権の行使が株主として株式会社から受ける経済的な利益とは異なる要因によって左右されるような状況で行われた株主総会決議が「著しく不公正」
であったといい得ることを指摘した上で、本問の事実関係の下で具体的な検討をすることが考えられる。前者については、前記のような状況で行われた株主総会決議が「著しく不公正」であったといい得る理論的な根拠を自分なりに考察することが求められる。また、後者については、例えば、乙社が提案する議案に賛成した株主にのみ商品券が贈呈されること、乙社には当該議案を可決させることに強い利害関係があると認められること、例年の定時株主総会における結果との比較から乙社による商品券の贈呈が株主の議決権の行使に影響を与えた可能性が高いことなどを指摘した上で、「著しく不公正」であったといえるとすることも考えられるであろうし、商品券の額が少額であること、乙社が提案する議案に反対する議決権の行使をすることが殊更妨害されたわけではないこと、甲社の業績悪化や筆頭株主である乙社との間で対立が生じているという点で例年とは状況が異なり、例年の定時株主総会における結果との比較は重要ではないことなどを指摘した上で、「著しく不公正」であったとまではいえないとすることも考えられるであろう。また、そもそも、株主総会を招集する少数株主であっても、株式会社ではない以上、自らの資金で他の株主の議決権の行使に影響を与えることとなったとしても「著しく不公正」とはいえないとの考え方を採用し、その理論的な根拠を自分なりに考察するということも考えられるであろう。なお、株主総会の招集の手続又は決議の方法が「著しく不公正」な場合には、決議への影響の有無にかかわらず、裁量棄却の対象にはならない(会社法第831条第2項参照)。
3 設問2について
⑴ 設問2は、発行済株式の総数の3分の1に相当する200株を保有する丙社から再建のための支援を受けていた甲社が、再建のめどがついてきた頃から丙社との間で見解の相違がみられるようになったことなどから、丙社との間の資本関係を断つために本件株式併合とそれに続く本件株式分割及び募集株式の第三者割当てを計画したという事例において、締め出される丙社の立場から、本件株式併合の効力を争うために採ることができる会社法上の手段に関し、その立場において考えられる主張及びその主張の当否の検討を求めるものである。
⑵ まず、株式併合の効力を争うための会社法上の手段については、会社の組織に関する行為の無効の訴え(会社法第828条)の対象となっていないことから、このような訴えを提起するのではなく、株式併合をするための株主総会決議(会社法第180条第2項)の効力を否定することにより、株式併合が無効となることを主張することが考えられる。そして、株主総会決議の効力を否定するための会社法上の手段としては、①特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされたとして、株主総会決議の取消しの訴えを提起すること(会社法第831条第1項第3号)、②決議の内容が法令に違反することを理由として株主総会決議の無効の確認の訴えを提起すること(会社法
第830条第2項)等が考えられる(なお、①の場合には、丙社が本件決議2の取消しによって株主となる者に該当すること(会社法第831条第1項後段)についても言及することができると、なお望ましい。)。会社の組織に関する行為の無効の訴えに関する会社法
第828条の規定を類推適用するということも考えられるであろう。いずれにしても、株式併合に関する会社法の規定を正しく理解した上で、その効力を争うための会社法上の手段を検討することが求められる。
⑶ 次に、前記の各手段のうち、前記⑵①の手段による場合であれば、A又はCが特別の利害関係を有する者であることや「著しく不当な決議」がされたといえるか否かが問題となるし、前記⑵②の手段による場合であれば、「決議の内容が法令に違反する」といえるか否かが問題となる。まず、どのような場合に「著しく不当な決議」又は「決議の内容が法令に違反する」といえるのかについて、自分なりの基準を立てる必要があり、なぜそのような基準を採用するのかについても、理論的な根拠を自分なりに考察する必要がある。また、「決議の内容が法令に違反する」といえるか否かを検討する場合においては、法令違反の根拠についても触れる必要があり、この点については、例えば、いわゆる株主平等原則に違反すること(会社法第109条第1項)、権利の濫用に該当すること(民法第1条第3項)
などを指摘することが考えられるであろう。
その上で、本問の事実関係全体(例えば、丙社の案もAらの案も、甲社の企業価値との関係では、客観的にいずれか一方が他方よりも優れているとは言い難く、見解の分かれる問題であったことや、本件株式併合により1株に満たない端数となる株式の買取価格が公正な価格と認められるものであったことなど)について、多面的に、かつ、適切に評価するなどして、「著しく不当な決議」又は「決議の内容が法令に違反する」といえるか否かについての結論を示す必要がある。
本問は、会社法に明文の規定がない問題を素材に思考力を問うものであり、本件株式併合の効力を否定する方向、肯定する方向のいずれであっても構わない。例えば、会社法上の公開会社でない株式会社においては、少数株主の有する利益は当該株式の金銭的価値に尽きず、それを保護する必要があるから、株式併合には正当な事業目的が要求されるという一般論を採りつつ、本問の事実関係の下では、正当な事業目的を欠くため本件株式併合の効力を否定する方向で検討することも、正当な事業目的が認められるため本件株式併合の効力を肯定する方向で検討することも考えられるであろう。また、会社法上、株式併合の目的は制限されていないことなどから、特定の少数株主を締め出すために行われた株式併合も許容されるとして、本件株式併合の効力を肯定することも考えられるであろうが、いずれの立場であっても、説得的に論ずることが求められる。なお、本問では、本件株式併合の効力を争う丙社の立場において考えられる主張及びその主張の当否を検討することが求められるものであることから、最終的に本件株式併合の効力を肯定するとしても、それを否定する立場からの立論とその当否について検討する姿勢が求められる。
参考答案AI生成(出題の趣旨と論証集をもとに作成した目安です)
第1 設問1
1 小問1
(1) Dは甲社の株式を保有していない(本文1)から、株主として採りうる手段はなく、監査役としての権限によることになる。Dが本件臨時株主総会1の開催をやめるよう求める会社法上の手段として考えられるのは、監査役の違法行為差止請求権(385条1項)である。同項は、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、監査役は、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができるとする。
(2) しかし、本件臨時株主総会1は、乙社が、取締役に対する招集請求(297条1項)に甲社が応じなかったため、裁判所の許可を得て自ら招集したものである(同条4項、本文2・3)。すなわち、招集行為の主体は少数株主である乙社であって取締役ではない。385条1項は「取締役」の行為を対象とするものであるから、乙社による株主総会の招集にこれを直接適用することはできない。
(3) そこで、同項を類推適用して、監査役Dが乙社に対し開催の差止めを請求することができないかが問題となる。
ア 否定する考え方は、監査役の職務は取締役の職務の執行の監査(381条1項)であって株主の行為は監査の対象ではないこと、少数株主は会社の機関ではなく取締役と立場を異にすること、少数株主による違法な招集については事後的に決議取消しの訴え(831条1項)によって是正すれば足り、差し止められないことになってもやむを得ないことを論拠とする。
イ しかし、裁判所の許可を得て株主総会を招集する少数株主は、自己の利益のためではなく、会社のために株主総会を招集する権限を付与されたものであり、この限りにおいて会社の機関である取締役に準ずる地位にあり、取締役と同様、適法に株主総会を招集・運営する義務を負うと解される。そして、385条1項の趣旨は、会社に著しい損害が生ずる前に違法行為を未然に防止することにより、監査役による適法性監査の実効性を確保する点にある。少数株主が招集する株主総会について法令違反があり、これによって会社に著しい損害が生ずるおそれがある場合に、監査役が何らの手段も採り得ないとすれば、適法性監査の任務を全うすることができない。したがって、少数株主が招集する株主総会の開催に法令違反がある場合には、385条1項を類推適用し、監査役は当該少数株主に対して開催の差止めを請求することができると解する。
ウ もっとも、類推適用の要件として、法令違反に加え、会社に「著しい損害が生ずるおそれ」があることを要する。本件各議題は、取締役3名及び監査役3名の全員の解任並びに新たな取締役及び監査役の選任を内容とするものであり(本文2)、違法な手続によりこれらの決議がされれば、甲社の経営体制の全面的な交代が生じ、その有効性をめぐる紛争により会社運営に重大な混乱が生ずることが予想される。よって、著しい損害が生ずるおそれは認められる。なお、D自身も解任の対象であるが(本文2)、差止請求は監査役の職務として会社の利益のために行うものであり、D個人の地位の保全を目的とするものではないことに留意すべきである。
(4) また、株主総会の開催日(令和3年10月20日)は間近であり、本案訴訟によっては目的を達し得ないから、Dとしては、385条1項に基づく差止請求権を被保全権利として、仮の地位を定める仮処分命令(民事保全法23条2項)の申立てをすることになる。監査役が差止請求権を行使する場合には担保を立てることを要しない(385条2項)。なお、監査役の乙社に対する妨害排除請求権を被保全権利とする構成も考えられるが、そのような権利の存在を基礎付けることは困難である。また、株主総会決議取消しの訴えを本案とする開催禁止の仮処分も考えられるが、仮処分により決議がされなければ本案の対象となる決議が存在しないこととなるため、この構成にも困難がある。
(5) 以上から、弁護士は、Dに対し、385条1項の直接適用は困難であるが、同項の類推適用により乙社に対し本件臨時株主総会1の開催の差止めを請求し、これを被保全権利とする仮処分命令の申立てをするという手段があること、ただし類推適用の可否については見解が分かれ、裁判所が否定する可能性もあることを回答すべきである。
2 小問2
(1) 訴訟要件
Eは甲社の株主であるから、株主総会決議取消しの訴えの原告適格を有する(831条1項柱書)。提訴期間は本件決議1の日(令和3年10月20日)から3か月以内であり、上記5の時点(同年11月15日)であれば提訴可能である。被告は甲社である(834条17号)。
(2) Eの主張1:利益供与(120条1項)による招集手続・決議方法の法令違反(831条1項1号)
ア Eは、乙社が招集通知に同封した本件書面により、乙社提案の各議案に賛成した株主に商品券を贈呈する旨を告知し、現にこれを送付したこと(本文3・5)は、「株主の権利の行使に関し」「財産上の利益の供与」をするものであり、120条1項に違反するから、本件決議1は招集手続又は決議方法が法令に違反すると主張することが考えられる。
イ しかし、120条1項は、「株式会社」が「当該株式会社又はその子会社の計算において」利益を供与することを禁止するものである。本件では、商品券の取得・送付に要した費用は全て乙社が負担しており(本文5)、甲社の計算においてされたものではない。したがって、乙社の行為に同項を直接適用することはできない。
ウ そこで類推適用の可否が問題となる。120条1項の趣旨を、会社財産の浪費を防止するとともに、株主によって意思決定がされるべき会社自身が株主の議決権行使に影響を与えることを禁じる点にあると解するならば、株主が自らの負担で他の株主に働きかけることは、会社財産を害するものではなく、株主間の勧誘活動の一環として許容されることになり、類推適用は否定される。これに対し、同項の趣旨を会社運営の公正を確保する点にあると解すれば、株主総会を招集する少数株主による利益供与も会社運営の公正を害しうるとして、類推適用を肯定する余地がある。思うに、同項は、違反に対して供与を受けた者の返還義務(同条3項)、取締役の責任(同条4項)及び刑罰(970条)を伴う規定であり、「株式会社」が「その計算において」する供与という文言上の限定は、会社財産の浪費防止という趣旨に基づく本質的な要件である。株主による自己負担の勧誘行為にまでこれを拡張することは、規定の予定しないところである。よって、類推適用は否定され、Eの主張1は認められない。
(3) Eの主張2:決議方法が著しく不公正であること(831条1項1号)
ア Eは、仮に法令違反に当たらないとしても、本件決議1は、議案への賛成を条件として商品券が贈呈されるという状況の下でされたものであり、決議の方法が著しく不公正であると主張することが考えられる。
イ 株主総会は、株主が会社の構成員として、会社ひいては株主全体の利益の観点から議決権を行使することにより意思決定を行う機関である。したがって、株主の議決権行使が、株主として会社から受ける経済的利益とは異なる要因によって左右されるような状況が作出され、その影響の下で決議がされた場合には、株主総会における意思形成の公正が害されたものとして、決議の方法が「著しく不公正」であるといえると解する。
ウ 本件では、本件書面は、乙社提案の全議案に賛成した株主にのみ1000円相当の商品券を贈呈するとし、全議案について「賛」に○印を付けて返送するよう求めるものであり(本文3)、賛成という特定の内容の議決権行使と直接結びついた利益の提供である。乙社は、20%を保有する筆頭株主として現経営陣の全員解任と自己の推す者の選任を実現することに強い利害関係を有していた(本文1・2)。そして、本件臨時株主総会1では、出席議決権数が例年の定時株主総会よりも約30%増加し、賛成割合も例年の会社提案議案への賛成割合より高く、白票も存在しなかった(本文4)のであるから、商品券の贈呈が株主の議決権行使に現実に影響を与えた可能性が高い。出席議決権の約75%という賛成には乙社自身の議決権が含まれるものの、乙社以外の多数の株主が賛成したことになり、甲社では過去に議決権行使を条件とする商品券等の提供がされたことはなく(本文3)、本件の投票行動の変化は本件書面によるものと推認される。
エ これに対しては、商品券は1000円相当と少額であること、反対の議決権行使が殊更に妨げられたわけではないこと、業績悪化と筆頭株主との対立という例年と異なる状況の下では出席率や賛成率の上昇は自然であり例年との比較は重要でないこと、乙社は会社ではなく自らの資金で他の株主に働きかけたにすぎないことを指摘して、著しく不公正とはいえないとの反論が考えられる。しかし、全議案への賛成を条件とする利益の提供は、金額の多寡を問わず、議案の内容とは無関係に賛成を誘導する性質を有するものであり、特に1000名の株主を擁し個人株主の保有株式数が少ない甲社(本文1)においては、1000円という少額であっても投票行動を左右するに十分である。また、反対が妨げられていないとしても、賛成が不当に誘導されていること自体が意思形成の公正を害する。さらに、乙社は裁判所の許可を得て会社のために株主総会を招集する立場にある以上、自らの資金によるものであっても、議決権行使の対価を提供して総会の意思形成を歪めることは許されない。
オ よって、本件決議1は、決議の方法が著しく不公正な場合に当たり、取消事由がある。
(4) 裁量棄却の可否
831条2項は、招集手続又は決議方法が法令又は定款に違反する場合について、違反が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさないと認めるときに裁量棄却を認めるものであり、著しく不公正な場合はその対象ではない。したがって、本件決議1について裁量棄却の余地はない。
(5) 以上から、Eの主張のうち、120条1項違反の主張は認められないが、決議方法の著しい不公正の主張は認められ、本件決議1は取り消される。
第2 設問2
1 採りうる会社法上の手段
(1) 株式の併合は、会社の組織に関する行為の無効の訴え(828条1項)の対象とされていない。これは、株式併合が株主総会の特別決議(180条2項、309条2項4号)を要件とする行為であり、その効力は決議の効力を争うことによって否定しうるとされたことによる。したがって、828条の類推適用は認められず、丙社としては、本件決議2の効力を否定することにより、本件株式併合が無効であることを主張すべきである。なお、株式併合の差止請求(182条の3)は効力発生前の手段であり、上記13の時点では採り得ない。また、反対株主の株式買取請求(182条の4)は価格に関する救済であって効力を争う手段ではない。
(2) 具体的には、①特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされたとして、本件決議2の取消しの訴えを提起すること(831条1項3号)、②本件決議2の内容が法令に違反するとして、決議無効確認の訴えを提起すること(830条2項)が考えられる。なお、本件臨時株主総会2は適法な招集手続を経て全株主が出席し、Aが本件株式併合を必要とする理由を説明している(180条4項、本文12)から、招集手続・決議方法の法令違反(831条1項1号)を主張する余地はない。
(3) ①については、丙社は、本件株式併合により1株に満たない端数となり株主の地位を失うが、本件決議2が取り消されれば株主の地位を回復するから、「当該決議の取消しにより株主となる者」として原告適格を有する(831条1項後段)。提訴期間は本件決議2の日(令和5年12月11日)から3か月以内である。②については、確認の利益を有する限り提訴期間の制限なく提起しうる。
2 主張1:831条1項3号による取消し
(1) 特別の利害関係
「特別の利害関係を有する者」とは、当該決議によって、他の株主と共通しない特別の利益を得、又は不利益を免れる者をいう。本件臨時株主総会2の時点では、Bは令和5年11月6日に保有株式100株全てをAに譲渡しており(本文10。株主間の譲渡は定款により承認されたものとみなされる。本文6)、株主はA(300株)、C(100株)及び丙社(200株)であって、本件決議2に賛成したのはA及びCである。本件株式併合は、300株を1株とするものであり、300株を保有するAのみが端数とならずに株主として残り、丙社とCは端数となる。しかし、本件計画によれば、その後の株式分割と自己株式の第三者割当てにより、B及びCは100株ずつを取り戻し、最終的にA、B及びCが従前と同数の株式を保有して甲社の全株式を保有することとなる(本文11)。A及びCは、本件決議2により丙社の持分を排除して自らの支配を確立するという、他の株主と共通しない特別の利益を受ける者であり、特別の利害関係を有する。
(2) 著しく不当な決議
ア 「著しく不当な決議」とは、当該決議が、会社ないし株主共同の利益を害し、特別利害関係人の利益のみを図るものである場合をいう。会社法は、株式併合の目的を制限しておらず、端数処理による少数株主の締め出しを許容している(235条、182条の4・182条の5)から、締め出しを目的とする株式併合も直ちに不当とはいえない。しかし、公開会社でない株式会社においては、少数株主の有する利益は株式の金銭的価値に尽きるものではなく、会社経営に関与する利益も含まれるから、少数株主を締め出す株式併合には、正当な事業目的が必要であり、これを欠く場合には著しく不当な決議に当たると解する。
イ 丙社の立場からは、次のように主張することが考えられる。すなわち、本件計画は、Bが事前にAに株式を譲渡してAの保有株式数を300株とした上で併合比率を300株1株と設定し、Cも一旦端数となるが第三者割当てにより回復させるという、丙社のみを締め出すことを目的として設計されたものであり(本文10・11)、取締役Fも特定の株主の狙い撃ちは許されないとして反対していた(本文11)。丙社は、Fの派遣や取引先の紹介により甲社の再建に協力した株主であり(本文7)、Gが総会で述べたとおり「金額の問題ではなく、信義の問題」である(本文12)。また、Aらの案と丙社の案とは企業価値との関係で優劣がつけ難いものであり、Bも当初はGの案に理解を示していたのであって(本文10)、Aが「我々経営陣が退くのでなければ、最終的には退出していただくほかない」と述べたこと(本文12)は、本件株式併合がAらの経営陣としての地位を維持するための保身目的によるものであることを示している。よって、正当な事業目的を欠く。
ウ しかし、本件では、丙社は、甲社の再建にめどがついた後、甲社と競合関係にある丁社の再建に注力し、Fを通じて甲社の技術やライセンスを丁社に提供することを求め、Gは甲社の生産を丁社に任せる業務提携を提案し、さらに甲社を丙社の完全子会社とした上で丁社と合併させることを考えていた(本文8・9)。Aらは、競合会社である丁社のために経営に介入されることを防ぎ、甲社の独立を維持するために本件計画を決定したものであり(本文10)、本件臨時株主総会2においてもその理由が丙社の提案の経緯とともに説明されている(本文12)。丙社の案とAらの案とは、甲社の企業価値との関係で客観的にいずれが優れているとはいい難い見解の分かれる問題であった(本文10)のであるから、Aらの案が甲社の利益に反するものとはいえず、競合会社の利益のために介入するおそれのある株主との経営方針の深刻な対立を解消して会社の意思決定を円滑にするために、その株主との資本関係を解消することは、会社の事業目的として正当性を有する。丙社のみが締め出される設計であることは、まさに対立の相手方との資本関係の解消という目的に対応したものであり、それ自体が目的の不当性を示すものではない。また、端数となる株式の買取価格は、専門家の株式価値算定書に基づくものであり、公正な価格と認められる(本文11・12)から、丙社の経済的利益は確保されている。本件計画は取締役会の適法な決議を経ており、通知・書面備置等の手続も全て適法に行われた(本文11・13)。Aの前記発言は、経営方針の相違が解消されない以上、いずれかが退くほかないとの認識を示したものであり、直ちに保身目的を示すものとはいえない。
エ よって、本件決議2は、正当な事業目的に基づくものであり、著しく不当な決議とはいえない。
(3) したがって、主張1は認められない。
3 主張2:830条2項による無効確認
(1) 丙社は、本件決議2は、丙社のみを狙い撃ちにして締め出すものであり、株主平等原則(109条1項)に違反し、又は多数決の濫用として権利濫用(民法1条3項)に当たり、決議の内容が法令に違反すると主張することが考えられる。
(2) しかし、本件株式併合は、全ての株主の株式について一律に300株を1株とするものであり、株式の数に応じた平等な取扱いという109条1項の形式的要件を満たしている。端数が生ずる株主が丙社とCであり、株主として残るのがAのみであるのは、各株主の保有株式数の差によるものであり、会社法はそのような結果を端数処理の規律によって容認している。実質的にみても、前記2(2)のとおり、本件株式併合には正当な事業目的があり、公正な価格による買取りが保証されているから、丙社を不当に差別するものとはいえない。また、多数決の濫用として権利濫用に当たるといえるのは、多数株主が専ら自己の利益を図り少数株主に著しい不利益を与える場合であるところ、本件ではこれに当たらない。
(3) したがって、本件決議2の内容が法令に違反するとはいえず、主張2も認められない。
4 結論
丙社は、本件決議2の取消しの訴え(831条1項3号)又は無効確認の訴え(830条2項)を提起して本件株式併合の効力を争うことができるが、本件の事実関係の下では、いずれの主張も認められず、本件株式併合の効力は否定されない。丙社としては、反対株主の株式買取請求(182条の4)により公正な価格での買取りを受けるにとどまる。
以上