司法試験 平成28年 行政法
問題文
[公法系科目]〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕,〔設問2〕,〔設問3〕,〔設問4〕の配点割合は,25:30:30:15〕)
株式会社Aは,Y1市において,旧来の銭湯に比して規模の大きな日帰り入浴施設である,いわゆるスーパー銭湯(以下「本件スーパー銭湯」という。)を建築して開業することを計画した。本件スーパー銭湯及びこれに附属する自動車車庫(以下「本件自動車車庫」という。 )の建築予定地である一団の敷地(以下「本件敷地」という。)は,都市計画に第一種低層住居専用地域として定められた地域にある。
Aは,平成28年3月20日,近隣住民に対する説明会において,本件スーパー銭湯の建築計画について,大略,以下のとおり,説明した。
「本件スーパー銭湯は,地上2階建て,延べ床面積約1490平方メートルであり,本件自動車車庫は,1層2段の自走式自動車車庫であり,その収容台数は130台で床面積は約1500平方メートルである。本件スーパー銭湯及び本件自動車車庫の建築予定地である本件敷地の面積は約4150平方メートルである。また,本件スーパー銭湯は,白湯,泡風呂,露天風呂等の各種浴場,サウナ風呂,各種自販機コーナー,休憩コーナー,マッサージコーナーがあるほか,軽食と生ビールが提供される飲食コーナー及び小規模な厨房施設(飲食コーナー及び厨房施設の床面積の合計は約50平方メートル)を備え,年中無休,午前10時から午後12時までの営業で,広範囲の地域から顧客が自動車で来店することを予定しており,来客予想人数は,土日休日は1日当たり約1500人である。」
ところで,本件自動車車庫の床面積は600平方メートルを超え,建築基準法(以下「法」という。)第48条第1項,別表第二(い)項第10号及び建築基準法施行令第130条の5第1号により,第一種低層住居専用地域では原則として建築することができないため,Aがこれを適法に建築するためには, 法第48条第1項ただし書に基づき, 特定行政庁であるY1市長の許可(以下 「例外許可」という。)を得る必要がある。そこで,Aは,同年4月5日,Y1市長に対し,本件自動車車庫の建築について,法第48条第1項ただし書に基づき例外許可の申請をした。
Y1市長は,例外許可の申請を受けて,同年5月6日,利害関係人らの意見を聴取するため,法第48条第14項の定める公開による意見の聴取(以下「公聴会」という。 )を開催した。公聴会には,本件スーパー銭湯の周辺に居住する5名の住民(以下「Xら」という。 )が,利害関係人として出席した。Xらのうち,X1ら2名(以下「X1ら」という。)は,本件自動車車庫に隣接し,本件自動車車庫から直線距離で約6メートル離れた位置の建物に居住している住民であり,X2ら3名(以下「X2ら」という。)は,本件敷地から約45メートル離れた位置で,かつ,幹線道路から本件自動車車庫に通ずる道路沿いの建物に居住する住民である。公聴会において,X1らは,本件自動車車庫に出入りする多数の自動車のエンジン音,ドアの開閉音などの騒音,ライトグレア(注:光のまぶしさにより物が見えにくくなったり,一過性の盲目状態になったりするような現象)
及び排気ガスにより居住環境が悪化し,交通事故が多発するおそれがあることが明白である旨,X2らは,本件自動車車庫に出入りする多数の自動車の通行による騒音及び排気ガスにより居住環境が悪化し,交通事故が多発するおそれがあることが明白である旨の意見を陳述した。
また,Y1市長は,例外許可の申請を受けて,Y1市建築審査会に対し,法第48条第14項本文の定める同意について諮問した。Y1市建築審査会における議決の成立には,出席委員の過半数の賛成を要するところ,Y1市建築審査会は,同年5月30日,審理の上,出席委員7名のうち5名の委員の賛成をもって,Y1市長が例外許可をすることについて,同意(以下「本件同意」という。)をした。
後日,Y1市建築審査会の本件同意に係る議決には,Aの代表取締役の実弟Bが委員として加わり,賛成票を投じていたことが明らかになったが,本来,Bは,Y1市建築審査会の議事から除斥されるべき者であった(法第82条)。しかし,Y1市建築審査会は,Bを除外してもなお議決の成立に必要な過半数の委員の賛成があるとして,本件同意に係る議決をやり直すことなく,そのまま維持した。
Y1市長は,同年6月8日,Y1市建築審査会による本件同意を受けて,本件自動車車庫の建築について,法第48条第1項ただし書の「第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがない」と認め,例外許可(以下「本件例外許可」という。)をした。Y1市には,例外許可の基準として「建築基準法第48条ただし書許可に関する要綱」(【資料2】。以下「本件要綱」という。)がある。
例外許可については, 申請者以外の者に通知することは予定されていないが, Xらは, 遅くとも,同年6月末日までに本件例外許可がされたことを知った。 そこで, Xらは, Xらが居住する地域は,都市計画法上の第一種低層住居専用地域であり,良好な住居の環境の保護に対する要請が最も強い地域であることを考慮すれば,良好な住居の環境を著しく害するおそれのある本件スーパー銭湯の建築は到底許されないはずであるとして,本件スーパー銭湯の建築を阻止したいと考えた。
他方,Aは,同年9月14日,指定確認検査機関(注:国土交通大臣又は都道府県知事の指定を受けて建築確認をする民間の機関)Y2に対し,本件スーパー銭湯及び本件自動車車庫を一体として,法第6条の2第1項に基づく建築確認の申請をした。これに対し,Y2は,法別表第二(い)
項第7号によれば,本件スーパー銭湯は,第一種低層住居専用地域内に建築することができる建築物である「公衆浴場」に該当すると判断せざるを得ないとして,同年10月7日,本件スーパー銭湯及び本件自動車車庫を一体として, 建築基準関係規定に適合する旨の建築確認(以下 「本件確認」
という。)をした。
Xらは,本件スーパー銭湯の建築を阻止するため,代理人弁護士に委任することなく,平成29年1月17日,Y1市を被告として本件例外許可の取消しを求める訴え(以下「本件訴訟1」という。)を,Y2を被告として本件確認の取消しを求める訴え(以下「本件訴訟2」という。)をそれぞれ提起した。その後,Xらは,Y1市及びY2の各答弁書への反論を準備する過程で,今後の訴訟追行に不安を覚えたため,弁護士事務所に相談に訪れ,弁護士に本件訴訟1及び本件訴訟2の訴訟追行を委任した。
以下に示された【法律事務所の会議録】を読んだ上で,弁護士Cの指示に応じる弁護士Dの立場に立って,設問に答えなさい。
なお,建築基準法,都市計画法,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律,公衆浴場法及び建築基準法施行令の抜粋を【資料1 関係法令】 に,Y1市の建築基準法第48条ただし書許可に関する要綱(本件要綱)の抜粋を 【資料2 要綱(抜粋) 】に,それぞれ掲げてあるので,適宜参照しなさい。
〔設問1〕本件訴訟1(本件例外許可の取消訴訟)において,X1らとX2らのそれぞれの原告適格は認められるか。
〔設問2〕本件訴訟1(本件例外許可の取消訴訟) において, 本件例外許可は適法であると認められるか。
解答に当たっては,Xらによる本件例外許可の違法事由の主張として考えられるものを挙げて論じなさい。
〔設問3〕Xらは,本件訴訟2(本件確認の取消訴訟)において,〔設問2〕で挙げた本件例外許可の違法事由を主張することができるか。解答に当たっては,本件訴訟1及び本件訴訟2において,いずれもXらの原告適格が認められること,〔設問2〕で挙げた本件例外許可の違法事由が認められることを前提にしなさい。
〔設問4〕本件訴訟2(本件確認の取消訴訟)において,本件確認は適法であると認められるか。解答に当たっては,Xらによる本件確認の違法事由の主張として考えられるものを挙げて,論じなさい。
【法律事務所の会議録】弁護士C:本日は,Xらの案件について議論したいと思います。Xらは,代理人弁護士に委任することなく,自ら,Y1市を被告として本件訴訟1(本件例外許可の取消訴訟)を,Y2を被告として本件訴訟2(本件確認の取消訴訟)をそれぞれ提起したということですね。
弁護士D:はい。そうです。
弁護士C:それでは,本件訴訟1から検討していきましょう。本件訴訟1における本件例外許可の対象となっている本件自動車車庫について,「1層2段の自走式自動車車庫」とはどういうものですか。
弁護士D:1階建ての1階部分及び屋上部分を自動車の駐車場所として,両部分をスロープで連結させ,自動車で走行して駐車場所まで移動する方式の自動車車庫のことです。本件自動車車庫は,1階部分に屋根があり,柱が基礎に固定されているので,建築基準法上の「建築物」に当たることは間違いありませんが,屋上部分の外周に転落防止用の金属製の網状フェンスが設置されているのみで壁はないため,自動車の騒音,ライトグレア及び排気ガスを防ぐ構造にはなっていません。
弁護士C:そうすると,近隣住民の被る夜間の自動車の騒音,ライトグレア及び排気ガスによる被害は重大なものになりますね。
弁護士D:Xらもこの点を心配しています。
弁護士C:本件訴訟1の訴訟要件としては何が問題になりますか。
弁護士D:原告適格と出訴期間が問題になります。
まず,原告適格については,X1らは,本件自動車車庫に隣接して居住する者ですが,本件スーパー銭湯は,年中無休,午前10時から午後12時までの営業で,来場する自動車が多く,特に,土日休日は1日約550台にも及ぶため,自動車のエンジン音,ドアの開閉音などの騒音,ライトグレア及び排気ガスにより居住環境が悪化し,交通事故が多発するおそれがあると主張しています。また,X2らは,本件自動車車庫から若干離れたところに居住する者ですが,本件自動車車庫から幹線道路に通ずる道路沿いに居住していることから,多数の自動車の通行による騒音及び排気ガスにより居住環境が悪化し,交通事故が多発するおそれがあると主張しています。
弁護士C:X1ら及びX2らのそれぞれについて,本件訴訟1の原告適格を肯定することはできるのでしょうか。根拠法令及び関係法令を参照し,X1ら及びX2らの個別の事情を考慮しつつ検討してください。
弁護士D:分かりました。
弁護士C:Xらは,本件訴訟1については,本件例外許可を知った日から6か月を経過して訴えを提起したということですね。Xらが出訴期間を徒過したのは,どのような理由からですか。
弁護士D:Xらによれば,Y1市の担当職員に,例外許可の違法を争う方法を尋ねたところ,同職員から,例外許可の違法については,後続の建築確認の取消訴訟の中で主張すれば足りるとの説明を受けたということです。出訴期間の徒過については,行政事件訴訟法第14条第1項ただし書の「正当な理由」があると主張して争いたいと考えています。
弁護士C:そうですか。出訴期間の徒過につき「正当な理由」があるかどうかについては,既に検討済みということですから,本件訴訟1の訴訟要件の検討対象から外してください。
弁護士D:分かりました。
弁護士C:次に,Xらが,本件訴訟1において主張し得る本件例外許可の違法事由としては,どのようなものが考えられますか。
弁護士D:第1に,除斥事由のあるBが建築審査会の同意に係る議決に加わっていることから,手続上の瑕疵があるという主張が考えられます。第2に,Y1市長による本件例外許可については,裁量権の範囲の逸脱,濫用があったという主張が考えられます。
弁護士C:そうですね。第1については,除斥事由が定められた趣旨等を踏まえて検討してください。
第2については,本件要綱の法的性質を踏まえた上で,本件例外許可についてのY1市長の裁量権の内容,範囲を検討し,説得的な主張ができるようにしてください。
弁護士D:検討してみます。
弁護士C:次に,本件訴訟2についての検討に入りましょう。まず,本件訴訟2の原告適格についても問題となりますが,今回は,本件訴訟2については,Xらの原告適格が肯定されることを前提にして,他の問題点を先に検討することにしましょう。
弁護士D:分かりました。
弁護士C:ところで,本件例外許可の違法を主張したいということでしたが,本件訴訟2の中で,その違法を主張することはできるのでしょうか。
弁護士D:うーん。難しいところですね。本件例外許可の違法については,本件訴訟1において主張するのが本筋ですので,許されないような感じもしますが…。
弁護士C:Xらが,本件訴訟2の中で,本件例外許可の違法を主張することができるかという問題は,本件では重要な争点となりますので,この点については,できるだけ多角的な観点から検討してください。
弁護士D:分かりました。たしか,関連する最高裁判所の判例もあったと思いますので,併せて検討してみます。
弁護士C:次に,Xらの言い分の中から,本件確認の違法事由として,どのような主張を構成することができますか。
弁護士D:第1に,旧来の「銭湯」と本件スーパー銭湯とを同一のものと考えて行った本件確認は違法という主張ができるように思います。本件に関し,建築基準法別表第二(い)項第7号の「公衆浴場」が第一種低層住居専用地域内に建築することができる建築物とされた趣旨について調査したところ,「建築基準法が制定された昭和25年当時は,住宅に内風呂がない者が相当程度おり, 国民の健康, 公衆衛生を確保するため住居専用地域 (注:「住居専用地域」
とは当時の用途地域の区分であり, 現在の 「第一種低層住居専用地域」 を含む地域である。)
に公衆浴場を設けることが必要不可欠であった。」と説明されています。また,都市部において,住宅の浴室保有率が急増したのは昭和30年代からと言われ,住宅の浴室保有率は,統計を取り始めた昭和38年には59%であったのに対し,現在は95.5%となっています。
弁護士C:本件スーパー銭湯の入浴料金は,どうなっていますか。
弁護士D:公衆浴場法の適用を受ける「公衆浴場」については,Y1市の属する県の公衆浴場法施行条例で「一般公衆浴場」と「その他の公衆浴場」に区分されており,「一般公衆浴場」とは,公衆浴場法第1条第1項に規定する公衆浴場であって,その利用の目的及び形態が地域住民の日常生活において保健衛生上必要な施設として利用されるものとして,物価統制令の規定に基づき入浴料金が定められているものをいい,「その他の公衆浴場」 とは,「一般公衆浴場」
以外の公衆浴場をいいます。旧来の「銭湯」は,「一般公衆浴場」に当たり,物価統制令に基づく価格統制の対象となっていますが,スーパー銭湯は「その他の公衆浴場」に当たり,価格統制の対象外となっています。Y1市の属する県の告示により,「一般公衆浴場」の入浴料金の統制額(上限金額)は,「大人(12歳以上)につき,400円」等と定められています。これに対し,本件スーパー銭湯の入浴料金は「大人(12歳以上)につき,平日600円,土日祝日700円」等となっています。
弁護士C:本件スーパー銭湯が「一般公衆浴場」と実態が異なるということは分かりました。これに加えて,本件スーパー銭湯には,飲食コーナー及び厨房があるということですね。この飲食店部分についても,建築基準法別表第二(い)項第7号の「公衆浴場」に当たると考えてよいのでしょうか。第一種低層住居専用地域に建築することができる建築物にはどのようなものがあるかをよく確認した上で,本件スーパー銭湯の建築は到底許されないというXらの言い分について,法律解釈としてどのように主張を構成することができるかについて,検討してください。
弁護士D:分かりました。
弁護士C:ところで,Xらから受任してから速やかに,本件確認の効力を停止する執行停止の申立てをしたということですね。
弁護士D:そうです。建築基準法第6条第1項による確認を受けた建築物の工事が完了したときは,その確認の取消しを求める訴えの利益は失われるというのが最高裁判所の判例ですから,本件訴訟2の係属中に訴えの利益が失われることのないように,速やかに執行停止の申立てをしておきました。
弁護士C:執行停止の件については,既に検討済みとのことですので,今回は,執行停止以外の問題点について検討してください。
弁護士D:分かりました。
【資料1 関係法令】
○ 建築基準法(昭和25年5月24日法律第201号) (抜粋)
(目的)
第1条 この法律は, 建築物の敷地, 構造, 設備及び用途に関する最低の基準を定めて, 国民の生命,健康及び財産の保護を図り,もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第6条 建築主は,第1号から第3号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(括弧内略) ,これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第4号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては,当該工事に着手する前に,その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。 )その他建築物の敷地,構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて,確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け,確認済証の交付を受けなければならない。(以下略)
一~四 (略)
2・3 (略)
4 建築主事は,第1項の申請書を受理した場合においては,同項第1号から第3号までに係るものにあつてはその受理した日から35日以内に,同項第4号に係るものにあつてはその受理した日から7日以内に,申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し,審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは,当該申請者に確認済証を交付しなければならない。
5~9 (略)
(国土交通大臣等の指定を受けた者による確認)
第6条の2 前条第1項各号に掲げる建築物の計画(前条第3項各号のいずれかに該当するものを除く。)が建築基準関係規定に適合するものであることについて,第77条の18から第77条の21までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者〔注: 「指定確認検査機関」を指す。〕の確認を受け,国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは,当該確認は前条第1項の規定による確認と,当該確認済証は同項の確認済証とみなす。
2~7 (略)
(用途地域等)
第48条 第一種低層住居専用地域内においては, 別表第二 (い) 項に掲げる建築物以外の建築物は,建築してはならない。ただし,特定行政庁が第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め,又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては,この限りでない。
2~13 (略)
14 特定行政庁は,前各項のただし書の規定による許可をする場合においては,あらかじめ,その許可に利害関係を有する者の出頭を求めて公開による意見の聴取を行い,かつ,建築審査会の同意を得なければならない。ただし,前各項のただし書の規定による許可を受けた建築物の増築,改築又は移転(これらのうち,政令で定める場合に限る。)について許可をする場合においては,この限りでない。
15 特定行政庁は,前項の規定による意見の聴取を行う場合においては,その許可しようとする建築物の建築の計画並びに意見の聴取の期日及び場所を期日の3日前までに公告しなければならない。
(建築審査会)
第78条 この法律に規定する同意及び第94条第1項の審査請求に対する裁決についての議決を行わせるとともに,特定行政庁の諮問に応じて,この法律の施行に関する重要事項を調査審議させるために,建築主事を置く市町村及び都道府県に,建築審査会を置く。
2 建築審査会は,前項に規定する事務を行う外,この法律の施行に関する事項について,関係行政機関に対し建議することができる。
(建築審査会の組織)
第79条 建築審査会は,委員5人以上をもつて組織する。
2 委員は,法律,経済,建築,都市計画,公衆衛生又は行政に関しすぐれた経験と知識を有し,公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者のうちから,市町村長又は都道府県知事が任命する。
(委員の除斥)
第82条 委員は,自己又は3親等以内の親族の利害に関係のある事件については,この法律に規定する同意又は第94条第1項の審査請求に対する裁決に関する議事に加わることができない。
別表第二 用途地域等内の建築物の制限(第27条,第48条,第68条の3関係)
(い) 第一種低層住居専用地域内に建築することができる建築物一住 宅二 住宅で事務所,店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの三 共同住宅,寄宿舎又は下宿四 学校(大学,高等専門学校,専修学校及び各種学校を除く。 ),図書館その他これに類するもの五 神社,寺院,教会その他これらに類するもの六 老人ホーム,保育所,福祉ホームその他これらに類するもの七 公衆浴場 (風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)
第2条第6項第1号に該当する営業(以下この表において「個室付浴場業」という。 )に係るものを除く。)
八 診療所九 巡査派出所,公衆電話所その他これらに類する政令で定める公益上必要な建築物十 前各号の建築物に附属するもの(政令で定めるものを除く。 )
〔注:別表第二(い)項中の「政令」とは,後記「建築基準法施行令」を指す。〕(ろ)~(わ) (略)
○ 都市計画法(昭和43年6月15日法律第100号) (抜粋)
(目的)
第1条 この法律は,都市計画の内容及びその決定手続,都市計画制限,都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより,都市の健全な発展と秩序ある整備を図り,もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
(地域地区)
第8条 都市計画区域については,都市計画に,次に掲げる地域,地区又は街区を定めることができる。
一 第一種低層住居専用地域,第二種低層住居専用地域,第一種中高層住居専用地域,第二種中高層住居専用地域,第一種住居地域,第二種住居地域,準住居地域,近隣商業地域,商業地域,準工業地域,工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)
二~十六 (略)
2 (略)
3 地域地区については, 都市計画に,第1号及び第2号に掲げる事項を定めるものとするとともに,第3号に掲げる事項を定めるよう努めるものとする。
一 地域地区の種類(特別用途地区にあつては,その指定により実現を図るべき特別の目的を明らかにした特別用途地区の種類),位置及び区域二 次に掲げる地域地区については,それぞれ次に定める事項イ 用途地域 建築基準法第52条第1項第1号から第4号までに規定する建築物の容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。)並びに同法第53条の2第1項及び第2項に規定する建築物の敷地面積の最低限度(建築物の敷地面積の最低限度にあつては,当該地域における市街地の環境を確保するため必要な場合に限る。)
ロ 第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域 建築基準法第53条第1項第1号に規定する建築物の建ぺい率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。以下同じ。),同法第54条に規定する外壁の後退距離の限度(低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため必要な場合に限る。)及び同法第55条第1項に規定する建築物の高さの限度ハ~リ (略)
三 (略)
4 (略)
第9条 第一種低層住居専用地域は,低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。
2~22 (略)
第10条 地域地区内における建築物その他の工作物に関する制限については,この法律に特に定めるもののほか,別に法律で定める。
○ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 (昭和23年7月10日法律第122号)(抜粋)
(用語の意義)
第2条1~5 (略)
6 この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは,次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一 浴場業(公衆浴場法(昭和23年法律第139号)第1条第1項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け,当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業二~六 (略)
7~11 (略)
○ 公衆浴場法(昭和23年7月12日法律第139号) (抜粋)
第1条 この法律で「公衆浴場」とは,温湯,潮湯又は温泉その他を使用して,公衆を入浴させる施設をいう。
2 (略)
○ 建築基準法施行令(昭和25年11月16日政令第338号) (抜粋)
(第一種低層住居専用地域内に建築することができる兼用住宅)
第130条の3 法〔注:建築基準法〕別表第二(い)項第2号(括弧内略)の規定により政令で定める住宅は,延べ面積の2分の1以上を居住の用に供し,かつ,次の各号の一に掲げる用途を兼ねるもの(これらの用途に供する部分の床面積の合計が50平方メートルを超えるものを除く。 )とする。
一 (略)
二 日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店三~七 (略)
(第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域内に建築してはならない附属建築物)
第130条の5 法〔注:建築基準法〕別表第二(い)項第10号(中略)の規定により政令で定める建築物は,次に掲げるものとする。
一 自動車車庫で当該自動車車庫の床面積の合計に同一敷地内にある建築物に附属する自動車車庫の用途に供する工作物の築造面積(括弧内略)を加えた値が600平方メートル(括弧内略)を超えるもの(以下略)
二~五 (略)
【資料2 要綱(抜粋) 】建築基準法第48条ただし書許可に関する要綱(趣旨)
第1 この要綱は, 建築基準法第48条各項ただし書に規定する建築許可(以下「例外許可」という。)
の基準及び手続に関して必要な事項を定めるものとする。
(許可基準)
第2 用途地域別の許可基準は,次に定めるものとする。
1 第一種低層住居専用地域,第二種低層住居専用地域⑴~⑶ (略)
⑷ 自動車車庫で別紙「自動車車庫に係る建築基準法第48条第1項から第3項までの規定に関する許可基準」に適合するもの
⑸ (略)
2~5 (略)
(公開による意見聴取)
第7 公開による意見聴取(以下「公聴会」という。 )は,次によるものとする。
⑴ 公聴会の案内は,公告を開催日の3日前までに行うほか,次の者に案内書を送付する。
ア 申請建築物の敷地〔注: 「敷地」とは,一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地をいう。〕から概ね50mの範囲の土地又は建物の所有者イ 当該敷地が属する地縁による団体(自治会)の代表者ウ 計画建築物の用途,規模により特に利害が大きいと思われる者
⑵ 公聴会には,申請者及び設計者又はそれらの代理人の出席を求める。
2 公聴会において聴取した利害関係を有する者の意見は十分尊重しなければならない。
(別紙)
自動車車庫に係る建築基準法第48条第1項から第3項までの規定に関する許可基準第1 許可方針第一種低層住居専用地域,第二種低層住居専用地域(中略)において良好な住居の環境の確保を図りつつ,居住者等が利用する自動車車庫の建築を促進するため,第2の許可基準の1から3までのいずれかに適合し,住居の環境を害するおそれがないと認められる自動車車庫については,許可制度の積極的活用を図るものとすること。
第2 許可基準1 建築物に附属する自動車車庫にあっては,次に掲げる条件に該当するものであること。
⑴ 当該自動車車庫の床面積の合計及び階が,用途地域に応じて次に掲げるところによること。
イ 第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域にあっては,床面積の合計に同一敷地内にある建築物に附属する自動車車庫の用途に供する工作物の築造面積(中略)を加えた値が1500㎡以下であり,かつ,1階以下の部分にあること。
ロ・ハ (略)
⑵・⑶ (略)
⑷ 当該自動車車庫の敷地の位置及び道路との関係,構造等が次の条件に該当すること。
イ騒 音周囲に対する騒音の低減を図るため,敷地内の建築物の配置を踏まえた適切な配置,地階への設置等を行うこと。これらの対応が困難な場合にあっては,遮音壁の設置等を行うこと。
ロ ライトグレア 〔注:光のまぶしさにより物が見えにくくなったり,一過性の盲目状態になったりするような現象〕光が周囲の建築物に頻繁に当たることのないようにするため,敷地内の建築物の配置を踏まえた適切な配置,地階への設置等を行うこと。これらの対応が困難な場合にあっては,植栽,目隠し板の設置等を行うこと。
ハ 排気ガス排気ガスを排出するための換気孔等を設ける場合には,適切な位置に換気孔を設置する等により,周囲に害を及ぼさないよう配慮すること。これらの対応が困難な場合にあっては,植栽,塀の設置等を行うこと。
ニ 接道要件 (略)
ホ その他 (略)
2・3 (略)
第3 (略)
出題の趣旨
法務省が公表した出題の趣旨です。
〔第2問〕本問は,株式会社Aが建築しようとしているスーパー銭湯(以下「本件スーパー銭湯」という。)及びこれに附属する自動車車庫(以下「本件自動車車庫」という。 )の建築を阻止しようとする周辺住民のX1ら及びX2らが,特定行政庁Y1市長がした本件自動車車庫の建築に係る建築基準法第48条第1項ただし書に基づく許可(以下「本件例外許可」という。 )
の取消しを求める訴訟及び指定確認検査機関Y2がした本件スーパー銭湯及び本件自動車車庫の建築に係る建築確認(以下「本件確認」という。)の取消しを求める訴訟における法的問題について論じさせるものである。論じさせる問題は,本件例外許可の取消訴訟におけるX1ら及びX2らの原告適格の有無(〔設問1〕),本件例外許可の適法性(〔設問2〕),本件確認の取消訴訟において本件例外許可の違法事由を主張することの可否(いわゆる違法性の承継の問題,〔設問3〕),本件建築確認の適法性(〔設問4〕)である。問題文と資料から基本的な事実関係を把握し,建築基準法及び関係法令の関係規定の趣旨を読み解いた上で,取消訴訟の原告適格,違法性の承継及び本案の違法事由について論じる力を試すものである。
〔設問1〕については,行政処分の名宛人以外の第三者の原告適格が問題となる。行政事件訴訟法第9条第2項と最高裁判所の判例を踏まえて判断枠組みを提示した上で,行政処分の根拠法規の処分要件及び趣旨・目的に着目し,関係法令の趣旨・目的を参酌し,被侵害利益の内容・性質を勘案し,当該根拠法規がXらの主張する被侵害利益を個別的利益として保護する趣旨を含むか,どの範囲の者が原告適格を有するのかについて論じることが求められる。本件では,Xらの主張する「良好な住居の環境下で生活する利益」について,建築基準法が一般に想定していると解される建築物の倒壊,火災,日照被害等による直接的な被害や,都市計画法に基づく用途地域の指定等によって,地域地区に居住する住民が享受する反射的利益と比較して,「法律上保護された利益」といえるかについて検討することが求められる。
その上で,X1ら及びX2らが主張する利益の内容・性質に即して,原告適格を肯定することができるかについて論じることが求められる。特に,X2らについては,本件要綱において,一定の範囲の者に公聴会に参加する機会が付与されていることとの関係についても検討することが期待される。
〔設問2〕は,本件例外許可の違法事由として,第1に,建築審査会の同意に係る議決の手続上の瑕疵が問題となる。まず,建築審査会の同意には処分性が認められず,本件例外許可の取消訴訟の中で同意の違法性を争うことになることを前提とし,建築審査会制度の趣旨や除斥事由が定められた趣旨を踏まえた上で,除斥事由がある者1名の票を除外しても建築審査会の議決の結論が変わらない場合においても,なお,本件例外許可は違法といえるかについて論じる必要がある。第2に,Y1市長による本件例外許可についての裁量権の範囲の逸脱,濫用の有無が問題となる。本件要綱の法的性質について,例外許可は裁量処分であり,本件要綱は裁量基準(行政手続法上の審査基準)に当たることを示した上,例外許可については裁量処分とはいえ,公聴会制度を設けてその判断の適正が担保されていること,本件要綱で挙げられた事情が考慮されていないことを踏まえて,裁量権の範囲の逸脱,濫用があると主張することができないかを論じることが求められる。
〔設問3〕は,いわゆる違法性の承継の問題であるが,取消訴訟の排他的管轄と出訴期間制限の趣旨を重視すれば,違法性の承継は否定されることになるという原則論を踏まえた上で,まず,違法性の承継についての判断枠組みを提示することが求められる。その上で,最高裁判所平成21年12月17日第一小法廷判決(民集63巻10号2631頁)の判断枠組みによる場合には,違法性の承継が認められるための考慮要素として,実体法的観点(先行処分と後行処分とが結合して一つの目的・効果の実現を目指しているか), 手続法的観点(先行処分を争うための手続的保障が十分か)という観点から,本件の具体的事情に即して違法性の承継を肯定することができるかを論じる必要がある。
〔設問4〕は,本件建築確認の違法事由として,第1に,本件スーパー銭湯が建築基準法別表第二(い)項第7号の「公衆浴場」に該当するかが問題となる。条文の文言解釈,公衆浴場が第一種低層住居専用地域に建築できる建築物とされた趣旨,「一般公衆浴場」 とスーパー銭湯との異同を踏まえて検討することが求められる。第2に,本件スーパー銭湯の飲食店部分について,建築基準法別表第二(い)項第7号の「公衆浴場」に該当するかが問題となる。
第一種低層住居専用地域に建築できる飲食店は兼用住宅に限られ,かつ,面積の制限があること(建築基準法別表第二(い)項第2号,建築基準法施行令第130条の3第2号)などに照らして,本件スーパー銭湯の飲食コーナー及び厨房施設の規模等を踏まえて, 「公衆浴場」
に該当するかを検討することが求められる。
参考答案AI生成(出題の趣旨と論証集をもとに作成した目安です)
第1 設問1
1 判断枠組み
取消訴訟の原告適格は、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に認められる(行政事件訴訟法9条1項)。「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう(最判平元.2.17)。処分の名宛人以外の第三者については、根拠法令が当該利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させず、個別的利益としても保護する趣旨を含むか否かにより判断する。
その判断に当たっては、同条2項により、当該処分の根拠となる法令の趣旨及び目的、並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、前者については当該法令と目的を共通にする関連法令の趣旨及び目的をも参酌し、後者については当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案する。
2 根拠法令及び関係法令の趣旨及び目的
本件例外許可の根拠法令は建築基準法48条1項ただし書である。同項本文は、第一種低層住居専用地域内においては別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物を建築してはならないとし、ただし書は、特定行政庁が「第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合」に例外を認める。建基法1条は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的とする。
そして都市計画法9条1項は、第一種低層住居専用地域は低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とし、同法8条1項1号は用途地域を都市計画に定めることとし、同法10条は地域地区内における建築物に関する制限を別に法律で定めるとする。建基法48条1項は、この都市計画法上の用途地域制を建築物の用途規制の面で具体化したものであり、両者は目的を共通にする関連法令である。
以上によれば、48条1項ただし書の「良好な住居の環境を害するおそれがない」という処分要件は、第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を保護する趣旨に出たものである。
3 個別的利益としての保護
もっとも、用途地域の指定によって当該地域の住民が享受する良好な住居の環境という利益は、地域全体の環境としての公益であり、個々の住民が受ける利益は反射的なものにとどまるとの見方もある。建築基準法が一般に想定している被害は、建築物の倒壊、火災、日照被害等の直接的な被害であって、周辺の環境悪化はこれと性質を異にする。
しかし、48条14項は、ただし書の許可をする場合においては、あらかじめ「その許可に利害関係を有する者の出頭を求めて公開による意見の聴取」を行い、かつ建築審査会の同意を得なければならないとし、同条15項は、意見の聴取を行う場合には建築の計画並びに期日及び場所を期日の3日前までに公告しなければならないとする。すなわち法は、用途規制の例外を認める許可に際し、当該許可により影響を受ける具体的な利害を有する者を特定して、その意見を個別に聴取する手続を設けている。これは、当該建築物の周辺で現に生活する個々の住民が良好な住居の環境の下で生活する利益を、専ら一般的公益に吸収解消させるのではなく、個別的利益としても保護する趣旨を含むものと解される。
また、本件要綱第7の1⑴は、公聴会の案内書を送付すべき者として、申請建築物の敷地から概ね50メートルの範囲の土地又は建物の所有者、当該敷地が属する自治会の代表者、計画建築物の用途、規模により特に利害が大きいと思われる者を挙げ、同2は、公聴会において聴取した利害関係を有する者の意見は十分尊重しなければならないとする。本件要綱は法令ではないが、48条14項の「利害関係を有する者」の範囲に関する運用を示すものとして参酌し得る。
害されることとなる利益の内容及び性質をみると、自動車車庫の利用に伴う騒音、ライトグレア及び排気ガスによる居住環境の悪化は、健康又は生活環境に係る被害である。本件要綱別紙第2の1⑷イからハまでが、騒音、ライトグレア、排気ガスのそれぞれについて配置の工夫、遮音壁、目隠し板、植栽、塀の設置等の具体的な対応を求めていることは、これらが許可の判断において考慮すべき利益であることを裏付ける。騒音等の被害は、反復継続して受けることにより睡眠妨害等を通じて健康に影響を及ぼし、事後的な金銭賠償による回復が困難な性質を有する。
以上より、本件自動車車庫の周辺に居住し、その利用に伴う騒音、ライトグレア、排気ガス等により健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、原告適格を有すると解する。
4 X1らの原告適格
X1らは、本件自動車車庫に隣接し、本件自動車車庫から直線距離で約6メートル離れた位置の建物に居住している。
本件自動車車庫は1層2段の自走式自動車車庫であり、1階部分及び屋上部分を自動車の駐車場所とし、両部分をスロープで連結して自動車で走行して移動する方式のものである。屋上部分の外周には転落防止用の金属製の網状フェンスが設置されているのみで壁はなく、自動車の騒音、ライトグレア及び排気ガスを防ぐ構造になっていない。収容台数は130台である。
そして本件スーパー銭湯は、年中無休、午前10時から午後12時までの営業であり、広範囲の地域から顧客が自動車で来店することを予定し、来客予想人数は土日休日は1日当たり約1500人、来場する自動車は土日休日は1日約550台に及ぶ。
そうすると、X1らは、深夜に至るまで、約6メートルという至近距離において、自動車のエンジン音、ドアの開閉音等の騒音、ライトグレア及び排気ガスを直接かつ反復継続して受けることになる。第一種低層住居専用地域は低層住宅に係る良好な住居の環境の保護が最も強く要請される地域であり、X1らの被害の程度は著大である。
よって、X1らは原告適格を有する。
5 X2らの原告適格
X2らは、本件敷地から約45メートル離れた位置で、かつ幹線道路から本件自動車車庫に通ずる道路沿いの建物に居住している。X2らが主張するのは、本件自動車車庫そのものから生ずる影響ではなく、本件自動車車庫に出入りする自動車の通行による騒音及び排気ガスによる被害である。
これについては、48条1項ただし書の許可の対象は本件自動車車庫という建築物であり、その規制の趣旨は当該建築物の存在及び利用がもたらす影響の防止にあるから、道路の通行に伴う影響は建基法48条の保護範囲外であり、X2らの受ける影響は道路沿いに居住する者が一般的に受ける影響にとどまるとして、原告適格を否定する見解も成り立つ。
しかし、本件要綱第7の1⑴アは、申請建築物の敷地から概ね50メートルの範囲の土地又は建物の所有者に公聴会の案内書を送付するものとしており、本件敷地から約45メートルの位置に居住するX2らはこの範囲に含まれる。現にX2らは利害関係人として公聴会に出席して意見を陳述している。すなわち、X2らは、48条14項の「許可に利害関係を有する者」として、法が個別に意見を聴取することを予定した者である。
また、X2らは幹線道路から本件自動車車庫に通ずる道路沿いに居住しているから、本件スーパー銭湯に自動車で来店する顧客のほぼ全部が、X2らの居住する建物の前を往復して通行することになる。土日休日は約550台、往復すれば約1100台の自動車が、午前10時から午後12時までの長時間にわたって通行する。第一種低層住居専用地域内の道路は本来生活道路であり、このような交通量の増加によって生ずる騒音及び排気ガスの影響は、通行経路上に居住する者に集中して及ぶ。
本件自動車車庫は本件スーパー銭湯に附属するものであり、自動車で来店する顧客を受け入れることを目的とする施設であるから、これに出入りする自動車の通行による影響は、本件自動車車庫の建築が許されるか否かの判断において当然に考慮すべき事項である。
よって、X2らについても原告適格を肯定すべきである。もっとも、本件自動車車庫から約45メートル離れており、被害の程度はX1らに比して小さいことから、著しい被害を直接的に受けるおそれがあるとはいえないとして原告適格を否定する見解も十分に成り立つ。
第2 設問2
1 建築審査会の同意に係る議決の手続上の瑕疵
(1) 建築審査会の同意は、特定行政庁に対する行政機関相互の行為であって、国民の権利義務を直接形成し又はその範囲を確定するものではないから、処分性を有しない。したがって、その違法は本件例外許可の違法事由として主張することになる。
(2) 建築審査会制度の趣旨をみると、78条1項は、この法律に規定する同意及び審査請求に対する裁決についての議決を行わせるとともに、特定行政庁の諮問に応じて重要事項を調査審議させるために建築審査会を置くとし、79条2項は、委員は法律、経済、建築、都市計画、公衆衛生又は行政に関しすぐれた経験と知識を有し、公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者のうちから任命するとする。すなわち建築審査会は、用途規制の例外を認めるという重大な判断について、専門的知見に基づく第三者機関としての公正な審議を経ることにより、特定行政庁の判断の客観性及び適正を担保するために設けられたものである。
そして82条は、委員は自己又は3親等以内の親族の利害に関係のある事件については同意に関する議事に加わることができないとする。これは、審議の公正を確保するため、利害関係を有する者を審議の場から完全に排除する趣旨であり、単に表決に加わらせないという趣旨にとどまらない。
(3) 本件では、申請者Aの代表取締役の実弟Bが委員として本件同意に係る議決に加わり、賛成票を投じていた。実弟は2親等の親族であり、本件は親族の利害に関係のある事件であるから、Bには82条の除斥事由があり、議事に加わることができなかった。
Y1市建築審査会は、Bを除外してもなお議決の成立に必要な過半数の委員の賛成があるとして、議決をやり直すことなくこれを維持した。確かに、出席委員7名のうち5名が賛成したのであるから、Bを除いても出席6名中4名の賛成となり、過半数の要件は形式的には満たされる。
しかし、82条の趣旨は、表決の数のみならず審議の過程の公正を確保することにある。合議体の議決は、委員相互の討議を通じて形成されるものであるから、除斥されるべき者が審議に加わり発言すれば、他の委員の判断に影響を及ぼすおそれがある。しかもBは申請者Aの代表取締役の実弟であり、Aの利益のために積極的に発言する動機を有する者である。したがって、Bを除いても結論が変わらないとしても、本件同意に係る議決は82条に違反し違法である。
(4) そして48条14項は建築審査会の同意を例外許可の要件としている。手続上の瑕疵が処分の取消事由となるか否かは、当該手続が処分の適正を担保するために有する意義の程度によって判断すべきであるが、建築審査会の同意は、前述のとおり専門的・第三者的な審議を通じて特定行政庁の判断の適正を担保するという重要な意義を有する。したがって、結果に影響がないとしても取消事由となる。
よって、本件例外許可は手続上の瑕疵により違法である。
2 裁量権の逸脱・濫用
(1) 裁量の有無及び範囲
48条1項ただし書は「特定行政庁が……良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合」と定める。「認め」「許可した場合」という文言及び「良好な住居の環境を害するおそれ」という評価的な要件からすれば、要件該当性の判断及び許可をするか否かについて特定行政庁の裁量が認められる。
もっとも、第一種低層住居専用地域は低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域であり(都計法9条1項)、用途地域のうち最も厳格に住環境の保護が図られる地域である。48条1項本文は別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築を禁止し、ただし書はその例外にすぎない。したがって、例外許可は限定的に認められるべきであり、裁量の幅は狭いと解すべきである。また、48条14項が公聴会の開催及び建築審査会の同意を要求していることは、判断の適正を手続的に担保する趣旨であるから、特定行政庁は公聴会で述べられた利害関係人の意見を十分に考慮しなければならない。本件要綱第7の2も、公聴会において聴取した利害関係を有する者の意見は十分尊重しなければならないとする。
(2) 本件要綱の法的性質
本件要綱は、法令の委任に基づく法規命令ではなく、Y1市が定めた行政規則であり、48条1項ただし書の許可をするかどうかを法令の定めに従って判断するために必要とされる基準、すなわち審査基準(行政手続法5条1項)に当たる。
審査基準は国民を直接拘束する法規ではないが、合理的な審査基準が挙げる考慮事項を考慮せずにされた処分は、考慮不尽として裁量権の逸脱・濫用となり、また合理的な基準に正当な理由なく反する処分は平等原則違反となり得る。
(3) 本件例外許可の違法性
第一に、本件要綱別紙第2の1⑴イは、第一種低層住居専用地域においては、自動車車庫の床面積の合計等が1500平方メートル以下であり、かつ1階以下の部分にあることを求める。本件自動車車庫の床面積は約1500平方メートルであって上限ちょうどである。そして本件自動車車庫は1層2段の自走式であり、1階部分のみならずその屋上部分をも駐車場所とするものである。屋上部分における駐車は、実質的には1階より上の部分における駐車であって、「1階以下の部分にあること」という要件を満たすとはいえない。Y1市長はこの点を検討していない。
第二に、本件要綱別紙第2の1⑷は、騒音については周囲に対する騒音の低減を図るため適切な配置や地階への設置等を行い、これが困難な場合には遮音壁の設置等を行うこと、ライトグレアについては適切な配置や地階への設置等を行い、困難な場合には植栽、目隠し板の設置等を行うこと、排気ガスについては適切な位置への換気孔の設置等により周囲に害を及ぼさないよう配慮し、困難な場合には植栽、塀の設置等を行うことを求める。
ところが本件自動車車庫は、屋上部分の外周に転落防止用の金属製の網状フェンスが設置されているのみで壁がなく、騒音、ライトグレア及び排気ガスを防ぐ構造になっていない。遮音壁、目隠し板、植栽、塀のいずれも設けられていない。他方で、X1らは約6メートルの至近距離に居住し、本件スーパー銭湯は年中無休で午前10時から午後12時までの営業であり、土日休日は1日約550台の自動車が出入りする。深夜に至るまで騒音、ライトグレア及び排気ガスがX1らの居住する建物に直接及ぶことになる。
第三に、公聴会においてX1ら及びX2らはまさにこれらの点を指摘して意見を陳述したにもかかわらず、Y1市長は、Aに対し何らの対応も求めることなく本件例外許可をした。これは、48条14項の公聴会の趣旨及び本件要綱第7の2に反し、公聴会で陳述された利害関係人の意見を考慮しなかったものである。
第四に、「公益上やむを得ないと認めて」という要件についても、本件自動車車庫は営利事業である本件スーパー銭湯の附属施設にすぎず、公益上の必要は認められない。本件要綱別紙第1の許可方針は、良好な住居の環境の確保を図りつつ「居住者等が利用する自動車車庫の建築を促進するため」許可制度の積極的活用を図るとするが、本件自動車車庫は、広範囲の地域から自動車で来店する顧客のためのものであって、地域の居住者等が利用するものではない。許可方針の趣旨にも適合しない。
(4) 以上によれば、Y1市長は、本件要綱が挙げる考慮事項を考慮せず、公聴会で陳述された利害関係人の意見を考慮しないまま本件例外許可をしたものであり、「良好な住居の環境を害するおそれがない」との判断は重要な事実の基礎を欠き、社会通念に照らし著しく妥当性を欠く。したがって、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である(行訴法30条)。
3 結論
本件例外許可は適法とは認められない。
第3 設問3
1 原則
取消訴訟の排他的管轄及び出訴期間の制限(行訴法14条)の趣旨からすれば、先行する処分の違法は、当該処分の取消訴訟によって主張すべきであり、出訴期間の経過により当該処分は不可争となる。したがって、後行処分の取消訴訟において先行処分の違法を主張することは、原則として許されない。
2 違法性の承継の判断枠組み
もっとも、判例は、先行処分と後行処分とが結合して一つの効果の実現を目指しており、かつ先行処分を争うための手続的保障が十分でない場合には、後行処分の取消訴訟において先行処分の違法を主張することを認めている(最判平21.12.17)。
そこで、①実体法的観点として、先行処分と後行処分とが相結合して一つの目的・効果の実現を目指しているか、②手続法的観点として、先行処分の段階でこれを争うための手続的保障が十分に与えられていたかを考慮して、違法性の承継の可否を判断すべきである。
3 本件の検討
(1) 実体法的観点
本件例外許可は、48条1項本文により禁止される本件自動車車庫の建築を可能とするものである。もっとも、例外許可を受けても、建築確認を受けなければ建築に着手することはできない(6条1項、6条の2第1項)。
建築確認は、建築物の計画が建築基準関係規定に適合することを確認する行為であり、48条1項の用途規制への適合はその審査事項である。そして、例外許可があればただし書により用途規制に適合することとなるのであるから、本件確認は本件例外許可を前提としてされている。現にY2は、本件スーパー銭湯及び本件自動車車庫を一体として建築確認をしている。
すなわち、本件例外許可と本件確認は、本件自動車車庫の建築を適法に実現するという一つの目的のために連続して行われる行為であり、両者が相結合して初めて建築が可能となる。例外許可を欠けば建築確認はされ得ず、建築確認を欠けば例外許可は実現しない。実体法的な結合関係が認められる。
これに対し、例外許可は48条の用途規制について個別に例外を認めるものであり、建築確認は建築基準関係規定全般への適合を審査するものであるから、両者の目的・効果は異なるとの反論が考えられる。しかし、本件自動車車庫の建築という点に着目すれば、両者は一体の手続と評価すべきである。
(2) 手続法的観点
例外許可については、申請者以外の者に通知することは予定されていない。したがって、周辺住民は、例外許可がされたこと及びその内容を知る機会を制度上保障されていない。
確かに、48条14項及び15項により、特定行政庁は許可に利害関係を有する者の出頭を求めて公開による意見の聴取を行わなければならず、その期日等を期日の3日前までに公告しなければならない。本件でもXらは利害関係人として公聴会に出席し意見を陳述している。この点を重視すれば、手続的保障は与えられていたとみることもできる。
しかし、公聴会は許可に先立つ手続であり、その後実際に許可がされたか否か、いかなる内容でされたかは周辺住民に知らされない。公告も期日の3日前までという短期間にとどまる。しかも本件では、XらがY1市の担当職員に例外許可の違法を争う方法を尋ねたところ、同職員から、例外許可の違法については後続の建築確認の取消訴訟の中で主張すれば足りるとの説明を受けている。行政自らがそのような説明をしていたのであるから、Xらが例外許可の段階で取消訴訟を提起しなかったことには無理からぬ面がある。
以上によれば、本件例外許可を適時に争うための手続的保障が十分に与えられていたとはいえない。
4 結論
本件例外許可と本件確認は、本件自動車車庫の建築を可能とするという一つの効果の実現を目指して相結合しており、かつ本件例外許可を争うための手続的保障は十分でない。したがって違法性の承継を認めるべきであり、Xらは本件訴訟2において本件例外許可の違法事由を主張することができる。
第4 設問4
1 建築確認の性質
建築確認は、建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることを確認する行為であり、建築主事等は、審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは確認済証を交付しなければならない(6条1項、4項、6条の2第1項)。これは羈束処分であって、裁量の余地はない。したがって、計画が建築基準関係規定に適合していないにもかかわらずされた確認は違法である。
本件スーパー銭湯は第一種低層住居専用地域内に建築されるものであるから、48条1項本文により、別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物は建築できない。そこで、本件スーパー銭湯が同項7号の「公衆浴場」に当たるかが問題となる。
2 本件スーパー銭湯が「公衆浴場」に当たるか
(1) 別表第二(い)項7号は「公衆浴場(個室付浴場業に係るものを除く。)」と定める。公衆浴場法1条1項は、公衆浴場とは「温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設」をいうとする。この定義に従えば、本件スーパー銭湯も形式的には公衆浴場に当たる。Y2はこの理解に立ち、本件スーパー銭湯は「公衆浴場」に該当すると判断せざるを得ないとした。
(2) しかし、同号の趣旨を検討する必要がある。建築基準法が制定された昭和25年当時は、住宅に内風呂がない者が相当程度おり、国民の健康、公衆衛生を確保するため住居専用地域に公衆浴場を設けることが必要不可欠であった。すなわち同号は、地域住民が日常生活において保健衛生上必要な施設として利用する公衆浴場を、良好な住居の環境の保護が最も強く要請される第一種低層住居専用地域においても例外的に建築できるものとした規定である。
このことは、別表第二(い)項が掲げる他の建築物との対比からも裏付けられる。同項は、住宅(1号)、一定の兼用住宅(2号)、共同住宅、寄宿舎又は下宿(3号)、学校(大学等を除く)、図書館その他これに類するもの(4号)、神社、寺院、教会その他これらに類するもの(5号)、老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの(6号)、公衆浴場(7号)、診療所(8号)、巡査派出所、公衆電話所その他これらに類する公益上必要な建築物(9号)を掲げる。これらはいずれも、居住そのもの又は地域住民の日常生活に密接に関連し公益性を有する施設である。7号の「公衆浴場」も、この文脈において、地域住民の日常生活上の保健衛生施設を意味すると解すべきである。
したがって、同号の「公衆浴場」とは、公衆浴場法1条1項の公衆浴場のうち、その利用の目的及び形態が地域住民の日常生活において保健衛生上必要な施設として利用されるもの、すなわち「一般公衆浴場」に限られると解する。
(3) 本件へのあてはめ
住宅の浴室保有率は、統計を取り始めた昭和38年には59パーセントであったのに対し現在は95.5パーセントであり、公衆浴場を第一種低層住居専用地域に設ける必要不可欠性は著しく減退している。
本件スーパー銭湯は、Y1市の属する県の公衆浴場法施行条例上「その他の公衆浴場」に当たり、物価統制令に基づく価格統制の対象外である。「一般公衆浴場」の入浴料金の統制額は大人(12歳以上)につき400円であるのに対し、本件スーパー銭湯の入浴料金は大人につき平日600円、土日祝日700円であって、統制額を大きく上回る。すなわち本件スーパー銭湯は、地域住民の日常生活における保健衛生上の必要を満たす施設ではなく、娯楽・レジャーのための施設である。
規模及び営業の実態も旧来の銭湯とは本質的に異なる。本件スーパー銭湯は地上2階建て、延べ床面積約1490平方メートル、敷地面積約4150平方メートルであり、白湯、泡風呂、露天風呂等の各種浴場、サウナ風呂、各種自販機コーナー、休憩コーナー、マッサージコーナー、飲食コーナー及び厨房施設を備える。年中無休、午前10時から午後12時までの営業で、収容台数130台の自動車車庫を設け、広範囲の地域から顧客が自動車で来店することを予定し、来客予想人数は土日休日は1日当たり約1500人である。これは、徒歩圏の地域住民が日常的に利用する施設ではなく、広域から集客する大規模な営利施設である。
よって、本件スーパー銭湯は別表第二(い)項7号の「公衆浴場」に当たらず、同項各号のいずれにも該当しない。48条1項本文に違反するから、これを建築基準関係規定に適合するとした本件確認は違法である。
これに対し、同号は「公衆浴場」としか規定しておらず「一般公衆浴場」に限定する文言はない、料金統制の有無は建築基準法の用途規制と無関係である、建築確認は羈束処分であるから文言に即して判断すべきであるとの反論が考えられる。しかし、48条1項が別表第二の列挙により厳格な用途規制を敷いた趣旨に照らせば、同号を文言どおりに解して大規模な広域集客型の営利施設の建築を許すことは、第一種低層住居専用地域に関する用途規制の趣旨を没却するものであり採り得ない。
3 飲食コーナー及び厨房施設について
仮に本件スーパー銭湯の浴場部分が「公衆浴場」に当たるとしても、飲食コーナー及び厨房施設の部分についてはなお問題がある。
第一種低層住居専用地域において飲食店の建築が許されるのは、別表第二(い)項2号の兼用住宅の場合である。そして施行令130条の3は、同号の住宅とは、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供し、かつ同条2号の「日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店」等の用途を兼ねるもので、これらの用途に供する部分の床面積の合計が50平方メートルを超えないものとする。すなわち法は、第一種低層住居専用地域における飲食店を、居住部分と併存する50平方メートル以下の小規模なものに厳しく限定している。
本件スーパー銭湯は居住の用に供される部分を有しないから兼用住宅に当たらない。そして飲食コーナー及び厨房施設の床面積の合計は約50平方メートルであり、軽食と生ビールが提供される。これは、施行令130条の3が兼用住宅について許容する上限と同じ規模であって、小規模な附属設備とはいえず、かつ生ビールを提供する飲食施設は浴場の利用に不可欠な附属設備でもない。
したがって、飲食コーナー及び厨房施設の部分を「公衆浴場」の用途に含まれるとみることはできない。また、別表第二(い)項10号の「前各号の建築物に附属するもの」とは、主たる用途に従属する別の建築物等をいうのであって、本件スーパー銭湯の建物内の一部分である飲食コーナー及び厨房施設は、本件スーパー銭湯の用途そのものの一部を構成する。
そうすると、本件スーパー銭湯は公衆浴場と飲食店の複合用途の建築物であり、飲食店部分について48条1項本文に違反する。
4 結論
以上より、本件確認は、建築基準関係規定に適合しない計画についてされたものであって違法であり、適法とは認められない。
以上