司法試験 平成30年 知的財産法
問題文
[知的財産法]〔第1問〕(配点:50)
甲は,発明aについて特許出願(以下「本件特許出願」という。)をし,設定登録を受けた(以下,これによる権利を「本件特許権」といい,その登録された特許を「本件特許」という。)。これに対して乙は,発明aは本件特許出願前に乙が学会で研究発表したことにより公然知られた発明bに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)
が容易に発明することができたものであること,及び,発明aは乙と甲による共同発明であるにもかかわらず,甲が単独で本件特許出願をしたことを理由として,特許無効審判(以下「本件審判」
という。)を請求した。本件審判を審理した特許庁は,発明aは乙の学会研究発表に係る発明bに基づいて当業者が容易に発明することができたものであることを理由として,その余については判断するまでもなく「本件特許を無効とする」との審決(以下「本件審決」という。)をした。
以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。なお,各設問はそれぞれ独立したものであり,相互に関係はないものとする。
〔設 問〕1.甲は,本件審決に対して審決取消訴訟を提起し,当業者が発明bに基づいて発明aを容易に発明することはできなかったことの立証に成功したが,乙は,発明aは乙と甲による共同発明であるにもかかわらず,甲が単独で本件特許出願をしたことを主張している。このような乙の主張が上記審決取消訴訟において許されるか否かについて,甲及び乙は,それぞれどのように主張することが考えられるか。その妥当性についても論じなさい。
2.甲は,本件審決に対して審決取消訴訟を提起したところ,本件審決は発明bと発明aとの技術内容の認定を誤り,その異同点の認定を誤ったものであって違法であることを理由として,本件審決を取り消す判決が確定した。そこで,特許庁は再度の審理をし,本件審判の請求を不成立とする第二次審決をしたため,乙がこれに対して第二次審決取消訴訟を提起した。この中で乙は,本件特許出願前の公知技術についての新たな証拠cを提出して発明bの技術内容を明確化し,これによれば,発明aは発明bに基づいて当業者が容易に発明することができたものであると主張している。このような乙の主張が上記第二次審決取消訴訟において許されるか否かについて,甲及び乙は,それぞれどのように主張することが考えられるか。その妥当性についても論じなさい。
3.甲は,本件審決に対して審決取消訴訟を提起したところ,当業者が発明bに基づいて発明aを容易に発明することはできなかったことを理由として本件審決を取り消す判決が確定した。
そこで,特許庁は再度の審理をし,本件審判の請求を不成立とする第二次審決をし,これが確定した。その後,甲は,発明aを甲に無断で業として実施している乙に対して,本件特許権に基づき特許権侵害訴訟を提起した。この中で乙は,発明aは発明bに基づいて容易に発明することができたため,本件特許は無効にされるべきものであるから,甲は本件特許権を行使することができないと主張している。このような乙の主張が上記特許権侵害訴訟において許されるか否かについて,甲及び乙は,それぞれどのように主張することが考えられるか。その妥当性についても論じなさい。
4.甲は,発明aを甲に無断で業として実施している丙に対して,本件特許権に基づき特許権侵害訴訟を提起した。この中で丙は,発明aは甲と乙との共同発明であるにもかかわらず,甲が単独で本件特許出願をしているため,本件特許は無効にされるべきものであるから,甲は本件特許権を行使することはできないと主張している。このような丙の主張が許されるか否かについて論じなさい。
〔第2問〕(配点:50)
観光都市であるK市の市バス運転手であったXは,K市を退職後,K市のガイドマップを作成して販売することを思い立ち,市バスだけを利用して巡ることができる知られざる観光スポットを厳選したガイドマップというコンセプトを考えた。ガイドマップに載せる観光スポットを探す作業は,K市を退職した後輩のYが担当し,Yは3か月をかけてK市を歩き回って,市バスの停留所近くの知られざる小さな寺社など多くの観光スポットを探し出し,その中から人気が出そうなガイドマップに載せるべき観光スポット50か所(以下「本件観光スポット50か所」という。)を厳選した。
Yは,K市が作成し無料で自由な使用を認めている標準的なK市の地図に,本件観光スポット50か所を書き入れるとともに,市バスの路線図と停留所名も詳細に書き込んで,一枚物のガイドマップAを作成した。なお,ガイドマップAには,X及びYの氏名は表示されていない。
以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。なお,設問1及び設問2は,それぞれ独立したものであり,相互に関係はないものとする。
〔設 問〕1.ガイドマップAは,イラストなどは一切載っておらず,通常の地図の表記ルールに従った表現の域を出ていないが,市バスの路線図と停留所名が詳細に書き込まれ,K市の知られざる魅力的な観光スポットが満載であるとして,発売後たちまち人気が出た。Zは,X及びYに無断でガイドマップAを利用し,本件観光スポット50か所をイラストとして表現したほかは,ガイドマップAと全く同じ地図Mを作成し,その販売を開始した。Xは,Zに対して,地図Mの販売はXの著作権を侵害するものであるとして,地図Mの販売の差止めを求める訴訟を提起した。Xは,どのような主張をすべきか。これに対するZの反論として,どのような主張が考えられるか。それぞれの主張の妥当性についても論じなさい。
2.ガイドマップAは,イラストを多用しており,それらのイラストは,XとYが同程度の貢献をして協力して描いた個性的な図柄のものであった。
⑴ Yは,ガイドマップAをインターネット上で配信し,その際,XとYの氏名を著作者名として表示した。インターネット配信によってガイドマップAは世間に広く知られることとなったため,ガイドマップAの売上げは飛躍的に伸びた。Yは,この配信についてあらかじめXと協議をしたものの,Xは,インターネット配信により自分の名前が世界中に知られることに不安を感じ,配信に同意していなかった。Xは,Yに対して,YのガイドマップAの配信行為はXの著作権及び著作者人格権を侵害するものであるとして,配信行為の差止めを求める訴訟を提起した。Xはどのような主張をすべきか。これに対するYの反論として,どのような主張が考えられるか。それぞれの主張の妥当性についても論じなさい。
⑵ K市に所在するタクシー会社Sは,社内で観光タクシー運転手になるための資格試験を実施しているところ,今年度の試験は,ガイドマップAの中の本件観光スポット50か所の名称を空欄にし,この空欄に正解の名称を書き入れるように求める問題(以下「本件出題」という。)であった。なお,本件出題に係るガイドマップAにX及びYの氏名は表示されていない。また,Sは,本件出題も含む過去20回分の試験の全問題とその解答(解説は付いていない)を年度順に掲載した『観光タクシー資格試験問題集』(以下「本件問題集」という。)
を発行し,社内の希望者に配付しているが,本件問題集においてガイドマップAが使用された問題は,今年度分のみであった。Sは,本件出題及び本件問題集の発行について,X及びYに無断で行っている。X及びYは,Sに対して,本件出題及び本件問題集にガイドマップAを利用したことは,X及びYの著作権及び著作者人格権を侵害するものであるとして,損害賠償を求める訴えを提起した。これに対するSの反論として,どのような主張が考えられるか。その妥当性についても論じなさい。なお,損害額については論じなくてよい。
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